「えい!」
ボスッ・・・コロコロ・・・
「ん〜・・・なかなか飛ばない。」
少年は一人でボールを上に投げ、それをバットで打つ。野球ではなくノックだ。しかも一人。
少年の名前は 琉川 真 (るかわ まこと)ホームランの練習中のようだ。金属製のバットだが、芯を捉えねばなかなか飛ばない。飛んだとしても、フライになることが多い。
「えい!」
カン!
「おっ!少し飛んだ!もっかい!」
カン!
「もっかい!」
カン!
「もっかい!」
そしてついに
カキーン!
「やった!」
大きな弧を描き、痛快にボールは飛んでいく。真は、喜びその打球を目で追う。初めてのホームランなのだ。そしてそのボールは・・・
洋館のガラスに吸い込まれていった。
ガチャン!
「あっ・・・」
洋館からはなにも返事はない。雷親父の怒鳴り声や、悲鳴も聞こえない。確かなのは、真がガラスにボールを命中させてしまったことだ。急いで真は洋館へ走る。デジャヴを感じるのは気のせいだろうか?
「ごめんなさーい・・・!誰もいないのかな・・・?」
呼んでも、誰も出てこない。真は少し、怖くなった。
「あれ・・・ドア開いてる・・・」
洋館の扉は、鍵がかかっていなかった。真は首を傾げる。
「ごめんくださーい・・・入りますね〜。」
真はボールを探しに、洋館へ入っていった。
それが原因で始まった。
「ん〜・・・暗いな・・・」
昼間だというのに、洋館のカーテンは閉まっていた。真はそれが不気味でしょうがなかった。
「お化けでも出そうだなあ・・・早くボールを取って帰ろう。」
そしてガラスが割れた場所を見つけた。そしてボールも。
「あっ!僕のボール!」
が
スー
「へっ?」
フワフワ
「へっ!?」
なんとボールが浮いている。小刻みに揺れながら。
そして
ヒュン!
「あっ!待て!」
ボールがどこかへ飛んでいく。とても速いスピードだ。真は必死に追いかける。
そして、ボールは広い部屋に入っていった。
「はあ、はあ・・・疲れた。」
息切れしながら真は部屋の前で一息つく。
「なんで浮いたんだろう・・・?ほんとにお化けが・・・いやいや。とにかく入ろう。」
そして、部屋に真は入る。
ガチャ
「お前か。私の洋館に侵入した曲者は・・・」?
「へっ・・・?」真
きらびやかな装飾品の施された椅子に、誰かがいた。
「まったく。私の眠りを妨げるとはいい度胸だな。少年。」?
「誰ですか・・・?」真
「ん〜?訪ねるときは自分の名前から。だろ?少年。」?
「むっ・・・。僕の名前は 琉川 真 です。おばさんは?」真
「なっ!?私はおばさんではない!」?
「じゃあ。部屋の明かりをつけてよ。嘘なんじゃないの?」真
「くっ・・・いいだろう・・・パチンッ」?
指を鳴らすと、蝋燭に火がつく。そして、椅子に座る何者かの姿が見えはじめる。
「ほら、満足か・・・私はリリィだ。」リリィ
「フードとってよ見えないよおばさん。」真
「貴様・・・いいだろう・・・」リリィ
ファサ・・・
「わっ・・・」真
「どうだ?普通の女だろう?」リリィ
「・・・」真
「どうした?」リリィ
「えっ・・・!あ、いや・・・」真
「おかしな奴だ。」リリィ
真が一瞬止まったのも無理はない。その女性はとても美しかった。金色の髪。紅く輝く妖しい瞳。柔らかそうなピンクの唇。何もかもが、この世のものとは思えなかった。
「さて、このボールは?お前のものか?少年。」リリィ
「あ、その。僕、ホームランが打ちたくて練習してたんです。それで偶然お姉さんの家に・・・謝りいこうと思って、それでここに・・・ごめんなさい・・・」真
「礼儀は弁えているのだな。来なければ襲っていたぞ?」リリィ
「へっ」真
「いや、何でもない。」リリィ
「ごめんなさい。お姉さんの家のガラスは弁償するから・・・それで許してください・・・それとボールを返してください・・・」真
深々と頭を下げ、謝る真。
「ダメ」リリィ
「え」真
真は耳を疑った。なんとリリィは許さないつもりのようだ。
「じゃ・・・じゃあどうすれば・・・」真
「ふむ。それなりの対価を頂こう。」リリィ
「ど・・・どうすれば・・・」真
「そうだな・・・」リリィ
「ドキドキ・・・」真
リリィは少し考える。そして、結論を出した。
「よし。1日召使いになれ。」リリィ
「え。」真
なんと真に召使いになれと言うのだ。1日だとしても、おかしな話だ。
「えー・・・母さんや父さんが・・・」真
「コウモリを送った。心配はいらない。」リリィ
「へ?コ
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