※ 注意!! ※
今回の話には結構な残虐描写が含まれます。
そういうのが苦手な方はご注意ください。
(一番下、あとがきに今回の話の要点を書いておきます)
「済まなかった! 君たちには、いくら詫びても足りないくらいだ! 本当に、申し訳ないっ!!」
騒ぎが一段落ついて、衛兵たちのリーダーはリフォンたちに深々と頭を下げていた。というか、土下座していた。
「何、あんたらが警戒するのもわかるし、こっちだって地面をへこませたりしたんだ。互いに重大な怪我人が出たわけでもないし、おあいこってことにしておこうぜ」
リフォンは土下座を続けるリーダーに苦笑しながらそう答える。
……もっとも、リフォンたちはほぼ無傷なのに対し、衛兵たちは過半数が打ち身や捻挫等の怪我や武器の損傷があったので明らかに被害の規模に差があるのだが。
「……それよりも、問題はこれからどうするか、だな。とりあえず敵の一人は捕まえたわけだが……」
「うむ。密偵は今牢屋に入れてある。舌を噛み切って自害などせんよう、猿轡もかましてある」
「ああ。だが、そいつからアジトの場所なんかを聞き出せるとは思えないんだよな……」
「そうね。捕まった奴は口を割るくらいなら自害するだろうし、ギルドの方も捕まった奴は問答無用で切り捨てると思う」
「だよな……。多分無駄だとは思うが、一応話を聞きに行ってみるか」
リフォンはそう言って牢屋へと歩き出し、
そして、急にふらっとよろめいた。
「ちょ、ちょっとリフォン、大丈夫?」
ミルラナとセトゥラが慌ててリフォンに駆け寄る。
「ああ、大丈夫だ。足元の段差に躓いただけさ。……まぁ、自業自得か」
そう言ってリフォンは苦笑する。
確かにリフォンの足元には、石畳が持ち上がったような段差があった。
リフォンが地面を殴りつけた際にできたものだろう。
「何だ、心配させないでくれよ、兄貴」
「おう、悪い悪い。それより、さっさと牢屋に行ってみようぜ」
リフォンはいつものように軽い口調でそう言ったが、ミルラナはまだ心配そうな表情をしていた。
確かに足元に段差はあったが、あれは躓いたのではなくよろけたように見える。
それに、心なしかリフォンの顔色が悪いような気もする。
「リフォン……本当に、大丈夫なの?」
「ああ。心配してくれてありがとうな」
リフォンは笑ってミルラナの頭をぽんぽんと撫でる。
未だ心配ではあったが、ミルラナは、それ以上追求できなかった。
牢屋の鉄格子を挟んで、リフォンたちは捕らえた密偵に向き合った。
両手両足を固く縛られ、口には猿轡をした状態で、床に転がされている。
だが、その目はリフォンたちを不適に睨みつけていた。
「無駄だとは思うが、聞いてみるか……。おい、お前らのアジトの場所を吐く気はないか?」
リフォンが駄目もとで訊いてみると、密偵はふん、と鼻で嘲笑った。
「……そもそも、猿轡をしたまんまじゃ文字通り話にならんよなぁ……。あれ、外したらどうなると思う?」
「……多分、舌噛み切るか隠し持っていた毒でも飲んで自害するでしょうね」
「……だよなぁ」
ミルラナの答えに、リフォンはため息をつく。
「自害する前に殴るとかして止めればいいんじゃない?」
「それじゃ結局話にならんだろ」
「……そっか」
セトゥラもうーん、と唸りながら頭を抱える。
ミルラナも何かを考えていたようだが、やがてぽつりと口を開いた。
「……私に、任せてくれない?」
リフォンとセトゥラがミルラナの方を見る。
「ミルラナ、何かいい方法があるのか?」
「まあ、ね……。ただ、一つ、約束してほしいことがあるの」
ミルラナの表情は暗く、口調も重い。
「約束?」
「ええ。……私一人でやるから、私が出てくるまで、外に出ていてほしいの。それとリフォン、その短剣、貸して」
「……おい、ミルラナ、お前、何する気だ?」
「お願い。私を信じて」
表情は暗いものの、ミルラナははっきりとそう言って、リフォンの目を正面から見据えた。
リフォンはしばし悩んでいたが、やがて、
「……わかった。頼んだぞ」
と言って、ミルラナの頭を軽く撫で、もともとは彼女のものだった短剣を手渡した。
そして、リフォンたちが牢屋から出て、中にはミルラナと密偵の二人きりとなった。
ミルラナは鉄格子を開けて中に入り、密偵のそばにしゃがみこんだ。
「……あなたは、頷くか首を振るだけでいいわ。アジトの場所を教えるつもりはある?」
密偵は再度鼻で笑った。
「……そう。仕方ないわね」
ミルラナの声のトーンが急に低くなる。
無機質で、冷たい、氷のような声。
「……私も、あなたたちと同じ、暗殺者だったの。
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