その日、ボクは友達たちに囲まれてた。
大好きだった友達と別れなければならなかったからだ。
「ほんとうに行っちゃうの?」
「うん」
「どこに行っちゃうの?」
「わからない…とおいとこ」
「帰ってくるよね」
「うん。ぜったいに帰るよ。だってボクたちには、大人にないしょのひみつ基地があるじゃないか!あそこのこと…ボクが帰ってくるまでお願いね」
「うん!そうだよね。ルチアが帰ってくるまで俺たちいつまでも守ってる」
友達たちは、遠くへと行くことになってしまったボクを励ましてくれた。
「絶対だよ!ボクも向こうに行ったらたくさん友達作って、ここみたいなひみつ基地作るんだ!ここよりすごいのだよ!かえってきたら、うんと自慢してあげるんだから!」
「ここよりもスゴイの?!うん!聞きたい!ルチアとその友達の作ったヒミツキチのはなし、ぜったい話してよね!」
ボクたちは、そういいあって別れたんだ。
ボクの名前は、ルチアーノ。親しい人たちはみんな、ルチアって呼ぶの。友達も、神父様も、お祈りに来る人も。
ボクは孤児だから、パパもママもいないんだけど、ボクを引き取って育ててくれたのは、教会の神父様。だから、いろいろお手伝いをしているの。その神父様が、砂漠っていうところの街の教会に招かれたって言ってたの。だから、ボクもついて行くことになったんだ。
砂漠の街に着いたとき、ボクは目をいっぱいに開けて驚いたんだ。だって、見渡すかぎりおっきな砂山があるんだもの。
おっきな砂山。くっさいラクダっていきもの。みどりがほとんどない街。みんな、お洋服じゃなくてダボダボしたマントを被ってて帽子を被っているの。おひさまはギラギラしていて暑いけど、日陰に入っちゃえば大丈夫さ。
教会に着くと、部屋の中まで砂だらけ。ボクは、お掃除のしがいがありそうだなって思ったの。
神父様は、教会にやってくる人たちのお相手で大忙し。懺悔のときなんかはボクはすることがないの。だからそんな時はお掃除するか、お外で遊んでいるの。教会にやってくる人たちの連れてるボクぐらいのこどもの相手をしてあげようと思うんだけど、肌の色が違うって言ってなかなか遊ぼうとはしてくれないの。
だから、そんな時は砂で遊んでいるの。
その日…ひとりで砂山をつくってると、ふっと目の前が暗くなったんだ。
見上げてみると、見たこともないおねぇちゃんが目の前でニコニコしてたの。
「ボク、ひとり?」
「そうだよ」
「お友達は?」
「まだいないよ。でも、そのうちいっぱいつくるよ!だから、さびしくないよ」
「そう。えらいのね」
おねぇちゃんは、こどものボクでもきれいな人だって思うほど。そんなおねぇちゃんがボクの隣に座るとニコニコしてる。
きれいなピンク色のマントを羽織っているおねぇちゃん。
「おなまえは?」
「ルチア。ほんとうはルチアーノっていうんだけど、親しい人たちはみんなルチアって呼ぶの。おねぇちゃんのおなまえは?」
「サんど…」
「さ?」
「サ…サー………」
「おねぇちゃん……もしかして、おなまえないの?」
「…うん」
「じゃぁ、ボクがつけてあげる。んーと、んーと…」
「んーと?」
「んーと…あっ、おねぇちゃんきれいな宝石もってるの?」
見れば肩にキラキラした赤いものがあった。
「これ、きれい?」
「とっても赤くてキラキラ。そうだ、おねぇちゃんのおなまえ…サルビアでどう?」
「さるびあ?」
「とっても赤くてちっちゃいお花が咲くんだよ?よく教会に鉢を届けてくれた人がいたの」
「そうなんだ。…さるびあ…さるびあ!アハッ♪」
「サルビアおねぇちゃん、うれしそう」
「さるびあ♪ ルチア、ありがとう」
「うん!」
おねぇちゃんは、とってもうれしそうに笑ってる。
「それで、ルチアはなにしてるの?」
「砂遊び」
「砂遊び?」
「うん。まだお友達いないから、おおきなお山をつくっているの」
「そうなんだ。友達作ったら何して遊ぶの?」」
「んーと…」
「うん」
ボクは考えた、たくさんの砂を使ってできること…
「おねぇちゃん、棒倒し知ってる?」
「ぼうたおし?」
「うん。こう砂の山をつくってね?頂上にこうやって棒を立てるの」
「うん」
「でね?まわりの砂を取っていくの」
「うんうん」
「で、最後にこの棒を倒しちゃったほうが負けなの」
「ふーん」
「やってみる?」
「うん♪」
棒倒し…おねぇちゃんはへたくそだった。いきなり砂をかばっと取って棒を倒しちゃうんだもの。
まじめに、最初の一手で棒を倒しちゃう人なんて初めて見たよ。だから、教えてあげたの。
「こうやって、すこしずつ周りの砂をとっていくの」
「こう?」
「そうそう。ゆっくりゆっくりね?そうして、棒を倒さないように…すればいいと思うの」
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