そう、それは。

誰しも悩みってモノがある。
それは、人間、魔物、もしかしたら、動物にもあるかも知れない。
例えば、身長が低いだとか、対人恐怖症とか。
勿論俺…霧茅紀徒にも、ヒーローになれないという悩みがあったりする。
だけど、それは些細な悩みなんだ。
[ヒーロー]になれない? いや、俺はヒーローだ。
そう思うだけで、俺はヒーローになれる。
例え毎朝6時起床で、床が光沢を放つ程綺麗に磨くのが日課だとしても。
例え毎日カマキリ少女に襲われていても、だ。
だから、お前にも言っておく。
「貧乳? 微乳? それはな、シリカ! お前が――」
巨乳だと思えば、巨乳になるんだ!!
「なる訳ないじゃないか! ばか!」
心から叫んだ俺のカッケェ台詞は、そんな一言で撃沈した。
何故だろう?
「あら、大丈夫よぉ、シリカちゃん。アタシも胸が小さいからぁ」
背後で胸筋をピクピクさせながら、筋肉の塊が告げる。
彼の名前は筋肉。たしかアデルとか言っていたが、偽名のハズだ。
まぁ、筋肉さんは無視で良いだろう。怖いし。
「いつか大きくなるよ? 多分」
「私も昔はそんな感じだったな、確か」
「うるさい巨乳族!」
フィアが告げ、次いでアリアさんも告げるが、たった一言で一蹴される。
まぁ、仕方ないか。フィアとアリアさんは、確かに巨大だし。
艶めかしくて凄い。うん、ヤバいな。
「…好きな人に揉んで貰うと良い」
「そんな人いないもん!」
エストレアも告げるが、これまた一蹴。
「例え小さくても、形は崩れないから良いと思うよ?」
最後に、優樹。だが。
「……崩れる程デカい奴らが憎い…」
なんだか暗いオーラが立ち上る。怖えぇ。
しかし、これで全員が励ましたハズだ。
立ち直れ。そして働け!
そう思ったが、無駄だった。
体育座り(ちゃんとした下着を着けろ! なんだその布面積の異常に少ない下着は!? なんで透け(以下略))をして、暗いオーラを撒き散らす。
因みに俺は直視してないよ? と、エストレアに視線で訴える。
「……(こくり)」
よし、どうやら伝わったようだ。
「……じー」
いやいや、何故俺を凝視するんだエストレア!?
後、「じー」って声出てるよ!? いや、可愛いから良いけども。
「ふむ。なら、こうしよう」
不意に、凛とした声が聞こえる。そして。
「んぁっ!? んっ…」
シリカの甘い声が響いた。
どうやら、[見知らぬ誰か]がシリカの服の内側に手を滑り込ませたみたいだ。
「すまないが、少し部屋を借りるよ、アデル」
「お願いするわぁ〜」
いや、少し待て。
誰!? いやいや、てかいつ現れたの!?
そう混乱している内に、[見知らぬ誰か]はシリカを連れて部屋を出る。

そして、三十分程の時間がたった頃。
「………」
「ふぅ」
妙に大人しくなったシリカと、妙に清々しい笑顔を浮かべる女性が部屋に入って来た。
一体何をしたんだ。詳しく教えてくれ。
「久しぶりだねぇ、ノア」
「ああ、久しいな、フィア。まさか君が居るとは」
そう言って、笑顔を浮かべる二人。
あー、なんだ。知り合いか。
見知らぬ誰か…ノアさん、かな?
真っ黒で高そうな服を着ていて、白銀の髪にワインレッドの瞳。
んー、優樹が成長して、黒服を着たらこうなりそうだ。
「すまないが、アデル。[彼]は遅れて来るそうだ」
「わかったわぁ〜」
「私の従者を使いとして送ってある。そんなには遅れないだろう」
…なんの話かサッパリだ。
そう思っている内に、どんどん話は進んで。
「嗚呼、そうだ。…一つ話をしようか」
俺に話が向いた。なんだろうか?
「一途な想いを、裏切らないであげて欲しい」
「どういう事だ?」
「暗い世界。黒い少女。…思い出すと良い。私は、それを望む」
そう告げて、微笑する。そして。
「不確定要素の[私達]。さて、この先はどう進む……?」
ティーカップを傾けながら、一人、呟く。
…難しい事は、サッパリ分からないぜ。
11/12/20 16:57更新 / 紅柳 紅葉
[1]作者メッセージを読む

[5]戻る
[7]TOP [9]目次
[0]投票 [*]感想[#]メール登録
まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.33