は?
声は、出なかった。だけれど心の奥底では、けたましいアラームが鳴り響く。
ただ、放心。と、同時に、何故か思考が走馬灯の如く。
始まりは、今年の春…四月。 男女が同じ寮生活を送らなければならないと法が定めた、高二の事。
理由は、人類存亡の為…と言えば話が重すぎるだろうか。
だが、強ち間違いではなくて。
魔物と人間が共に歩み初めて、早数百年…これは、教科書にも書いてある事だ。
だが、それによって人類の大半は消えた。…主に、男性が。
理由は大きく分けて二つ。
一つ目。魔物と人間の間には、魔物しか産まれない。そして魔物は、その“全てが女性”だ。
二つ目。魔物による、女性の魔物化。…と、言っても人間が自ら魔物にしてほしいと頼むのが大半だけれど。
若さが欲しいだとか、長生きしたいからだとか、好きな男性に言い寄りたいから、だとか。
そんな欲深さのせいで人類史最大の危機になってしまった訳ですが。
兎に角、そんなこんなで人間の女性は激減した。
“人間の男性”を産む事の出来る人間の女性は、最早そうそう見つかる訳ではない。
そして、人類は数を減らして行った。
女性だけでなく、男性も。…まあ、これは必然か。
そしてそれは、人類だけでなく、魔物にも大打撃を与えていた。
数が増えすぎた魔物達だが…、魔物達には一部例外を除いて、男性がいない。
いや、正確には…人間の男性=魔物達にとっても自種族の男性。みたいな扱いだ。
だからこそ、人間の…それも、男性の激減も彼女達にとっては魔物史最大の危機みたいなモンなんだろう。
そんでもって、去年の冬。
人間のお偉いさんと魔物のお偉いさんが話し合いを行い、それは実行された。
えーと、ナントカ法が定められたからうんたらかんたら。…ま、まあ兎も角。
“不純異性交遊”だとか、“近親相姦”だとかが国の法によって“当たり前”になった訳だ。
それも、人類限定で。
人類の、主に男性の数を増やす為の法律。それが、今更になって出来てしまった訳だ。
そんで、今年の一月に“人類保護区域”が指定され、そこには魔物達が許可なく立ち入り出来なくなった。
さらに、人類保護区域では…子供を産める年齢になれば、その…そーゆー事もして良いって事でして。
所謂ロリコンホイホイ状態になった訳だ。
だからこそ、更に法律は改正された。
“人類保護区域で生活出来る年齢”という物が定められたのだ。
確か、最年少が九歳。最年長が二十五歳まで…らしい。
因みにこの人類保護区域だが、何と無職でも国から支給が届く為、生活出来る。
まあ、条件としてアレだのコレだのをヤって、兎に角出産率を上げなきゃならない訳だけど。
後、出産率があまりにも低い場合は…その、年齢規制が一時的に取り払われ、大変な事になる。
それを抑える為に、嫌々にも男女が重なり合う訳なんだけど。
年齢規制が外れたら、保護区域は無法地帯。輪姦だろうが強姦だろうが法に触れないらしい。
そして、もう一つ。
“保護区域に住んでいた人間の内、年齢規制に掛からない者は保護区域から出る事は出来ない”
つまり、親やまだ九歳になり得ていない場合、保護区域には入れない。
その反面、条件に満ちた場合は保護区域から出られないのだ。
そしてそれは親を子から無理矢理奪い…そして、まだ未成熟な少年少女達だけの生活を送らせるという無理強いでもあった。
よって、更に法は改正された。
“管理人”が設けられたのだ。
九歳〜十五歳までが、第一管理区域で“性教育”などを受ける、所謂学校のような物が、三月の始めに出来た。
そして、十六歳〜二十五歳までの第二管理区域。そこでは、実際にヤる為に…全寮制が設けられたのだ。
その双方の管理人は、夫のいる魔物…アヌビス等、そこそこ規律に厳しいヒトで組まれる。
そんなこんなで、保護区域は比較的安全かつ平和(ちょっとだけアレだが)になって行った。
…そして。
俺…月妃颯真も、その人類保護区域の住民として…登録されちまった訳だ。
四月。俺は、302と書かれた扉の前に、立っていた。
理由は勿論、管理されるが為に、寮生活を送るが為に。
この先には、俺が後数年間一緒に生活しなくちゃならない人間がいる。
強いられた生活は…ぶっちゃけて良いなら、嫌過ぎる。
だけれど、やらなきゃ後々面倒な訳で。
はぁ。
そう思い、当時の俺は深いため息を吐いた。
そして、ドアノブに手を掛けて……開ける。
ガチャリ、そんなありきたりな音を立てて開いた扉の向こうには。
「ん、やほ。とりあえず…はおーっす(*・ω・)ノ」
ヤケに間の抜けた挨拶(後に知ったけど、はおーっす=おはよう)をした、金髪の少女がそこにいて……。
…ぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐる。
頭が揺れる程、そんな走馬灯紛いを見せられた。
だが、それ
[3]
次へ
[7]
TOP [9]
目次[0]
投票 [*]
感想[#]
メール登録