2話その1 朝の出来事。

「起きて、朝、だよ?」
そんな台詞が耳元からきこえてくる。
それと共に、「すー、はー」と、息が耳元にかかり、くすぐったい。
「まだ、寝ている、の?」
起きて、起きてと体を揺さぶられる。
その仕草の一つ一つが愛らしくて、つい狸寝入りをしてしまうのだ。
「おーきーてーっ!」
「ん。 起きたよ」
あまりふざけ過ぎるとバレてしまうから、狸寝入りをおわらせる。
正直、なごり惜しいけどな。
「ご飯、食べよ? お腹、すいた」
と、彼女が言うので、「おぅ、分かった」と返事をする。 すると、
「ん…、ちゅ…んぅ、んっ…」
彼女の薄い桜色をした唇が俺の唇に重なった。
その唇はぷにぷにしていて、ほのかに甘くて、俺の理性を着実に奪っていく。
「んっ、ぅん、ちゅっ、んぅんっ…ん…」
唾液を絡めるような官能的な音が、感触が、秒を増すごとに激しくなる。
「あっんっ、ぉいしいっ、よぅ、んっ、んん!」
彼女に取って食事というものは、腹を満たす行為だけではないのだ。
時にはこのように、性的快楽も満たさなくてはいけないらしい。
だから俺はこうして彼女に快楽与え、満足さしてあげないといけないのだ。
性は、彼女達
lt;魔物
gt;には必要不可欠なのだから。
「あっんぅ、フェっンぅ…もう、じゅんっび、できたよぅ…」
そう言って、彼女が四つんばいになる。
そして、甘えたような声で一言、「フェン♪ 来て、いい、よ…?」
そこで俺の理性は吹き飛び、彼女の腰にてを当てて、己の欲望のまま彼女をー。



ゴツン!
それ以外に表現出来ないような疑音をたてて、俺…、フェン
amp;#8226;ライフォードはベッドから転げ落ちた。
勿論、彼女はベッドにはいない。
これが意味する事は、
「夢、か……」
そう、夢。
口に出すのも恥ずかしいような夢を見てしまった。
しかも実は、こういう内容の夢は初めてではないのだ。
彼女を居候させ始めてからほぼ毎日のようにあのような夢をみている気がする。
「はぁ……」
このままだと俺の理性がヤバい事になる。
いや、もうヤバい事になっているような気がする。
「おはよう、フェン」
俺を起こしに来たのだろう。
いつの間にか隣には彼女がきていた。 それだけでもとても気まずい。
いや、彼女は気まずくなんかないのだろう。
「今日は、炒め物、作ったよ。 食べよ?」
と、気軽に話かけてこれるし、あんな夢はみていないのだろうしな。
「あぁ。 先に食べといてくれないか?」
それに比べ俺は、こんな感じに彼女を避けてしまう。
魔物とはいえ、彼女だって人とたいしてかわらないのだ。 俺が露骨に避けているのにも、気付いているだろう。
「…ん。 先、食べるね」
そう言う彼女の声は、少し寂しそうだ。
彼女をかくまうと言ったのに、俺が避けてどうするんだ。
部屋を出る彼女の後ろ姿を眺めながら、そんな事を考えていた。








∴30分前
amp;#8226;台所にて∴
「♪〜〜、♪〜」
台所で、私…白音は朝ご飯を作っていた。
朝食を作るのは、私を助けてくれている人に対する恩返しのような物だ。
…正直に言うと、彼が美味しいと言ってくれるのが嬉しいからなのだけれど。
彼が美味しいと言ってくれると、心のどこかが暖かくて、何だかふわふわした気持ちになれるのだ。
今日も彼は喜んでくれるだろうか? 楽しみでしかたがない。
…恩返しと言えば、もう一つ彼に内緒でやっている事がある。
でも何故だろう? その恩返しは、余り効果が無いのかも。
だって彼は、一週間前…私がここに来て、彼に恩返しをし始めてからというもの、少しずつ私を避けているような気がするのだ。
でも、間違えてはいないハズ。
彼の望む夢をみさせてあげているのだから。
私の仙術に、間違いは無い、はず
…そういえば、いったいどんな夢をみているんだろう?
むー、気になる。
ん。 そういえば、料理してなかった。
早くつくらなくては、彼が起きてしまう。
「美味しい、って、言ってくれるかな、フェン♪」
優しい彼の名前を口に出してしまい、思わず恥ずかしくなる。
でも、気になるのだから仕方ない。
だから私は、こんな楽しい朝が何時まで続けばいいなと思ってつい、微笑んでしまう。
私にとってこの時間は、本当に楽しい。
そう思いながら、彼を起こしに向かうのだった。
11/10/01 00:37更新 / 紅柳 紅葉
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