明星

「う〜ん……」

 私はまだ身体に疲れが残っているのを感じながらも身体を起した

「3時か……」

 時計を見ると時刻は午後3時をとっくのとうに迎えていた。どうやら、私は7時間近く眠っていたようだ。しかし、それでも身体からだるさは抜けず、布団から体を出すのにも時間が掛かった。そして、

―グ〜―

「お腹空いた……」

 腹の音がなり、自分の空腹感を感じたので疲労で覚束ない足で歩きながら台所のキッチンにある籠からインスタントラーメンを取り出そうとするが

「ない……」

 インスタントラーメンは見つからなかった。どうやら、インスタントラーメンを切らしてしまったようだ

「はあ〜……仕方ない、外に食べに行こ……」

 私はインスタントラーメンを切らしたことに気づくと、洗面台に向かい眠気とダルさを少しでも和らげるために顔を洗い、寝癖のついた髪を櫛で梳かし、ジャージとパーカーに着替えて財布とPHSを持って、外で軽食をする準備をした

―キー……―

「いってきます……」

 私は部屋をです際に誰もいない部屋に向かって、そう呟いた。しかし、心の底では

この部屋に対して、もうこれ以上『ただいま』も『いってきます』も言いたくないのにね……
 
 とそう呟いた。しかし、仮に借金を全て返済したとしても、私にはもはやここ以外に居場所なんて存在しない。恐らく、私に待っているのは男にとっては都合のいい『娼婦』としての道しかないのだろう

「お、響ちゃん、外出かい?」

「あ、はい……」

 私が寮の入り口に着くとそこにはこの寮の管理人の久川(くがわ)さんが窓口にいた。彼は私にここを紹介してきた借金取りの友人で私の勤めている店の店長と一緒に店の風俗嬢を全て監督している人だ

「あの……ちょっと、食事に」

 私が久川さんに外出の要件を話すと

「そうか、じゃあ……そこに帰宅の時間を書いておいて」

 久川さんは私に帳簿を渡して、そこに外出時間と帰宅予定時間を書くように言ってきた。この寮では風俗嬢が外出をする際にはこう言った記憶をとるのが決まりだ

「あ、はい」

 この決まりの理由は二つある
 一つは風俗嬢の脱走を防止するためだ。この寮には私のような借金が原因で働いている者も多くおり、実はこう言った風俗業は違法スレスレのものであり、この生活が嫌になった風俗嬢が警察などに訴えると取り締まりの危険があるらしい。ゆえに店側からすれば風俗嬢を監視しなくてはならないのだ
 もう一つは風俗嬢の安全を守るためだ。風俗嬢はかなり危険な仕事でもあり、トラブルに巻き込まれる可能性もあり、帰宅予定時間より遅い場合はこの辺りをシマにしている組織に捜索を頼むことにしているらしい

「はい、どうぞ」

 私は時間帯を書き終えると久川さんに帳簿を渡した

「ご苦労様……ん?ちょっと、響ちゃん」

 久川さんは私から帳簿を受け取り内容を確認すると、少し気になったことがあるらしく私に何かを尋ねようとしてきた

「……なんですか?」

 私はそれに対して、面倒臭く感じて適当に返事をした。すると、久川さんは

「なんですか?て、響ちゃん……いくらなんでも、外出時間が短すぎるよ」

 久川さんは私の外出時間の短さにどうやら危惧したらしく、私に外出時間を少し延ばすことを遠回しに言ってきた

「いいですよ……ファミレスとかのすぐに食事ができる所に行くだけですし、すぐに帰ってきますよ」

 私は久川さんにそう言って外出時間を最低限だけにしようとするが

「いやいや……あのさ、響ちゃん?今まで黙ってきたけど、響ちゃんは自分のことを追い詰めすぎだよ?せっかくの外出なんだから過ごし位は気晴らしでもしてきなって」

 久川さんは私のことを気遣って、私に気晴らしをすることをすすめてきた

「……私が逃げると思わないんですか?」

 私は彼に対して、逃げることを指摘するが彼は少し表情を和らげて

「響ちゃんはいい娘だからね〜……何よりも真面目な娘じゃないか?借金を踏み倒す様な娘にはとても思えないし、それにそれは磐田(いわた)の奴も保障してるよ」

「……」

 久川さんは私に対して、理由にもならない理由を言ってきた。磐田と言うのは私にここを紹介した借金取りの名前だ

「むしろ、磐田の奴は君のことを心配してたよ?」

「え?」

 久川さんのその一言に私は驚きを隠せなかった。当然だ。借金取りにとっては、借主は借金を返せば客ではあるが、返せない場合は道具のように扱うのが普通のはずだ。しかし、なぜ、あの借金取りは私のことを心配するのかがわからない

「意外そうな顔をしてるね……響ちゃん、言っておくけどね……俺や磐田が所属している組は自分で言うのもどうかと思うけど、まだ……『マシ』な方なんだよ?」

 久川さ
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