時間がくれる贈り物

「はあ……一週間後どうしよう?」

 僕、九条 明(くじょう あきら)は今、非常に困っている。その理由は一週間後の翌日のとあるイベントの前夜祭にある。さらに詳しく述べると、僕が悩んでいるのはその前夜祭における大切なものについてだ

「マリちゃんへのプレゼント……どうしよう……」

 それは僕の妻である九条 茉莉(くじょう まり)に対する贈り物についてだ。そう、その日は恐らく、宗教に関して普段無関心な日本人が自分達に関係ないのになぜか祝うとある『聖人』の生誕祭の前夜であるクリスマスイヴだ

 まあ、そこが日本人の良い所かもしれないけど……

 僕はなぜか、そのイベントを日本人が祝うのか?と悩んでしまったが、そこは

『日本人だから、仕方ない』

 と無理矢理結論付けた。と言うか、今はそれどころではない

「どうすればいいんだ……僕は……」

 実は僕はクリスマスもしくは、クリスマスイヴを心の底から楽しんだことがない。なんと、夢がない人間かと自分でも思うがあの頃の僕は親族以外の人間とはあまり親しくなく、逆に親族に心配をかけてしまい、むしろ、親族はそんな僕のことを可愛がり過ぎたので僕はその度に申し訳なさを感じてしまい、心の底からクリスマスを楽しめる余裕がなかったのだ。ちなみに僕が小学生時代にサンタに願ったことは

『クリスマス・キャロルに出てくる三人の精霊と出会うこと』

 であった。だから、他人が何を贈ってもらうと嬉しいかがわからない

「ぶっちゃけると、マリちゃんは僕からのプレゼントだったら、なんでも喜んでくれると思うけど」

 これは決して、惚気ではないがマリちゃんは実際僕のことが大好きだから恐らく僕がプレゼントを贈っただけで喜んでくれるのは間違いないだろう。あと、もちろん僕もマリちゃんのことが大好きだ

「だけど、だからこそ困るんだよね……」

 そう、たとえどんなものを贈っても喜んでくれるのは嬉しいけど、どうせなら、彼女のさらに喜ぶ顔を見たいのだ。まあ、つまりは『欲が出た』と言うことだ

「さすがに魔物娘だからと言って、一日中セックスし続けると言うのは……ちょっと……」

 魔物娘からしてみれば、それはかなりの『幸福』だと思うけど、僕はそれは流石に止めた。それはいつでもできることだし、せっかくの一年に一度の特別な日なんだから、どうせなら『性夜』ではなく、『聖夜』として彼女と過ごしたい

「はあ……どうしよう……」



「〜♪」

「えらくご機嫌ですね。茉莉?」

「はい♪」

 教会の掃除を鼻歌を交えながらしていた私に友人であるダークエンジェルのステラは声をかけてきました。そして、私は自分がかなりご機嫌であることを強調するかのように明るく返事をしました

「だって、一週間後はクリスマスイヴですよ?これを喜ばないでどうするんですか?」

「いや、普通はその翌日のクリスマスを喜ぶべきでしょう……あなた、一応は修道女ですよね?どうなんですか、そういうところ?」

 確かに私は表向きは修道女でありながら、クリスマスよりもイヴの方を楽しみに思っています。えらく俗まみれな考えだと思いますが仕方ありません。なぜなら

「だって、一週間後は初めて明さんと過ごすクリスマスなんですよ〜?これを喜ばないでどうするんですか?」

 そう、今年のクリスマスとイヴは私の夫である九条明さんと初めて過ごす特別なものです。私はそれだけで非常に喜びを感じ、頭の中は興奮で一杯です

「それに……久しぶりに家族と過ごすクリスマスですし……」

「茉莉……」

 私は両親を幼い頃に亡くしてからこの教会の孤児院で毎年、クリスマスを他の孤児達と共に過ごしていました。私の父の実家はかなりの旧家でした。しかし、父は当時、使用人一家の娘であり、幼馴染でもあった私の母を愛し、母もまた身分があるとは言え父を愛しました。そして、両家の強い反対を受けこのままでは結ばれないことを考えて、駆け落ちして結ばれました。そして、2人の間に生まれたのが私でした。2人は貧しい暮らしの中でも私のことを深い愛情を注いで育ててくれました。私もそんな両親が大好きでした。クリスマスの時はプレゼントはありませんでしたが、クリスマスだからと言って、普段家事をこなしていた母もパートに出てケーキやフライドチキンなど普段の食事では御馳走とも言えるものを私に食べさせてくれました。私はそれだけで幸せでした

 お父さん……お母さん……

 しかし、家族三人のクリスマスは私が9歳の時まででした。私の両親は私が10歳の秋に飲酒運転の自動車にはねられて、帰らぬ人になりました。私はその時、両親の死が理解できませんでした。そして、しばらくした後に父方の祖父と祖母に生まれて初めて出会いましたが、その時に彼らは私に対して肉親として
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