「勇者様が召喚されましたぞ!」
オオオオォォォォォォォォォォ!!
豪華絢爛な場所に、雄叫びが響き渡る。圧倒的♂度。しかも、俺…、霧茅紀徒もそこに居る。
冗談じゃ、ねぇ。冗談じゃねぇよ。
冷静に、ただ、自らの周りを否定する。
まず目に付くのは赤い絨毯。次は、金の装飾が施された玉座。
そこに座るのは、長い白髭と豪華な服を来たオッサン。
頭には金色の王冠。それには、赤やら青やらの宝石が散りばめられていた。
何て見事な二次元的展開。だが、そんなモノを目の当たりにした俺の反応はこうだ。
「……あ、死んだな、うん」
はい死んだー、今死んでるよ俺ー。
だって仕方ないだろう? 屋上から落ち、気付いたらこんな場所に居たんだから。
全く持って常識的じゃあない。こんな等々に、夢が叶ってたまるかよ。
…まあ、死んだなら……。
けど、死んだって決まった訳でもない。
が、理解が追いつかない現状に少なからず困惑するのは、当たり前だろ?
現に今だって、勝手に話が進んでる。まるで、現実みたいに、だ。
「…でして、この国の西に群生する特殊な木々の生い茂る密林に魔物が―」
意味が分からない。つーか普通分からんだろう。
せめて定番のRPGみたいな説明があれば良いんだが……国とか魔物とか、もうぶっちゃけ意味分からん。
そんな、憧れても決して届かないモンがある訳なく。
…って。え? …いや、“魔物”…?
「…なぁ、オッサン。魔物ってーとアレか? 人とかを食う、バケモンの事―」
バケモンの事だよな? その言葉を言うより先に、
「ええ、その通りです“勇者様”。その魔物を、貴方に退治して頂きたく…」
hello、冥界。俺はもう帰る気はねぇ。断言してやる。
勇者様。その言葉。つまり、ヒーロー。
冥界=地獄っつうイメージはこの際ナシだ。ここは、パラダイス。
けどまあ…聞き間違いって可能性もある。
そう思い、オッサンの顔を見やる。
オッサンは、無言。
だが、その威厳たるモノ…は、まあ分からんけど、その自信に溢れた目は俺を勇者だと黙に語っている。
つまり、俺=勇者様。
念願の、勇者様である。今狂喜乱舞しないでいつするの! 今でしょ!
そんな言葉が頭の中をぐるぐるぐるぐる。
けど、これだけは言わせてもらう。
「オッサン、任せろ! 完全無敵のこの俺に! ふはははははははっ!」
瞬間、オッサンが微かに笑んだ気がしたが…気のせいだろう。
俺、勇者。いやっほぅ。
そう思う一方、舞い上がんなよ…つーか、怪しいだろ。と、脳内俺が言うが知った事か。
何故なら俺は勇者…!
俺になら出来る! だって勇者ッスから!!
※
そしてそれから2時間くらい経って、俺は密林とやらに放置された。
密林と言うだけあり、その湿度は信じられないモノであり…。
「ちょ…聞いて無いって、こんなの聞いてないって、ねぇ、ちょっと…」
と、ブツブツ文句を垂れ流す。
それも仕方ない。我が身可愛さで言ってんじゃなくて、本気で。
ちょっとマジで信じらんない。
あのオッサン…いや、ジジイ頭可笑しいって、いやマジで。
次に会ったらあのジジイは吊して鞭打ちした後尻を屈強な♂に掘らせてやる……!
…畜生、侮ってた。
普通RPGとかなら回復アイテムとか武器とか…まあ、何かをくれるものが殆どだ。
当たり前というか、常識。
だが、そんなモノ…存在しない。まあ、ゲームと現実は違うって事か。
goodbye、冥界。こんな世界間違ってる。世界の歪みは間違いなくジジイだ。
つーか何順応してんだよ俺、と脳内俺が言うがそれは無視。知るか。
そんでジジイ。俺に“素手で戦えと?” 無理無理、先ず俺はそんなに強くないし、それに…。
「…縛られてる意味が分からん」
何で俺縛られてんの? え? 普通縛って放置プレイとかしないだろ。
それがましてや魔物退治の勇者様に。
勇者様じゃなくて生贄の間違いじゃないのか。…本気でそう思う。
何、ちょっとマジ理解出来ない。
「…ッ、クソ…後、ちょっと…」
勿論縛られておく訳にはいかないので、身体をくねらせながら脱出を試みている。
端から見たら超絶に気持ち悪いと思うぐらいくねる。というかうねる。
すると、案外あっさりとほどけてしまう縄に「ないわー」と呟き、立ち上がる。
そして立て続けに「……時間の無駄だったんじゃね?」と溜め息を吐き出し、歩みを進めた。
…はぁ。
まあ…どうとでもなれば良いよ…はぁ…。
そう思い、未知の世界へ踏み込んで行った…。
…のは、良いものの……。
「…あー、クソ……あっぢぃ…」
暑い。超暑い。サウナ並みに暑い。
そして何より、水分が足りない。
蒸し暑い癖して、水分補給する場所が見当たらない。
極端な湿度のせいで、喉が潤いを失う事はないのだが、あまりにも極端過ぎてその温度で身体中の水分が汗となって抜けてい
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