あの時から今まで

「んじゃあ、ばっちゃの家にいってくる〜」

と、オレは自分の家をあとにする。
家にはだれもいないというのに、子供の時からのしつけのせいもあって、いつも出かけるときは一言いうことにしている。



両親はオレが成人を迎えたときに、仕事の都合で都会へ引っ越していった。
オレももちろん、一緒に来るよういわれたが、都会の汚れた空気がどうも苦手でここに残ることにした。



ここ”レーヌ村”はのどかな田舎で、オレは生まれたときからここで暮らしている。
村の東に広がる森以外は、西、北、南と山で囲まれてるため、ここでの暮らしは自然の恵みといつも隣り合わせとなっている。



オレが今むかっている、祖母の家は東の森に入って一里ほど東へいったところにある。
年に3回ほど行くことがあるが、今回は今年に入って初めてだ。
一里といっても歩いてしまえば、40分くらいで着くため、ちょうどいい運動くらいの距離だ。朝はやくに出たから、昼もこないうちに着けるだろう。

ばっちゃの家がある村まであと半分という目印にもなっている看板をすぎた直後、突然どこからか声が聞こえる。

「…っと…えまし…」

微かだが、大人の女性らしき声が聞こえる。

「15年ま…はあり…した」

15年?うまく聞き取れず、なにを言いたいのか理解しがたい。そこで、こっちからも声をかけることにした。

「お〜い、すまんがうまく聞き取れないんだ。隠れているなら出てきてくれ」

すこし間があいたが、声の主は応答してくれた

「すみません、今は私事ながら忙しいので、また後ほど」

今回はオレに聞こえる必要があったためか、ハッキリとした声が聞き取れた。

「そっか、んじゃ、また会えたら後で〜」

そう言い、オレはまた道を進めるのだった。



「ふ〜いい運動だったわ〜」
オレはばっちゃの家に着いたのだ。
「あらあら、ジュンちゃん、いらっしゃい」
ばっちゃが玄関の音に気付き、出迎えてくれた。
”ジュン”とはオレの名前だ。

「ばっちゃ、水くれぇ」

「はいよ、歩きなれたといっても水分は持ち歩くべきじゃよ」

「はいはい、子供の時からよくわすれちゃうんだよ〜。これから注意するわぃ」

「いつも、そういって忘れてくるのはどこのどいつじゃろか〜?」

「ばっちゃ!それ、オレのこと〜」

「わかってるなら、なおしゃんかい!ま、ジュンちゃんにいっても無駄じゃろうけどな〜」

「忘れちゃうのは、忘れちゃうんだよ!」


そうこう話してるうちに昔の話になっていった…

「ジュンちゃんやぃ、昔、15年くらい前だったかのぉ、お前さんが弱ってる蛇様をたすけてやったことは覚えてるかぃ?」

「あぁ、微かだけど覚えてるよ。たしか、あれは・・・

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ミーンミーン
蝉が夏真っ盛りといわんばかりに鳴いている。
そして、朝早く起きて、今日はじめてオレは蝉を採りに森へやってきた。
いつも親に森へ行くというと、止められるから親には言っていない。
森の外の方の木には、人気が近いわけか、ぜんぜん蝉がいる気配はない。
そこで、オレは森の奥へと進んでいったのだ。
案の定、蝉は四方八方に存在を伝えるかのように鳴いている。
木によじ登ったり、蹴ったりして蝉を5匹捕まえたところで、自分がきた道、いる場所がわからなくなってることに気付いた。
オレの心は一気に不安にまみれ、その場で泣きわめくしかなかった。

「おやおや、ジュンちゃんやないかぃ?どうしてこんなとこにいるんだい?」

「ば… … ばっちゃぁぁぁぁ!!」

「よしよし、怖かったねぇ。んで、お母さんは?いつもここに来る時は一緒じゃろ〜に。」

「グスッグス、フキフキ……いない!一人できたんだ〜」

「まぁ〜お母さんに秘密にしてきたのかぃ?みんな心配してるじゃろ〜に、お母さんに心配かけたらいかんしゃい!?」

「うぅ〜、わかってるよ〜。でもね、蝉採りをさ、やってみたかったの!」

「そうかい、そうかい。いっぱい採れたかね?」

「うん!ほら〜5匹だよ〜」

「お〜すごいねジュンちゃん!ジュンちゃんはもう蝉採りの名人じゃなぁ」

「へへ〜ん。もっとも〜〜っと採って見せるさ!」

「すごいなぁジュンちゃんはぁ。でもなぁ、ジュンちゃん。蝉さんを採った後は、ちゃんと森にかえしてやるんじゃよ?」

「ええええ〜なんでぇ〜?せっかくつかまえたのにぃ。かえしちゃったら、おもしろくないじゃん!帰ってみんなに自慢するのにぃ〜」

「ジュンちゃんは優しい子じゃろ?」

「うん!!世界一優しい子だよ!!」

「そうかい、そうかい。じゃあ、ばっちゃのいうとおりにできるね」

「う〜ん。ばっちゃの言うとおりにしたら、優しい子なの?」
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