ガツガツガツ.... むしゃむしゃむしゃむしゃ...
音にするとそんな感じで、少女はエストレアが捕って来た猪だか豚だかよく分からない動物を食べていた。
もちろん、火は通してある。生は危ないからな。
だが、あまりにもガツガツと食べているので、何故か食欲が削げる。
チラッと隣を見ると、
はむはむはむ... ふー、ふー もっきゅもっきゅ..
こちらでは、ちびちび口に含みながら咀嚼しているカマキリ娘がいた。
...熱いの苦手なんだな、エストレア。意外な一面を見た気がする。
しばらくエストレアを見ていると、その視線に気付いて。
「.........んっ」
キス。そして、口移し。
「.......美味しい?」
訊かれたが、正直耳に入らなかった。
エストレアの唾液入りの肉を口移ししたので恥ずかしいのだ。
だって、人前ですよ?ありえねぇ...
「なぁ少年!その肉食べないなら私にくれるとうれしーぞ!!」
そしてこの人はどうしてこんなに厚かましいんだ。ありえねぇ...
しかし...どうしてこんな事に?この人だれ?
その疑問は、今から2時間前に遡る....。
..........のだが、思い出すのも面倒くさいので簡潔に行こう。
アルヴァン草原を目指して歩いていた俺とエストレア。
すると、どこからともなく腹の音が聞こえてきた。
最初はエストレアだと思ったのだが、本人は違うと言った。
その直後、上から降ってきたのだ。少女が。
そして「お腹すいた.....(ガクッ...)」
と、なって今に至る。
何故上から?知らん。
「やっぱ肉うめーなー!」
なんてテンションの高い奴なんだ。こういう奴嫌いじゃないがな。
「...........食べ過ぎ」
その意見はごもっともだ、エストレア。
〜30分後〜
「久しぶりに食べたな〜」
そう言いながら、倒木に腰掛ける少女。
驚く事に、豚(猪?)は骨しか残っていない。
どんな胃袋してんだよ。エストレアなんかお腹膨れてんぞ?
「......ぅ...」
つらいならそんなに食べるなよ、エストレア...
「んー、ありがとねー、少年とマンティスの娘〜!」
「どういたしまして」
「実は3週間なにも食べてなくてさー。助かったよ」
.......今、なんか3週間とか聞こえたのは聞き間違いだろう。
「三年も家出してるのに、親も姉妹達も気付いてくれないんだよねぇ」
.....聞き間違いが.....聞き間違いだよな?
「ところで少年。君は旅人かな?」
話すテンポもそうだが、訊いてくるのも唐突だな、コイツ。
「まぁ、旅人っちゃ旅人だな」
「おお〜!!じゃ、私も連れてけよなー!」
なんなんだろうね、この人。
いきなり現れ、飯食い、同行したい?
...........ありえんだろ、コイツ。
「.............何故?」
今まで黙っていたエストレアが、急に喋りだす。
「私楽しいのが好きなんだ。だからかな?あと....」
少年が気にいった。
その言葉を聞いた瞬間、エストレアは「.....一緒に行こう」
とか言いだす。何故?
「......でも、私のだから」
「どうだろうねぇ...?」
少し、空気が険しくなる。だから何故?
よくわからん奴らだな。まぁしかし。
「これから宜しく、か?えーと...?」
名前をしらなかった。
「フィア エンフィールドと名乗っているよ、私は」
フィア、か。
「じゃあ、宜しく。フィア」
「......よろしく」
「おー、宜しくな、カズトとエストレア!」
アレ....?俺、名前言ったか....?
そんな疑問があったが、それもすぐに忘れてしまった。
「ちなみにいっとくと、私リリムだからね」
笑顔で告げる。だが。
_____________欠陥品だけどね。
そう呟いた彼女の声も、俺には聞こえていたんだ。
その意味が分かるのは、すぐ後なんだけど。
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