しっかりと抱きしめてその背を撫で続ける
そんな左近を、いつまでも離そうとしないお福
そうこうしている間に、外ではばたばたと人の足音が聞こえてきた
「だんな!大丈夫ですかい?」
「宇佐次!すぐに行く!」
「やぁぁぁ。おにぃちゃんいかないで…」
いやいやして、腰に抱きつくお福。いつまでもこのままでいようと、その力は強く離せそうもない
「お福?」
「やだぁ…」
「お福。いまなぁ?お富が大変なんだ」
「ふぇ?おねぇちゃん?」
「そうだ。いまな、あいつのもとに行ってやらなければもう二度と会えないかもしれんのだ」
「やぁ!おねぇちゃんにまたあいたい!」
「だろう?だから、この手を離してくれな?」
「やぁ…」
「お福?すべてが終わったらまたやろう?」
「…またぁ?ほんとう?」
「ああ!本当だとも!だから、な?」
「…うん」
渋々といった感じではあったが…その手を離してくれた
繋がっていたイチモツを引き抜くと、こぽっと音をたてて精と蜜の混ざり合ったものが垂れてきた
二人が愛し合ったその証
強烈な二人の匂いが混ざり合ったその匂い
とても、よかった…
「お福」
「ん」
「行ってくる」
「ん。…ちゅ」
しばしの別れと、そのちいさな唇に口づけをしてやる
「いってらっしゃいおにぃちゃん!おねぇちゃんをたすけてあげてね?」
「もちろんだ!」
蔵の外にでると、浪人たちががっくりとうな垂れ、役人達に取り囲まれていた
「宇佐次!」
「へぇ!」
「お福も一緒に連れて来てやってくれ」
「へぇ。だんなはどうするんですかい?」
「お富が心配だ。すぐにでもあっちに向かう!」
「わかりやした!嬢ちゃんを連れてすぐにそっちに向かいやす!」
そうして、左近は与力や同心達と共に田仲屋へと走り出したのだった
数刻前…
お富は、朝飯を食べ終わると最後の取立てをしようと気合を入れて佐山家を後にした
金箱の金子はあと少しで目標に達する
おそらく、今日一日で何とかなるであろうと。
足裏すり減らし、時には金貸しになってほとんどやったこともない頭を下げてまで取り立てていた
お天道様が傾いた頃だった
忙しく歩き回るお富を呼び止める声があった
「おねぇちゃん!お富おねぇちゃん!」
聞いたこともない声。甲高いが男の子の声がした
振り向いてみると、文を差し出して言った
「文。預かったよ?渡してくれって」
「誰に?」
「あそこにいた、おじちゃんに…」
振り返ってもそれらしき男は見つからない
「わかったありがとう」
男の子は、去っていった
手紙には…
“妹が可愛かったら、集めた金持って田仲屋へと来られたし。すぐにでも来ない場合は逃げたものとする。金は妹と交換だ”
と…
「お福!!」
急いで、家に戻るも誰もいなかった
「誰か来ても出ちゃいけないって!!」
後悔してもどうしようもない
有り金すべてを持って、田仲屋へと急いだ
田仲屋へと行くと、すぐに田仲屋は出てきてお富の集めた金子を数え始めた
「いけませんねぇ…。あなたと交わしたことは、期日までにこちらの言う金額を集めること…でしたよねぇ」
「くっ…」
「わずかですが…足りませんねぇ」
「あと少し!今日、街中を回ればすぐにでも回収できるはずさ!だから、もう少し待ってくれよ!」
「あの時、わたしはなんと言いましたかな?」
「……」
「わたしに会うそのときまでに金を集めてくる。ですが、一銭でも足りなかったときはこの話はご破算となる…そういいましたよねぇ…」
くっくっくと笑い顔の田仲屋
「まぁ…いいでしょう。とにかく、この証文は返しましょう。ですが、あなたはお金を返せなかった。ですから、妹御はあなたの元に返すわけにはいかなくなった…」
「そんな!…あああ…お福…お福ぅぅぅ!こんな…こんな紙切れ欲しさに金貸しなんてしてきたんじゃない!妹をどこにやった!連れて行くなんて汚い奴!」
涙を浮かべるお富。その手には鉄の算盤が…。これで全力で叩いたら殺せるだろう…
しかし、田仲屋の用心棒が主を守るように立ちふさがった
そんな時、物陰から人が飛び出してきた
「まったく、見ていられねぇやな!」
「だれだ!!」
建物の影から飛び出してきたのは、左近だった
「なに、ちょいとしたおせっかいよ!!」
「あんた!何しに来たんだい?!そんな丸腰で!!」
「いいってことよ!そんなことより、やい!田仲屋!話は聞かせてもらったぜ!」
「何を聞いたというのですかな?」
「てめぇの悪だくみのなにからなにまでな!」
「ほう?伺いましょうか」
左近は、今まで聞いたすべてを順序だって語り始めた
田仲屋は、以前から金のちからに任せてやりたい放題だった
助平な性分から、金を借りたものに娘がいると借金の形に売り払うそんなことをしていた
だが、売り払う前に手をつけ
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