「村長、作物はもうダメです・・・」
「今月もひどいものじゃ・・・」
「収入がないから、食うものもねえ!このままじゃ皆飢え死にしちまう!」
「天狗じゃ!天狗の仕業じゃ!」
「はいはい、わしのせいわしのせい」
「ちくわ大明神」
「誰だ今の」
昔々のお話です。ここはジパングのとある村。どうやら作物が上手くできないので、村人達は困っているようです。
「龍神様が関係してるのかな・・・?」
「言われてみれば!納めるものがねえから怒ってるんじゃねえのか?」
「ふうむ・・・しかし捧げるものはない・・・」
村人達は大慌て。捧げるものが無い状態では、一生作物は育たない。そう考えたのです。
「生け贄・・・とか?」
「ばっか!おめえ正気か!?納めるものは確かにねえけど、生け贄なんか捧げるわけにはいかねえだろ!?」
「いや、もはや生け贄しかあらぬかもしれぬ・・・」
「村長!しかし・・・!」
なんと、生け贄を用意すると言うのです。頭おかしい周りの村人は最初戸惑ってはいたものの、村長の言う通りかもしれないと思うものも出始めました。そして、最終的に生け贄を用意しようとします。
「けどよお、誰がなるんだ?」
「俺らは働かなきゃいけねえ。まず大人の男衆は除外だな。」
「村娘達も無理だ。龍神様は女性って噂がある。」
「となると・・・子供で男か・・・」
「一人いるな。」
「不憫じゃが、しかたあるまい・・・」
こうして生け贄は決まりました。
〜そして、数日後〜
「お母さん行きたくないよ・・・!グスッ!」
「ごめんね・・・宏樹・・・村のためなの・・・分かってちょうだい・・・」
「父さんもお前を行かせたくない・・・だけど、村のためなんだ・・・」
「いやだよ・・・!龍神様にたべられたくないよ・・・!」
哀れ生け贄に選ばれた男の子、宏樹は父親、母親に泣きついています。しかしこれは村の決定。覆すことはできないのです。
「では、行きます。」
「うええええん!お母さん!お父さん!」
「宏樹・・・!宏樹!」
「早く行ってくれ・・・でないと親としてお前らを殺してしまう・・・!」
「行くぞ!目指すは龍神様のもと!」
こうして、生け贄宏樹は龍神様のもとへ出荷されたのです。なんと悲しいのでしょうか。
〜到着〜
「到着だ。我々は退避する。」
「宏樹君。すまねえ・・・」
「早く行くぞ!龍神様が出てくるやもしれぬ!」
「うう・・・」
こうして、龍神様の祀られる洞窟へと宏樹ははこばれてきたのです。現在、一人でポツンと籠の中にいる宏樹。お父さん、お母さんの事を考え、泣いてしまっています。
「噛み砕かれて、潰されちゃうのかな・・・いやだよお・・・うっ・・・ヒック」
宏樹はグスグス泣いてしまい、顔も服もグチャグチャです。目を真っ赤にして、口元をへの字にして泣いてしまっています。とてもとても可哀想です。
と、その時でした。
ガタッ
「わっ!?何・・・!?」
突如籠が浮き、洞窟の奥へと飛び出したのです。もっとも飛んだと言っても、数十センチほどですが。
「あわわわ!」
バランスを崩し、籠の中から落ちそうになる宏樹ですが、なんとか踏ん張りきりました。そして、ついに籠が止まります。
「(どうしよう・・・)」
そんなことを考える宏樹。
と、その時
「何者ですか?私の領域に立ち入った者は?」
「ひっ!?」
凛々しい女性の声が洞窟の中でこだまします。宏樹は足がすくみ、動くことが出来ません。
「その籠の中にいることは、分かっています。今すぐ素直に出てくることをオススメしますよ?それとも・・・力ずくの方がお好きなのでしょうか?」
「ご・・・ごめんなさい!」
あわてて籠の中から脱出する宏樹でした。その無垢な瞳に映し出されたものとは・・・?
「あ・・・」
「男の子・・・?なぜこんな場所に?」
そこには美しい紫の髪をたなびかせ、勇ましくたたずむ女性がいました。しかしその下半身は人ならざるものでした。なんと緑色の鱗がある尾があるではありませんか。おまけに頭には角が生えています。そう彼女はこの村の守り神。龍神様なのです。
「りゅ・・・龍神様・・・?」
「いかにも、この私が龍神ですが。しかしなぜ君はここへ?」
「む・・・村の作物が皆死んでしまって、龍神様がお怒りになっていると・・・だから生け贄としてきました・・・」
「へ?私は別に怒ってはいませんよ?」
「え!?だって作物は全て・・・!」
「あれは自然の成り行きです。まあ任せてください。すぐに復活させてあげます。」
「本当ですか!?なんとお礼を言っていいやら・・・!」
「少し待っていてください。術を唱えてきますので。」
「はい!」
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