人は...現実で有り得ない事を[危険]、と認識するんだよ。

「人は...現実では有り得ない事を[危険]、と認識するんだよ」
そんな呟きがフィアの口から漏れて、俺の意識は覚醒した。
....と、同時に体が[絶対有り得ない]危機から逃れたいが為に、後ろへと下がる。
今回ばかりは、俺の感想も間違ってなどいない。確信だ。
何故か?そんな事、簡単過ぎる。
今、俺達が目の当たりにしているモノは...。
全身を筋肉という名の鎧で包み、拳という名のプレス機を優雅に晒しているモノ。
もはや人と呼べない程の筋肉。そして....化粧。
何で化粧してんだよ。怖いよ!アンタ男だろ!?なんだよその厚化粧!?
「あら〜?そこの男の子♪アタシに見とれたのかしら♪」
その一言で、俺、エストレア、フィア、優樹、そして、ノエルや知らない人達ですらその顔を引きつらせた。
正直に言おう。個性が強過ぎる。俺のレベルじゃまだ無理だ!
「....アデルにぃ。ホント、やめて...」
ノエルが言う。が。
「あ?お兄ちゃ...お姉ちゃんにそんな事言ったら駄目よ?ノエルちゃん」
なんだよ!?最初の[あ?]が無駄にドスがきいてたよ!てかお兄ちゃんを言い直したよコイツ!?なんなの!?コレなんなの!?
[......なんなのだ...?]
ほら見ろ!精霊様も絶句ですぞ!?焔が絶句してますぞ!?
「...ユウ。危ないから近づいたら駄目」
「後ろ、隠れていい?」
「...うん」
エストレアの後ろに優樹。そして、エストレアの前に居るのは...俺。
盾、ですか....俺は...。
「ま、いいわ♪ワタシはアデル。アデル セルシニアよ♪宜しくん♪」
アタシなのかワタシなのかハッキリしろよ!!
.......言える訳ねぇよ。
「えぇと...よ、宜しく?」
フィア!?お前スゲーなおい!!まさかの宜しく発言ですか!?
尊敬します!!
「うふ♪仲良くしてね♪」
怖ぇよ!?化け物だよ!?ノエルの兄だなんて思えないよ!!
「はぁ.....。そんな事よりアデルにぃ。この人達に部屋、用意できる?」
と、ノエルが言う。お前もすげぇなおい...。
「あらあら?そんな事を言いに来たの?出来るわよぉ♪お部屋の準備くらい♪」
「じゃあ、お願い出来るか___「ただし!お部屋を貸してあげるんだから、一つお願いを聞いて欲しいのよ〜♪」」
ノエルの発言に割り込んで、そんな事を言う筋肉さん。
「ワタシのお願いは...このコ達に、働いてもらう事よ♪」
「はい!?」
叫んだのは俺。さすがに、いきなり過ぎるだろうよ。だが。
「このお店はねぇ、お客様はよく来てくれるんだけどぉ、従業員がまだ二人しかいないのよ〜♪」
そう言った筋肉さんは、カウンター席にいる腕が翼になってる女の子と、あからさまにエロ格好いいお姉さんを見る。
それを見てフィアが、「へぇ。セイレーンとグール、かぁ。変わった従業員なんだねぇ?」と、言う。
なる程。あの魔物達はそういう種族なのか。後で詳しく教えて貰おう。
「あら?白い美人さんは詳しいのね?凄いわぁ♪」
「いえいえ。それ程でもあります」
相変わらず順応性の高い人だなぁ、フィアって。
てか、何気なく肯定すんなよ。お前Fウィルスの発生源だろ。皆が面倒くさがりになったらどうするんだ。
「.......カズト。働く、の?」
「ま、働くのも悪くないな...」
正直、住み込みで働くってのは悪くない条件だ。それに、この店には転移結晶やクエストボードといった、俺達の目的を達成する為に必要な[情報]や[移動手段]等がある。
人が沢山いるってのもよく考えればかなり良い。その人達から色々聞けるしな。
「どうするかしらぁ?」
筋肉さんが訊ねて来たので、恐る恐る返答する。
「と、とりあえず...働く、という事にしときます」
まぁ、何も悪い事はないだろうしな。あるとすれば、筋肉さんが怖いって事くらいだ。
そう思ったから言ったのだが。
「本当?嬉しいわぁ〜♪」
無駄に野太い声で喜ばれて、早くも挫けそうな俺なのだった。
11/11/02 16:12更新 / 紅柳 紅葉
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