その日、向こうの家には彼のほかに青色いつなぎを着た人が同じような服を着て何人もやってきた
ワタシのカメラよりも少し大きめの箱をいくつも家に運び入れて
家具など手際よく運び入れている
青い人々が帰ったのかいなくなると、ワタシは引越しでくたびれただろう彼を労うために紅茶を入れた
「なにか飲み物はないの?あなたが来たお祝いに乾杯しましょ?」
と、コップを傾けるような仕草をすると、何かわからないけど金属の丸い筒のようなものとコップを持ってきた
「なにするのよ?それで…」
ワタシが首を捻ったわかったのだろう、彼はコップを持ってその丸い筒から液体を出した
それって飲み物がはいっていたの?!唖然とその筒を見る
…とにかく、乾杯!乾杯!
コップを突き出す、彼もコップを突き出した
“チン”と音がしたような気がした
コップを少し上に持ち上げて飲む、彼はずっと笑顔だった
彼の部屋の片隅には、額縁も絵もすべて黒く塗りつぶしてしまった絵のようなものが置いてある。下にはスタンドが着いていて、額縁の横側からは2本の紐が伸びていた。彼が額縁の下側を触ると黒いキャンバスに人が写った
その人はなんと動いていた
?!どうなっているの?この人…まさか絵の中に入っているんじゃ!?
…こんなに薄い絵の中にどうやって人を入れたのか?魔法?そんな!そんなこと聞いたこともない。小さな四角いものを触ると中の絵が変わる。動く絵…たしかにないこともない。けど、こんなにいくつもその絵の表情が変わるものなんて聞いたこともない
まさか、彼のいる世界は、ワタシ達が想像も出来ないほど魔法とかが発展している世界なの?
理解できないからくりで動く、馬の要らない馬車のような乗り物
夜でも灯り続ける明かり
絵の中に入れる人…
そういえば、彼の持つカメラはワタシのカメラよりも小さいし持ちながらこちらを見ていたなぁ
もう一枚の絵にはワタシの部屋の様子が映し出されていた。そのなかにワタシも映りこんでいるものがある。カメラじゃなくてもこちらの様子を見れるなんて…やはり、進んでいる世界なのだろうか?
身振り手振りと絵でそれがなんなのか教えてもらおうとしたけれども、わけがわからない
ワタシは根気よく教えてもらうことにした…
ふと気づけば、彼はベッドの支度をしている
寝るのか…そうよね。彼の家は平屋…寝るのにはこの部屋ぐらいしかないわよね…
そんな時、ピンと閃いた
そうだ!!いいこと思いついたっと!
この部屋にワタシもベッドを持ってくれば、一日中彼の様子を見ることが出来る!
思いついた途端にワタシは部屋を片付けていた
本と羊皮紙でゴチャゴチャになっているところを片付けてベッドが置けるスペースを空ける
どかした本類を担いで2階へ。そして、ベッドを持ってきた
ベッドメイクの間に覗くと、彼はなにごとか?というような顔をしている
時計を持ってきて針をくるっと回してみせる
「あなたの生活!全部見せてもらうわよ!」
布団を被りひざを立て、ひざの間にカメラを挟む。これで一日中覗いていられる。…さて、どんな生活をしているのかしら?
♪〜
楽しみで思わず鼻歌が漏れてしまう
彼の生活は見るものすべてが目新しかった
部屋の片づけが終わったみたいだったので、ワタシは本格的に観察を始めた
日が出るかでないかな時間、ワタシにとっては普通な時間に起きると彼はまだ寝ていた
寝ているのを確認して、火を起こしストーブに薪を入れる。春になったとはいえまだ朝方は冷える時がある
そして、ちょっとしたものを羽織ると、外の井戸から水を汲んできてポットに入れてストーブに置く
彼はまだ寝ている。朝の仕度とか大丈夫なのかなぁ?
起きる気配がないから、台所で朝ごはんを作ることにする
フライパンにベーコンを乗せ、カリカリになるまで焼く。十分油が出きったら卵を投入。ワタシは白身は固く黄身はトロッとが好きだから、フライパンに蓋をする
彼は…まだ寝てる
よしっそろそろ…
蓋を開けるといい具合だった
パンをスライスし、野苺ジャムを用意する
そして、紅茶を淹れて…
食べながら観察
日がある程度昇った頃、起きだす彼
時計にベルが付いているようで、寝たままで腕だけ出して叩くと、彼は目が醒めきってない様子で起き上がる
上半身起き上がると、天井から垂れ下がっている紐を引っ張る。そうすると眩いくらいの白い光が灯った
まぶしい!と目を擦るとよろよろと立ち上がり、居間の向こうにある流しに行った。流しの上についている白い四角い箱。そこについている丸いボタンを押すとそこから伸びる管から水が出てきた。しばらく見ていると湯気が…なんとそれはお湯だったのだ!!彼はそのお湯で顔を洗っている。布でふき取るとブラシで髪を整える。整え終わると流しの隣の台にあるポットが置いてある箱のノブを捻った瞬
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