導者

はあ……はあ……俺を倒すだと?ふざけんじゃねえ……!!

 悪霊は私達の口上を聞くと左腕を失った苦痛に耐えながら声を荒げて悪態をついた
 だけど、それに対して私達は動ずることなくただ答えた

「いいえ……ふざけてなんてないわ……あなたもさっき、知ったでしょう?私にはあなたを斬る力あることに」

ぐっ……!

 今まで、目の前の悪霊は自らが傷つくことがないことで強気でいられた
 それはいじめっ子と変わりがない。いじめと言うのは基本的に加害者が被害者が反撃に出られないことをいいことに自らの嗜虐心を満たそうとする卑劣な行為だ
 それは人間、いえ、私達ですら持っている生ける者全てが抱く『原罪』の均衡が崩れたことによって生まれる思い上がりだ
 だから、私は同じ生命として目の前の鬼となってしまったかつては美しかったであろう生命を力以外で説得したかった
 だけど

はあはあ……ひっひひひひひひ……

「……………………」

 悪霊は不敵な底意地の悪そうな笑い声をあげ

確かにてめえの剣は痛かったぜ……

―ガシ―

けどよ!

―ヒュ―

「!?」

 残っていた右腕で友子ちゃんの部屋にある机を掴み、それを投げつけてきた

そのガキを守りながらじゃ、俺をどうすることもできないだろ!!

―バッ―

 机によって死角が生まれた瞬間、虎の様な肉付きである脚の膂力を使って私達と友子ちゃん目がけて突進してきた
 確かに私達は霊体、実体を問わずに斬ることのできる剣を持っている。しかし、それは一つしかないのだ。今の状況では投げつけれられた机と迫りくる悪霊を同時に迎え撃ってもどちらかは防ぐことはできない。避けようとしても私達の背後には私の守るべき幼子がいる
 普通なら『詰み』ではあるが

「残念だけど……」

―シュルルルルルルルルルル―

「私……いいえ……」

―トッ―

 私の眼前に迫る机は私が操る影によって捕らえられ私は机を捕まえると同時に悪霊に向かって跳躍し逆に鬼の眼前までに迫り剣を構えて

「『私達』ならそれは可能よ」

―ズシュ― 

 そして、そのまま剣を右へと振り払いそのまま悪霊の右肩を斬りはらった

「ぎ……ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああ!!?」

 悪霊は再び自らの身体に訪れた激痛に泣き喚く様に叫び出し、傷口を押さえようととするがそれを押さえる傷口とは反対側に本来具わっている手を失った悪霊はそれすらできずただ苦しむだけであった
 先程、私が使った影はかつて腐敗した教国を堕落させた私の紅い眼を象徴する魔軍の主である最も尊敬する姉の1人に教わった術だ。私のこの術はリーチェがいることで霊体すらも捕らえることができる
 そして、私が即座に悪霊に反応し迎え撃つことができたのはリーチェが私の身体えを動かしてくれたからだ
 今の私達は一体化している。私は魔法を担当しリーチェが剣術が担当しており私達は互いが背中を預けながら戦っているようなものだ。だから、私はどんな敵が相手であろうと怖くない

ぐぅ……

 悪霊は今の一撃で私達に勝てないことを悟ったのか、窓に向かって今にも転びそうな走り方で逃走しようとするが

―バチッ!―

ぎゃあああああああああああああああああああああああ!!?

 悪霊が窓に触れた瞬間私が窓に部屋の四方に貼っていた御札が全て強烈な光を放ち悪霊を弾き飛ばした

「残念だったわね……それは私の友人が作った強力な悪霊封じよ」

 稲葉さん夫婦がこの部屋から出て行った後に私はこの部屋の四方に一枚ずつ御札を貼った
 この御札は私の幼馴染である八尾の妖狐、霞(シア)が作った一枚でも霊体にかざせば力を奪うものだ。そして、この御札は四方に貼れば互いの相乗効果で強力な結界を形成する力も持っている
 だから

「あなたには逃げ道はないわ」

ぐぐぐ……

 私は悪霊に対して『王手』を告げた

このクソアマがあああああああああああああああああああああああああ!!!

 だが、悪霊は追い詰められたことで逆上し私に向かって顔に憎しみを浮かべながら突進してきた。最早、悪霊はこの世に対する怨みなど忘れ私に対しての怒りしか抱いていなかった
 しかし、悪鬼が迫る中私はそれを意に返さなかった。なぜならば

「頼むわよ、リーチェ」

 私には相棒がいるからだ

「任せて、アミ!」

 私の言葉を聞いた相棒は再びその戦化粧を纏った姿を私の目の前に実体化させ悪霊に立ちはだかった
 そして、彼女は目を瞑って腰を自らが漆黒の太陽と言える魔力の球体から上げその球体を自らの胸の前に浮遊させて持ち上げた

「あのような惨い海を跡にし清らかな水を渡るがために、今、我が才の小舟が帆を揚げよう」

 悪霊が迫りく
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