「起きて、ミーリエル」
「う……ううん」
遠くにユージの声が聞こえた
「今日は出かけるのだろう?早く起きないと置いて行くよ?」
「あと5分…」
「ほらほらそんなに待てないよー。愛しのユージさんは愛する恋人さんを置いてって出かけてしまうような薄情者なのだ!」
そういいながらしっぽを掴むと“かぷっ”と口に含んであま噛みを始めるユージ
「ユージはそんなことしないもの!って、しっぽを噛まないで?くすぐったい…」
普段だったら絶対に言わないようなこと言うユージにちょっと反論
それにしても、最近ユージはこうやってしっぽに何かするようになった
「なら、愛しのミーリエル?そんなユージをいつまでも困らせないで?せっかくの朝食が冷めてしまうじゃないか!さもないと空腹のユージはしっぽを味わうのをやめないぞー」
「もう!…って、そんな時間?」
「そうだよ?今日は私が先に起きて、君のために特別な朝食にしたんだよ?」
特別…そんな言葉につられて、眠い目を擦りながらベッドから起きる
ちゅっ!
「おはよう!ミーリエル?さあ、起きた起きた!」
天井の紐を引っ張ると電気の灯りが点いた
ううっまぶしい…
おでこにキスするとユージは台所から、料理をちゃぶ台へと移しはじめた
「おでこじゃなくて口にキ〜ス〜じゃないとまた寝る〜」
「ほらほら、起きてよ」
「お姫様は王子様のキスで目覚めるの〜♪」
「はいはい。姫?朝でございます……ん…」
ちゅっ♪
仕方がない起きてあげよう…
ベッドを降りるとそこにはちゃぶ台があり、朝食が並べられている
見ると、そこには和食が並んでいる
ごはん、味噌汁、納豆、おひたし、鯵のヒラキ…
いたって和風な朝食
「「いただきます」」
箸を持って手を合わせる
二本の棒…お箸を手に持ち…
そして、ご飯を食べてみた
「おいしい!」
甘い!
噛めば噛むほど甘みが出てくる
味噌汁を飲んでみた
やわらかな味…
新鮮なわかめの歯ごたえ
しっかりと味噌汁を吸った油揚げ
噛むとじゅわっと出てくる味噌汁と油揚げのうまみが溶け合った味…
わかめと油揚げのうまみが溶け出したまろやかな味噌汁がのどを通り過ぎていく…はぁ〜♪
次に納豆…
だし汁を入れて、かき混ぜる…一心不乱にかき混ぜる…
かの有名な魯山人もよくかき混ぜて食したらしい
ただの豆の塊だったのが、よく泡だって空気を含みおいしそうな茶色のねばねばを作り出している
箸についた粘りをねぶる
大豆…納豆のうまみとだし汁のうまみ、醤油と味醂の味がうまみのハーモニーを…
ユージの精もおいしいけど、これもなかなか…
噛まなくてもつるつるっと入ってしまう
ほうれん草?のおひたし…
青臭い感じは茹でてあることで消え、だし汁と醤油の味がよく絡まっている
上にかかっている鰹節のうまみもあいまって…これもおいしい
鯵のヒラキ…
身を箸で開くと魚のあのおいしそうな匂いが鼻腔に飛び込んできた
ほっくほくの身を丁度いい大きさにして口の中へと入れる
ふわっとした食感
海の匂いと焼きたての魚のいい匂いが鼻から抜けていく
噛んでみればじゅわっと融け出てくる魚の油とうまみ…
ここで醤油をかける
そのままではない、醤油のうまみと鯵のうまみが融けあったなんともいえない味が舌に口の中にとろけ出す
何もかけてない大根おろしを摘んで舌を休ませる…
今度は、骨のある方だ。ヒラキの骨を丁寧に取り除く
白いほくほくとした身が出てきて、さっきと同じように食す
歓喜だった
「……」
「…どう?ミーリエル?これが私の故郷の朝ごはん。まあここまで凝って出てくることはあまりないだろうけど、一般的に朝食といえばこんなのと言われるかな」
「っ!」
ワタシは思わず合掌した
「?」
「おぉいしい♪」
まるで、とろけてしまうようなおいしさにワタシは歓喜した
ユージは片手を握り締めてガッツポーズをした
「姫!ご満足いただけましたでしょうか?」
「うむ。余は満足だった!近こう寄れ!」
満腹になった幸福感にユージを抱きしめて昼寝?いや二度寝をしようと横になろうとした
「ちょっと!ミーリエルっ!寝ちゃダメだ!!これから出かけるって言ったじゃないか!」
「どこへじゃ?」
「デート!」
「デートはいつでも出来る!余はそなたを抱き枕にしとうぞ?」
こんな幸福感と共にユージを抱き枕に寝たらどんなに幸せだろう?
「ミーリエル!お姫様ごっこはいいから起きて!!」
・・・・・・
ワタシは普段のラフな格好をするとユージの家を出た
家の前の雑木林からは、朝の深緑の匂いが漂っていてだんだんとすっきりしてくる
キュカカカッ ブルンッ!
ユージが車のエンジンをかけている
「さあミーリエル乗って!」
わざわざ助手席のドアーを開けてくれたユージ
席はワタシの身長に丁度いい具合に調整されていて、とてもすわり心地がいい
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