流されてバフォメッ島

魔界のとある海域の、とある小さな島に
かつて魔王軍の将軍であったバフォメットや一族の当主だったバフォメットが
後進や跡継ぎに座を譲り、のんびり隠居暮らしを楽しむ
まさにバフォメットだけが住む楽園がありました

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朝、まだ早い時間にのんびり、てふてふと散歩を楽しむバフォメットがいた

「ふむ、早起きは三文の得、じゃのう」

彼女は朝早く起きて、冷たい朝の空気を吸いながら
眠気覚ましに散歩することを楽しみにしていた
そしてその後、彼女の夫が作る朝食を二人で摂るのだ

今日の朝食はなんじゃろな、とぼんやり考えていると
井戸の近くに見覚えのある三人のバフォメットが水を汲んでいた
向こうもこちらに気がついたようで、手を振って挨拶をしてきた

「おお、バフォ田さんではないですか、おはようございます」
「おはよございまーす」
「ざいまーす」

手を振ったバフォメットは「バフォ原」さん
そして傍にいる二人の小さなバフォメットは彼女の子供達だった

「おお、バフォ原さん、それにチビ達もおはようございます」

 彼女達の礼に対し、うやうやしく礼を返す

「そういえば、先日は良い酒を奢って頂いてありがとうございました」

礼を返した後でそれを思い出し、彼女はバフォ原さんに礼を言う
あの酒はなかなか高価な魔界の銘酒で、いつか礼を言おうと思っていたのだ

「いやいや、うちのチビ達を以前預かって頂きましたからな、その礼ですじゃ」
「なんのなんの、あのくらいお安い御用で・・・・・・」

しばらく二人で談笑が続き、二人のチビ達はいつしか小枝でチャンバラごっこをして遊んでいた

「そういえば聞きましたかな? 近々バフォ山さんの所でお子さんが産まれるとか」
「なんと! それは喜ばしい、子が産まれるというのは良いものですなあ」
「ええ、まったく・・・・ところでバフォ田さんは最近夜の方はいかがかな?」

バフォ原さんは意地の悪そうな顔で聞いてくる

「い、いやあ、毎晩可愛がってもらっておるよ・・・・♪」
「そうじゃろうのう、毎夜ワシのところにまで声が届いておるからのう♪」

それを聞いたバフォ田さんは吹き出しそうになった

「な、なななんと・・・・・・!?」
「あの声を聞かされてはワシも燃えざるをえまいて・・・・しかし、程々にはしてもらいたいのう?」
「ぜ、善処しよう・・・・・・・」

バフォ田さんは顔を真っ赤にして両手で覆い隠すように恥じらった
昨日や一昨日も聞こえていたのだろうか・・・・・・?

「そいえばねー、昨日"ワシのクリちゃんをそんなに苛めちゃらめええええ"って聞こえてたよー」
「クリちゃんってなにー?」

二人の純真な瞳が突き刺さる

「ば、ばふぉおおおおおおおおおおおおおおっ!!!???」

もはや威厳もクソもなかった

と、その時

ギーンゴーン ギーンゴーン

村の門にある、警戒を呼びかける警鐘が村中に鳴り響く
それが示すのは・・・・・・敵の襲来、であった

「あ、警鐘じゃな」
「そうじゃな」

しかし、二人の反応は至ってのんびりしたものだった
二人のチビも

「敵さんだー♪」
「がおー♪」

敵襲来ごっこを始めるほどのんびりしていた

「ふむ、いつ振りだったかのー」
「半年振り、かの? 結構、期間が空いたものよ」

他の村人も警鐘を聞いて家から出てくる
しかしそれはどう見ても避難のためではなく
あえて例えるなら村の集会にゆっくり集まるような和やかさであった

「さてと、んでは、ちと行ってくるかのー」
「二人とも、もしかしたらお兄ちゃんが増えるかもしれんぞー」
「お兄ちゃんが来るのー?」
「ばふぉー♪」

そして家から出てきた彼女達は揃ってぞろぞろと海岸に向かった

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〜バフォメッ島、沖合いの船の上〜


「さて、我々はついにあの悪魔達を成敗する時がやってきた」

数隻ある巨大な船の中でも、最も煌びやかな装飾のある船の先頭にて
船と同じく煌びやかな装飾の鎧に身を包んだ男が高らかに演説をしていた

男の前には歴戦の顔つきの戦士達が武装し、険しい顔つきで演説を聴いている
どうやら男は船団の指揮官らしく、戦士たちを鼓舞し戦意を上げようとしているようだった

「今まで何度も奴らの前に敗れ、勇敢な戦士達が海の藻屑へと消えていった
 ・・・・・・我々は彼らの勇気と誇りを忘れてはならない!!」

ちなみに、これは全くの蛇足だが
彼女達に敗れた戦士達はその後、全員捕縛され
一人残らず彼女達と幸せに暮らしているのだが、彼らはこの事実を全く知らない

「我らはなんとしても奴らを討伐し、近隣の住民達から奴らの恐怖を取り除かね
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