魔物。
この世界でそれを知らない人はいないだろう。
何故なら、人に取って最高クラスの害悪である事と、その全てが女の子だからだ。
何故害悪なのかと言うと、人を食らうだとか魂を吸うからだとかといわれてる。
まぁ正直、そんな事は嘘らしいのだが。
そしてもう一つ。 何故女の子のような外見をしているのか?
これについては、正直あまり分からない。
と、言ってもだ。 ここが反魔物領だからだろう。
もしここが親魔物領なら、少しは分かったかもしれない。
そう、反魔物領。
魔物を良く思わない、いや、魔物を排除しようとする人達がすんでいるこの領土なので魔物がいないのは当たり前なんだ。
だが、どうしてかは全く分からないのだが、今俺の膝の上には一匹の魔物がいる。
反魔物領にすんでる俺が全く怖く思わないはこの魔物がとても温厚そうだからだ。
あと、外見的に見て幼い感じがするから。 とても俺を殺しそうにない。
だが、何故この魔物が俺を警戒しないのかは、分からない。
そして、分からない事は知りたくなるのが人間というものだろう?
「…何故、君は俺を警戒しない? 俺が君を殺そうとするかも知れないのに」
あまりにも無防備に座っていた彼女は、しばらく間をあけてから答えてくれた。
「殺意も、敵意も、無い。 だから、私は、あなたを敵とは思わない」
同じ考えみたいだな。
「違うなら、私は、逃げる。 痛いのは、嫌、だから。 あなたも、痛いのは、嫌、だと、思うから」
「いや、違わないから大丈夫だ」
あー、そこまでは考えてなかった。 いや、普通は考えないんだろう。
魔物は、意外に優しい考えなのかもしれないな。
いきなりだが、一つ疑問が浮上した。 この魔物はなんて呼ばれる種族なんだろう。
頭に生えている猫耳をみるかぎりでは、おそらく。
「なぁ、お前の種族ってなんなんだ? ワーキャットか?」
ワーキャット。 たぶん、当たったと思うが、どうだろう。
「違う。 私は、ネコマタ」
ネコマタ? 聞いた事ねぇんだが…
「あと、あなたに、お前って、呼ばれる、なんて、びっくり」
「あー、いや、すまん」
謝ってみる。 反応、ないけど。
というか、いままで忘れてたんだが、何故コイツはここにいるんだろ?
何故俺の家? てか膝の上?
「なぁ、なんで俺の家に? てか、反魔物領にいるんだ?」
なんで反魔物領なんかに。 それがわからなかった。
「私は、逃げて、いる。 ここの、領主に、買われた、から。」
…はい? 反魔物領の領主に買われた? あれほど魔物嫌いな領主にか?
おいおい…どういう事なんだよ。
「どういう事なんだよ、それは?」
「私は、売られて、買われた。 私を買ったのは、ここの領主。 アイツは、私達、魔物を、奴隷のように、扱う。」
領主って、最低な野郎だったのか。
「暴力とか、してきた。 痛いのは、嫌い。 だから、逃げた。 あなたの、家に、いるのは、鍵があいてた、から」
マジですか!? いやいやいや!
「いや、閉めたはずだぞ!?」
「あなたは、勘違い、してる。 鍵が、あいてるのは、窓」
「さいですか……」
確かに開いてる。 だけども!!
「なんで中にはいるんだ………」
「あったかそう、だった、から。 暖かいのは、好き」
「さいですか……」
なんか、魔物ってわからんぜ…
たぶん、俺の膝の上にいるのも同じ理由なんだろうな。
「ところで。 質問、して、いい?」
「ん? いいけど?」
なんだろ?
「あなたは、私を、どう、思う?」
「ん? 別にどうとも思わないな。 お前って怖くないし」
思った事を言ってみる。
「ほんと?」
「ホントだよ」
何故、そんな事きくんだ? そう言おうとしたけど、止めた。
「なら、一つ、お願いが、ある」
訊くまでもなさそうだしな。
「少しの間、私を、かくまって、ほしい」
まぁ、それぐらいなら、いいよ。
…なんて、そんなに簡単には言えない。
でも、言わないと、見捨てるみたいで嫌なんだ。
だから俺は、こう答えた。
「それくらいなら、別にいいぜ。 ただし、家事くらいは手伝わないと怒るからその気があるなら、だがな」
その返答に対して、彼女は驚いたのか、少し目を丸くしていた。
そして急に笑顔になって、
「ありがとっ」と、返してきた。
その笑顔を見て、いままで思ってた事すら、俺は忘れてしまっていた。
…可愛い。 ものすっごい、可愛かった。
あぁ、魔物がなんで危険か分かった気がするよ。
俺の生活、これから大変になりそうだ。
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