雪の中のワーウルフ

「はぁ...。今日のバイト疲れたなぁ...。」

俺こと大学生である坂本龍一(さかもとりゅういち)は、そうぼやを吐きながら、寒い夜道を一人で帰っていた。右腕に巻いている時計に目をやると、短針が八時を指しており、長針はちょうど30分を指していた。
時計から路上に目をやると、道端には雪が積もっており、明日の朝になったら子供が雪だるまや雪合戦などをやれるくらい積もっていた。

「何であんなに客がくるのかなぁ...。」

そう言うと、肩を回し、首を左右に振った。
確かに客が増えて俺の給料に色がつくのは良いことだけど、正直あの数は来すぎだ。
いつまで経っても客の数減らず、バイトを総動員して接客にあたり、8時頃になるとやっと客足が遠のき、店長が「疲れただろう?もう帰っていいよ。」という言葉を発したので、俺は今日の給料を貰い、そそくさと店から退散したのであった。

「しかし、寒いなぁ...。去年はこんなに寒かったけなぁ...。」

俺は、今年の冬の異常な寒さに身を震わせながら歩いて行く。
ある程度歩いた後、俺は道端の雪に明らかに色の違う大きな物体を見つける。
何だろうと思いつつ、近づいていくと、そこには中学生ぐらい背の少女が倒れていることに気がついた。

「おわ、少女!?何であんな所で倒れているんだ...?」

俺は、少し駆け足になり、倒れている女性のすぐ側まで近づく。
しかし、近づくにつれ彼女は何かがおかしいことに気がついた。なんと、この真冬の中、厚着を着ていなかったのである。
そればかりか、胸や腰に破れた布を着けている程度で、他には何も身につけていなかった。
そして、何よりおかしかったのは腕や足に生えている動物のような毛や、頭や腰の後ろ側に生えている犬の耳や尻尾。どう見ても人間ではない何かだった。しかし、倒れている彼女を見捨てることは出来ず、倒れている彼女の側にしゃがみ込み、大きな声を上げ安否を問う。

「大丈夫ですかー!?」

「うう...。」

俺の大きな声に反応したのか、彼女の頭に生えている犬の耳と腰の方に生えている尻尾が微かに動き、同時に呻き声を上げる。

「よかった...。まだ意識がある。」

その事を確かめた俺は、自分の住んでいるアパートに連れて帰ろうと考え、彼女の体を持ち上げようと体の下に手を入れ、腕に力を入れると、持ち上げようとする。
彼女の体は思っていたよりも軽く、いつも居酒屋で鍛えられている俺は簡単に持ち上げられた。

「と、意外と軽かったな。さて、早く家に帰らないと!」

そう言い、俺は雪が降る中、全速力で走り抜けていった。





やっとのことで家に帰った俺は急いで階段を駆け上がり、自分の部屋番号が書かれたプレートが付いている扉を見つける。彼女を抱きかかえているため開けにくかったが、何とか鍵を開け、部屋の電気を付けた。
部屋は大学に行ったきり開けてなかったので、寒さが蔓延していて、その寒さに体が震えた。
その寒さに耐えつつ、抱きかかえている彼女をいつも龍一が寝ているベッドの上に置き、毛布と布団を被せる。
次に、エアコンのリモコンで暖房をつけ、部屋全体が暖まるようにする。
そして、布団が暖まるのは暖房だけでは駄目だと考えた俺は、いつも寝るときに使っている湯たんぽにあっつあつのお湯を火傷に注意しながら注ぎ、専用の袋に入れた後、彼女が入っている布団の足下に入れていく。
これでひとまずは安心だろう。そう思った俺はひとまず安堵する。そして、布団の側に座り、彼女の顔を見る。
落ち着いて見ると彼女の顔は人間そっくりであり、まだ10代後半ぐらいの幼い顔立ちであることが分かる。
しかし、彼女の頭に生えている犬の耳が人間であることを否定する。

「多分、この耳は彼女から生えているものなんだろうなぁ...。さっきだって反応してたし...。」

そう思うと、彼女の頭から生えている犬の耳を触りたくなり、俺は右手の親指と人差し指で耳を摘んだ。

「やぁ!んん...。スー...。」

摘むと彼女は嫌がり、頭を左右に振る。そして、また眠りについた。

「と、こんなことをしている場合じゃないな。夕飯を作らなきゃ...。」

俺はそう言うと、寝ている彼女を心配す気持ちを抑え、立ち上がり、台所へと向かっていった。




しばらくして私ことワーウルフのサクラは目を開ける。
-あれ?ここはどこ...?- そう思い、ベッドから上半身だけを動かし、辺りを見回した。
目の前には見たことがない中くらいの薄い箱みたいな物が置いてあり、何かを不思議に思ったが、そんなことは無視して、床に視線を向けると、私の家にあるテーブルよりも小さいこぢんまりしたテーブルが置いてあった。
他にも、本棚やタンス、服が引っ掛かっているハンガーなどが部屋に置かれていおり、辺りを見回して
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