図書室の様子が可笑しい……じゃなかった、おかしいと噂されるようになったのは、アイツが来てからだ。アイツの名はディノ・クロフィール教諭。『黒』フィールなんて付く時点で妖しさ爆発だ。そしてその妖しい噂の一員に、何故か私も含まれているのだった。勿論そんなの知ったこっちゃない。ていうか、マジで勘弁してほしい。第一その噂というのが……
曰く、図書館では毎夜乱交が行われている。
曰く、クロフィール女史に見染められた者は、淫乱にされてしまう。
……
……馬鹿馬鹿しい。第一あのお子ちゃま体型&キャラで淫乱だ?
……と言いたいところなのだけれど、困った事に私の周りにその証拠が転がっていた。
久川 彩音。私の友人にしてクラス委員長を3期務めあげた超堅物。
……だった。過去形よ。
例の黒フィールが私達の副担任として着任してから数週間後、彼女は変わった。それまでシャツの第一ボタンすら外す事を躊躇う淑女だったはずが、その日あろう事か男子を挑発するように第3ボタンまでを開け(結構ボリュームのある)胸を見せつけていたのだ。
そりゃあクラスは大混乱に陥りましたとも。友人の私が言うのもなんですが、結構クオリティの高い彼女が色気を振り撒いたんだから当然と言えは当然なんだけど。色香に中てられた男子共は彩音に襲い掛かる寸前だったし、女子は女子でいかにも汚らわしい物を見たと遠巻きに噂する。他人事になれば一切自分の手は汚さず人を蹴落とす事を愉しみとする。本当に酷い連中ばかりだ。
私は彼女を叱責し、無理矢理シャツのボタンを留めた。不満そうに頬杖をつく彩音の仕草は完全にだらけきっている。いつもの彼女が最も嫌う行為の筈なのに……
正に別人と化した彩音は、それ以降何故か図書室に入り浸るようになった。普通勉学に励まなくなった輩が屯うって言えば、体育館裏ってのが相場だと思ってたんだけど……からくりはすぐに解けた。いつの間にか例の黒フィールドが図書委員の顧問になっていやがった。黒フィールドの半私室扱いとなった図書室に、彩音は入り浸っていたんだ。ますます怪しい。
実は意を決して放課後の図書室に近付こうとしたんだけど……途中で断念。図書室がある別棟4階までは行ったんだよ! でも……そのあの、何と言うか、言い知れない怖さ……足を踏み込んだら二度と戻って来られないんじゃないか……そんな感覚に襲われて……今の図書室はハッキリ言って魔境よ、魔境! 単身乗り込むには、あまりに危険すぎるわ!! ……別に怖気づいた訳じゃないから。
でも彩音をいつまでもあのままにしておく訳にはいかない。何とか彩音に魔境通いを止めさせないと……
で、それから1ヶ月、私なりに調査検討を重ね、どうやら図書室に潜むのはどうやら『本物の悪魔』なんじゃないかという結論になったわけ。荒唐無稽な事は分かっている。でも、そうとでも結論付けないと納得できない事が多すぎるもの。私の見立てでは、クロフォードは淫魔と呼ばれる類の悪魔。あの堅物を骨抜きにするなんてそうとしか思えないから。
今回は対悪魔戦略もバッチリだし、念の為に援軍も用意してある。片桐紅葉教諭。学園の風紀を取り締まって10年の鬼教官にして恐怖の行き遅れ、現在32歳。又の名を『ミス風紀手帳』。万が一中で破廉恥な事が行われていてもこのカードさえあれば一発でストップするでしょ。中にいる生徒には停学(ギセイ)になってもらうけど、このさい止むを得ず。恨まんといてね。
さあ、準備は万端! 伏魔殿に乗り込むわよ!!
相変わらず別棟4階は近寄り難い空気を放っていた。居るだけで胸焼けのしそうな重い雰囲気に、当初のやる気がフーセンみたいな音を立てて萎んでく。
「図書室でいかがわしい行為が行われているというのは、本当なのですね」
「ア、ハイ」
隣を歩くミス風紀手帳はこの重々しさをものともせず、図書室へ突き進む。すげ〜、全く気にしてね〜。さすが百戦錬磨のアバズレ……もとい、風紀管理主任。
「私はクロフォード先生に真偽の程を確かめて参ります。貴方は此処で待機しているように」
図書準備室に到着した片桐教諭は、私を残し図書準備室へ突入した。私を残したのは万が一行為が行われていた場合、一般生徒にショックを与えないための対処だろう。サスガ。
……でも、ここで一人にされると本当に怖いんですけど……
放課後の図書室なんて少しは生徒の出入りがあっていいはずなのに、人っ子一人此処へ足を運んで来る様子は無い。一人ポツネンと佇んでいると、あらぬ声が聞こえてきそうで……って、アレ?
今の声って? まさか、ね……ハハハ
白を切るつもりでソッポを向いた瞬間、再び女の人の声。この声って……ちょ、チョット待ってよ。
間違いない、今の声は……その、喘ぎ声、だよねぇ。
ええ〜! と声を上げそうになり私は両手を口に当て声を殺す。
チョット
[3]
次へ
ページ移動[1
2 3 4 5]
[7]
TOP [9]
目次[0]
投票 [*]
感想[#]
メール登録