第一話:流星とキス:

…。
瞼に当たる日の光で、今が朝という事を理解する。
だけれど、やっぱり寝起きは瞼もあけたくないし、起きあがりたくないし。
要するに俺…霧茅紀徒はまだ眠っていたい。
どうせ俺の親…二年も旅行中だし、まだ帰って来ないだろうからダラダラ出来るよな…。
いや、本来そこにかなりの疑問が浮かぶだろうが、俺の親は何故か家を空ける事が多い。
それが俺にとっての当たり前なのだ。
そんなこんなで、寝返りを打とうとしたら。
…コト。
不意に、聞こえるハズのない音…まるで、机の上に何かを置いたような音がする。
…ぴと。
今度は、布のようなモノが額に当てられる。この冷たくて濡れてる物は一体…。
そ〜っと、瞼を持ち上げてみると。
…じぃー。
顔を覗き込むようにした、綺麗に整った顔が目の前にあった。
癖のある焦げ茶色の髪の隙間から覗いた琥珀色の瞳と、目が…合う。
「………ぁ」
すると、少しだけ頬の緩んだそのヒトが。
…ぽっ。と、赤面する。
「…おは、よぅ?」
「あー、ええと…おはよう…?」
何だかよく分からないが、とりあえず返事をして…次第に覚醒していく頭の中。
えっと、確かオッサンに放置プレイを強いられて。
水を求めてさまよって。
で、この娘に襲われて。というか寧ろ襲い返して。
…R18的な事、しちゃって…。
…ぇ? こんな、可愛い娘、と……?
顔が熱く、熱を帯びて行くのが分かる。
「え、え…? え。ええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」
嘘!? ちょっ!?
んなアホな!? ないないないないないないないないって!
嘘ん!? マジで!? 俺童貞抜け組ッスか!? うっしゃぁぁぁぁぁぁぁっ!
頭の中で響く轟音もとい俺の声の勢いに乗って、起き上がろうとしたら制止された。
「…まだ、寝てて」
じぃーっと見つめられて、どんどん顔が熱くなる俺。
どうやら恥じらっているのは俺だけではなく、彼女も次第に俺を直視出来なくなっていた。
ちらっ。ちらっ。
少し赤くなりながらそんな感じに見つめられて始まる無言タイム。
数分、数十分と時が流れる。
次第に堪えられなくなったのか、彼女が口を開いた。
「……そういえば」
何? 言うより先に彼女の顔が近付いて。
…ちゅ…っ。…ぺろ。
ちょ!? はぁ!?
自分の唇に触れた温もりに、大きな驚愕と、唇を離れた温もりにもっと大きな未練が残る。
…また、キスしちゃっ、た…。というか今舐められた…ッ!
ドキドキと高鳴る胸をよそに、頬を赤らめながら彼女は言う。
「…これは、何?」
「……へ?」
間の抜けた声を出すと、
…ちゅ…っ。
また、キスされる。
「…これ。唇を、あてる…やつは、何?」
ドキドキと、自分の鼓動がうるさい。
動脈がドクドクと動いているのが分かる。
そして何より、きゅう…っと締め付けらるような感覚が俺を襲う。
そういえば、あの唇と…沢山触れ合って、あの身体を、抱きしめて…その…。
思い返して、恥ずかしくなる。
「…あ、ええと……その…」
しどろもどろになる、俺。
そんな俺をあざ笑うかのように、彼女は。
ちゅ…んっ…。ちゅ…ちゅっ。ぺろっ、ちゅっ。はむ。ちゅ…。
何度も、何度も口付けを交わす。
次第に言葉もなくなり、ただ…唇を触れ合わせるだけの時間が始まる。
はむ…ぺろ、ぺろ…ちゅっ。ちゅ、ちゅっ。れろ。ちゅっ。
連続で、何回も。
息継ぎが必要なくらい、大量のキスを、飽きる事なく、何度でも。
何回キスされただろうかすら分からなくなるくらい、心臓の鼓動が大きくなった頃。
「…ん…、そういえば…名前…聞いてない…」
言われて、パッと答えたが。
「あっ、と…これは、き、キスって…」
ちゅっ。
これは、キスって言うんだよ。 言うより先にまたキスされて。
「…違う、貴方の、名前…」
ちゅっ。ん、ちゅぅ…。
唇が離れて。
「…まだ、名前…聞いてない…」
少しだけ離れて、彼女が俺に問い掛けてきた。
だから、半端無意識で答えていた。
「俺、は…霧茅、紀徒って言う…」
ちゅっ。
また、最後まで言う事を許されずにキスされる。
そして。
「…かず、と…? カズト…。カズトっ」
ちゅっ。ちゅ、ちゅ、はむっ、ちゅぅ、ちゅっ。
恥ずかしい位に名前を呼ばれて、さっきよりも激しいキス。
ただ触れ合って、吸われるだけじゃなくて。
くちゅ…れろ…ちゅっ、れろ…れろ…ん、ちゅぅ…。
唇を押し上げられ、口内に侵入してくる熱くてとろけそうな、小さな舌。
れろ…れろ。
歯茎の内側。頬肉。舌の付け根や、舌の上。
まるで唾液を絡め取るように蠢いて、吸い上げて、口内を蹂躙される。
もう、自分が何をされているのかさえ分からない程の快楽と熱い吐息が、心地良い。
けど、そんな時間も終わりを告げる。
ちゅる、る…ちゅっ。
一瞬だけビクッと震え、一際強く口内を吸われて…唇が離れ
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