キッチン ミノタウロス

ここは、魔界三丁目にある小さな定食屋さん
料理好きでちょっと変わったミノタウロスが店長の、かなり変わった店
今日も一日営業し、お客もゴブリンの少女だけになり
そろそろ閉店するという時間帯にミノタウロスは言った

「・・・・・・解せん」

「何がっすかー?」

ゴブリンの少女はおしぼりで手を拭きながら店長に聞いた

「鶏串や豚串がポピュラーなのは認めよう・・・・・
 ビールのつまみにすれば確かに最高だ
 だが、なぜ"牛串"はメジャーではないのだ!?」

店長のミノタウロスは熱く拳を握りながら叫ぶ

「知らんがな・・・・・あ、牛タン定食で」

ゴブリンの少女はメニューを見ながら注文を決める

「断る」

だが、あっさりと却下された

「おい」

ゴブリンの少女は注文の却下に対して抗議しようとした



「牛タンなぞ近いうちにいくらでも作ってやるさ・・・・・・
 だが、あたしは今、猛烈に牛串を作りたいのだよ
 だから作る そしてお前に食わせる」

メチャクチャな理論だった

「ちなみに私の意志は」

「む、嫌か?」

「私は牛タンが食いたいんです」

「そうか、まあソレはソレとして牛串を作るから待ってろ」

意思は完全に無視された
ちなみにこういうことは日常茶飯事である





さて、幸い客の同意も得られたことだし調理に入ろう
牛串を作るとなるとまず肉をどれにするかだが・・・・・ここは"ばら"や"もも"を中心にしてみる
柔らか過ぎず、かといって硬いというわけでもない
こういうのはある程度の歯ごたえも重要だ

調理自体は簡単だ
牛肉を一口サイズに四角く切り、間に玉ねぎを入れて串に刺す
問題は塩コショウとタレ、どちらにするべきか・・・・・?
ここは両方作って後で客に選ばせてみよう

焼くときは当然、炭火を使う
炭の匂いは食欲を刺激する大切な彩りだ
あたしの店では肉を焼くときは必ず炭火を使うことにしている
絶対に曲げない、昔からのこだわりだ
さあ強火にして

「ファイヤァァアアアアア!!!!」

ボォォオォォオオオオ!!!!!

さあ、炭火の力でおいしく焼き上がるがいい!!

「あっはっはっはっはっはっは!!
 あ〜っはっはっはっはっはっはっは!!!」

「ゴブリンです
 店長が肉を焼き始めたら高笑いを始めました
 な、何を(ry)」




「さあ、できたぞ!
 特製牛串セットだ! 食え!!」

店長はそう言って牛串の乗った皿を差し出してきた
じゅうじゅうと煙を出し、炭火焼き独特の香りが店中に広がる
私はごくり、とつばを飲み込んだ
早速塩味の牛串を頬張る

「う、美味い!
 強火で一気に焼くことで外はカリッと香ばしく、中は柔らかいレア・・・・・
 そして熱々の牛肉から出る肉汁と塩コショウが混ざり合ってちょうどいい塩加減に!
 更に炭火焼きの香りと玉ねぎの甘みが食欲を掻き立てる!!」

「まだまだあるぞ
 こっちには何もつけていない・・・・・・だが、タレをいくつか用意してみた!
 さあ、好きなだけ"陵辱(デコレーション)"して食うがいい!!」

数種類のタレが私の前に差し出される

「こ、これは"おろしポン酢"! どんな肉料理にも合う究極の調味料!!
 そしてこっちは"わさびソース"!? ほんのりとした辛味が楽しめる、あの!?
 さらには定番の"醤油ベース"!! 甘っ辛いブレンドで人気の一品!!
 他にも・・・・・・・」

「さあどうだ、極めつけの"ご飯とビール"!!
 この究極のトライアングルを食らうがいい!!」

「きゃあああああああああ♪
 流石店長、分かってる!
 この組み合わせは反則だわ!!」

「今日は実験だ、客はお前しかいないし
 いくら食っても無料にしてやるさ!!
 共にビールで牛串の素晴らしさについて語り合おうじゃないか!!」

「イエ      イ!! 店長太っ腹     ♪」

その夜、遅くまで店の明かりは点きっぱなしだった・・・・・・・







〜翌朝〜

「あ、材料無いや」

牛串を作りすぎて次の日の材料が残っていなかったという
11/01/10 02:23更新 / くびなし
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