失われた『輝き』

「お〜い、瀬川君そこのコピー取ってくれない?」

「あ、はい」

 私は課長に言われて違う机のコピーを課長に手渡した

「どうぞ……」

「ありがとう」

「いえ、これぐらい……」

 課長は私にお礼を言うけど、私はそんな価値もない人間だ

「瀬川さん、少しぐらい休暇を取ったらどうだい?いつも、残業ギリギリまで働いて……」

「いえ、本当に大丈夫ですから……」

 私はそれを断ろうとするが

「でもね、最近は組合がうるさくてね。言っておくが、これは君のためであり、我が社のためでもあるんだ……」

「……」

 課長は私を納得させるように説得した。きっと、課長は私のことを気遣ってくれているのだろう。だから、わざと会社のメリットを伝えて私を誘導している

「わかりました……じゃあ、明日から3日ほど……」

 私はそう言って、明日から3日ほど休暇をとることにした

「うん、ゆっくりと休みをとりなさい……君がいつも、仕事をしてくれるおかげで内の課は助かっている。たまには、内の連中をしごかないとな」

「え〜、ひどいですよ」

「人権侵害ですよ〜」

「あはは。明日から思いっきりしごいてやるから、覚悟しろよ」

 課長は私が気がねなく、休めるように私のことを評価して、同時に同僚たちに冗談を言い放ち、同僚たちもそれにノッてきた

 ここは本当にいい職場だ……

「そうだ、最後にこの会計を確認してくれないかい?」

 課長は今日の最後の仕事としてあることを頼んできた

「あ、はい……あれ?これって……九条さんのところの会計ですよね?なんで、アールグレイの注文が?」

 私は内の会社のお得意様である九条さんの注文書の中に一ついつもと違う部分を見つけた

「あ〜、実は俺もそう思って注文を受けた社員から何度も聞いたのだが、『いえ、私も最初は間違いかと思って、何度も尋ねましたけど間違いじゃないと断言されました』と言ってるから間違いじゃないはずだが……」

 普通、紅茶を注文する客はオーソドックスなアールグレイを注文するのだが、九条さんはなぜかアールグレイだけは注文することはないので、ある意味うちの会社では有名人だ。いや、それ以上にお金持ちとしても有名だけど

「どうしたんでしょうね?」

「さあ、まあ……そんなことを深く考えても仕方ないから考えるのはやめよう」

「そうですね……」

 私は課長の言うように余計な詮索はせず、仕事を終えた

〜三十分後〜 

「はい、課長。できましたよ」

「ああ、すまない……ではゆっくり、休んでくれ」

「はい、ありがとうございます……」

 私は仕事を終えて、すぐに帰路に着いた

「はあ〜、明日からなにしよう……」

 駅を出てしばらくして、私は明日からの予定について考えた。すると

「シクシク……」

 一人の男の子が公園のブランコに座りながら泣いていた。私はその子を見て
いると

「どうしたの?」

 放っておくことができず、その男の子に尋ねた

「グスっ……お姉ちゃんと喧嘩しちゃったの……」

「!?」

 その話を聞いて、少し衝撃を受けた。しかし、すぐに冷静さを取戻してその
子を安心させるために笑顔で

「どうして、喧嘩しちゃったの?」

 と言うと男の子は

「お姉ちゃんが……約束やぶったから……それで……『お姉ちゃんなんて大嫌
い!!』て……」

「……」

 と話しだした。私はそれを黙って聞いた。そして

「でも、君はそれを反省しているんだよね?」

 と男の子に優しく聞いた。すると

「うん……」

 と男の子は頷いた

「じゃあ、君もお姉ちゃんに謝らないとね」

「うん……でも……」

 男の子は再び頷いた。どうやら、自分で口走ってしまったことを後悔しており、姉がそれを許してくれるかを悩んでいるらしい。それを察した私は

「大丈夫だよ……きっと、お姉ちゃんも謝れば許してくれるはずだよ?」

「本当……?」

 男の子は涙を拭いながら確認してきた

「本当だよ?」

 すると……

「うん、ぼく……あやまるよ」

 男の子は私に言った

「君はお姉ちゃんのことが好き?」

 そう聞くと男の子は

「『うん、お姉ちゃん大好き!!』」

―――ズキン―――

 と笑顔で返した。しかし、私はその言葉を聞いた瞬間、なぜか胸が締め付けられた。そして、次の言葉で

「『ありがとう!!お姉ちゃん!!』」

「!?」

 私はさらに動揺してしまった。そう、私はこの子を見ていると重ねてしまっ
た……あの子と……私の……

「晴―――」

「翔太(しょうた)〜!」

 どこからか声がしたので振り向くと女の子がいた

「あ、お姉ちゃん」

 と男の子は言った。どうやら、この子の姉らしい

「もう、心配かけて……」

 
[3]次へ
ページ移動[1 2 3 4]
[7]TOP [9]目次
[0]投票 [*]感想[#]メール登録
まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.33