春告げ祭りの夜に

いつになく酷い寒さに襲われた春を告げるお祭りも、もうすぐ終わりを告げようとしていた。僕は外を見ながら静かに外の喧騒に耳を傾ける。
「もうすぐ……」
「ねえ、何か言った?」隣に座り祭りの余韻に浸る彼女……パメラが僕の呟きに気付き顔を向ける。
「いや、何でもない」
「フ〜ン」腑に落ちないといった面持ちで、僕を睨む。ていうか、拗ねる。「誰か他の人の事、考えてるでしょ?」
僕は僅かに眉を動かす。今、彼女に気付かれる訳にはいかない。
「まさか。パメラ以外の事なんて考える必要もないだろ」
「……そう?」上目使いに僕を見つめてくるパメラの仕草に、少し緊張させられてしまった……「なら、良いんだけど」ジッと見つめられると、見透かされそうで正直怖い。
今は、彼女に
      ばれる訳にはいかないんだ。
僕は不意打ちとばかりに彼女の唇へキスをすると、笑みを浮かべる。
「ば、馬鹿!」真っ赤になってソッポを向く。かわいいなあ。
でも、それも もうすぐお仕舞い。
僕には 間もなく 

僕等は一つの罪を犯した

今は遠くなった故郷で、僕達『3人』は幸せに暮らしていた。僕・ミレアムと二人の幼馴染、パメラとシアは、いつだって一緒だった。本当に仲良しだった。
「いつかは、みんなで魔王を倒しに行こう!」と本気で意気込んでいた僕。
「よ〜し、私も魔法使いになってミレアムと一緒に行く!」と調子を合わせたパメラ。
その後ろでいつもオドオドしながら「わ、私も」と付いてきたシア。
何も知らない子供の日々は、瞬く間に過ぎてゆく。
一人の男子が剣を振り、少女達が魔法を覚え、村の近くに跋扈する魔物を討伐に行くという話になるまでそう時間はかからなかった。
そして一人と二人の関係が異性となるにも。
「村はずれの洞窟に魔物が住み着いたんだって。で、その洞窟の前を通る旅人や商人を襲っている所為で、他の村と連絡が付かなくて困ってるんだって」
今思えば、それこそが彼女の策略だった。
村はずれの洞窟に“何が潜み”“何があるのか”そんなことすら調べずに近づくなんて、冒険者として失格な行為を僕等はしでかした。ただ一人、パメラを除いて。
当然僕等はその魔物退治に立ち上がった。無謀にも。準備を整えた僕たちは意気揚々と魔物退治に乗り出す。
「ねえ、ミレアム。これ」不意にパメラから話しかけられる。彼女から手渡されたのは小さな石の付いた幾何学模様の御守り。「念のためよ、念のため」
洞窟へ辿り着いた僕らを待っていたのは、絶望そのものだったと言っていい。
圧倒的だった。予想だにしていなかった高位の魔物に僕等の付け焼刃が到底役に立つ筈も無く、敗走を余儀なくされた。必死に逃げる。噂が確かなら、アレに捕えられたが最後身も心も欲望に支配され、永遠に飢えながら魔界を彷徨う事になる、と。
「う、あぁ……」声は後ろから上がった。体を押さえ、蹲ったシア。
「どうした、シア!」僕の声に反応するのがやっと。
「お、お願い、逃げて……」
シアの体は異常なまでに上気し、汗と臭いで、少女とは思えない程の色気を湛えていた。
目の前の魔物が絶えず発散する気に当てられている。そう理解するに、時間はかからなかった。
「馬鹿! シアを置いて逃げるなんて事できるか!!」
「二人とも急いで!」パメラの声と同時、閃光が奥へ向かって放たれる。が、ソレは事も無げに砕かれた。
「ウフフ……こんなものが、私に効くと思って? 大丈夫よ、3人とも直ぐに堕してあげる・か・ら」声に釣られて僕は視線を向けてしまう。視線の先には見るモノ全てを蠱惑するように艶めかしい魔物の姿があった。
サキュバス。現魔王直系の種族にして、最高位の魔族。冒険初心者に敵うような軟な相手ではない。そんな化け物が何故こんな所に。
などと、のたまっている場合か! 今は一刻も早くここを離れないと!! とはいえ、僕の体はあの肢体に魅了され、まともに動かすことすら出来やしない。
「あら……? おかしいわね? そろそろ彼女の様になっても良い筈なんだけど」
サキュバスは意味不明な事をほざく。その言葉の意味は、目の前の少女によってもたらされた。目の前で蹲っていた筈のシアの眼は焦点を失い、篝火に吸い寄せられる虫の様にフラフラと魔物へ歩み始めていた。
「駄目だシア!」僕の制止は意味を成さない。
「サアおいでなさい。『悦楽の世界へ連れて行ってあげる』」サキュバスは恐ろしいほど甘ったるい声で僕等を誘う。両の手を広げ僕等を迎え入れようとするその姿は、まるで天使様にすら思えてしまう。
「こんのおおおお!」突然、黄色い影がサキュバスへ突進する! パメラの放った電撃が魔物めがけ襲いかかっていた。不意を突かれる格好となったサキュバスは「キャ」と小さな悲鳴を上げ後ろへ飛び退く。
僅かな隙。パメラは僕の手を掴むと走り出す。「待って
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