洞窟の隅で一匹のワームと少年が一緒になって眠っている。
一人の少年が目を覚ますと、身動きのとれないこの状況から全てを悟った。
精をさんざん搾られたあげく、一緒に寝たいと言い張られ、結局巻き付かれたまま眠ってしまったのだった。
散々精を堪能して搾って満足したのか、当のワームはすやすやと寝入っているため、穏やかな息遣いが少年の耳をくすぐる。
寝ているからチャンス……かもしれないが、少しでもおかしな動きをすればすぐにワームに感じ取られてしまう。
身体を捻らせた程度では当然のようにびくともしない。
どうしよう。
そんな思いが不安を募らせる。
ワームの小動物のような愛くるしい顔を見ていると精を搾り取る時の躍起になった目付きが嘘のようだった。
魔物娘とはいえ、多少なりとも人間らしさを感じるが、しかし、それでも逃げださなければならない。
譲歩しても人間と魔物、共同生活など出来る訳がないのだ。
「油でもあれば……」
何か身体を抜けやすくする物でもあれば、ワームからもずるっと抜けられるかもしれないが、辺りを見回した所でそんな物があるわけがなかった。
あるとすれば、喉が渇いた時のためにワームが用意してくれたバケツの水程度の物であった。
「んんぅ……」
涎を垂らしながら幸せそうに寝返りを打つワーム。
水を身体にかけたら間違いなく起きるだろう。
そして怒る。
自分の場合を考えても母親から水をかけて起こされたら怒るだろうと少年は思う。
しかしそれ以外に手はない。
ちょろちょろと下半身を絞めつける蛇体にかけて見るとびくびく震えながら少し緩む。
間違いなく起きる。
そう思った時にバケツをすぐさま元に戻す。
ワームはまどろみの中で半分目を開けるとまた目を閉じてむにゃむにゃと睡眠を堪能する。
「おもらし……かわいいなぁ……」
とんでもない誤解をされてはいるが、これはチャンスかもしれない。
懲りもせずにまた水を注ぎ込む。
これでワームの少年に対する評価は大洪水野郎になっているかもしれないが、仕方の無い事だ。
それが功を奏してずるぅっと下半身を引き抜く事に成功した。
だがワームは何かを求めるように身体をうねらせており、このままでは異変に気付いて起きてしまうかもしれない。
辺りを見回し、自らの代わりになりそうな物を探すと、ワームがかき集めていたガラクタの中にそれなりにおおきなウサギのぬいぐるみを見つけた。
「これがあれば……!」
すぐさま耳を引っ張り、うねうねと動く蛇体に添わせて置いておく。
するとすぐさま絡みつき、ぎゅうぎゅうにウサギが絞めつけられる。
「……ん……んぅ……」
多少違和感を覚えてはいるようだが、まどろみの中にいるのであまり気にしてはいないようだった。
大きなぬいぐるみを抱える女の子としては凄く絵になっている。
少年が絡みついているよりは至って健全な印象だ。
ワームを横目にそーっと忍び足で洞窟の外に向かう。
服はワームが引き裂いたのでボロキレ状態だが、無いよりはマシだった。
その時、びりっと何かを裂く音が響き渡った。
すぐさま振り返ると、ワームが、すっと立ち上がっていた。
ぬいぐるみは腹から綿を出し、無残にも引き裂かれていた。
こちらからでは顔が良く見えなかったが、怒っている事は明白だった。
くるりと振り返って少年を見つけると、にこにこした表情で微笑みかけてくる。
「またにげようとした……あははぁ……そんなにいじめて欲しいんだねぇ……いいよもう……わかったよぉ……」
「い、いや違うんだ! これは……」
問答無用とばかりに少年に飛び掛かると、例の如く巻かれ、一際強く絞めつけられる。
水でしっとりと濡れており、ボロキレの隙間から容赦なく濡らされてしまう。
ぎちぎち……めきめき……
体が軋む音が響き渡る。
ワームは町の中では超極悪と恐れられた魔物。
少年の華奢な体など、本気を出せばへし折ることなど容易であった。
しかしワームの優しさなのか、気に入った相手を残虐に晒すような事は考えてもいなかった。
「もっと快感に浸ればにげなくなるのかなあ……?」
ぽつりと疑問を投げかけたが、自分で既に答えを導き出しているかのように納得する。
わきわきと手を握ったり開いたりしていると、自らの指先をじっと見つめている。
細く、尖った竜のような爪、手のひらは意外にも柔らかく、ぷにぷにしているがこんな爪で引っかかられたらたまったものではない。
傷口はぱっくりと割れ、血は勢い良く飛び出し、人間を意図も簡単に死に至らしめる事ができるだろう。
「それとも、痛みで悶え苦しめば反省して逃げなくなるのかなあ……? どっちだろう……」
ワームにとっては痛みとは残虐性を纏っていない物を指す。
アメとムチのムチの部分である。
端から聞けば恐ろしい発言であるこ
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