「着きましたよ」
優しい声と共に目を開くと、飛び込んできたのは燃えるように赤いオレンジ色
ところどころにある薄曇り空は、紫色になっていてとてもきれいな空だった
「あちらが魔王城となります」
声の先を辿ってみると…
城…というよりも山いや山脈?に匹敵しそうな大きな塊が遠く彼方に見えた
黒い塊…平地に巨大なプレートの一枚岩がどすんと残されたようにそれはそこにあった
視界いっぱいに威圧するようにそこにある
「あれが…魔王城…」
地平線の彼方にあるはずなのに遠くにも近くにあるようにも見える
あそこはどれだけ大きなところなのだろうか?想像もつかない…
欧州にあるような城を想像していた私にとってそれは、とても黒く禍々しく、入ったらとてもじゃないが生きて帰れないように思えた
「魔王城…
有史以来…いえ、それよりも遥か昔から存在していました
神々が、魔物を…そして人類を創り出して以来。魔も人も互いに憎しみあい争い続けていたのです
それによって、数々の増改築が行われ現在のような姿になりました
今の世界は、魔力を糧として世界を我々の住みやすい地…魔界へと徐々に変化させています
この魔王城には数え切れないほどの魔物が暮らしています。魔王様もこの城の最深部でかつて自分を殺めようと送り込まれた勇者を夫とし永い永い年月をそこで…互いに求め合い、着々と神に対抗するため力を溜め込んでいます」
「あんな所に勇者とか言う連中は攻め込むんですか?」
「はい。小さなものでは数人からのパーティーで…時には数百数千からの軍勢で魔を滅ぼさんと攻め入ってきます。とある国が魔界になったことによりこちらに攻め入ってくる勇者の数は減ったような気もしますが…」
今だ陥落していないと言うことは、入った連中はすでに攫われたことになるのだろう…
「…撤退しようとした連中は出てこれたんですか?」
「入ったら出られることなんて稀ですよ」
ニコリととんでもないことをいうガイドさん
「争い目的以外で魔界の…魔物達のことを知ろうとやってくる人々もいるわけじゃないですか。そんな人々も魔物にして帰れなくしてしまっているのですか?」
「結果的にそうなってしまっているだけです。人のまま出て行く方だっておられるんですよ?」
「……」
心配そうに黒い山をあおぎ見る私にガイドさんは言った
「魔物になってしまうのでは?と抵抗を感じていらっしゃるみたいですね。大丈夫、わたしの言うことをよく聞いてそのバッジを肌身離さず持っていれば無事に人のままここを出られます。魔物になってしまっても帰ることはできますよ?パートナーとなった人が帰ることを許してくれるならば…もしくは自然に魔物になったのを気が付かない場合もですけど…」
「抵抗と言うのは…少し違うかな…私がいた世界は人しかいなくてそれが当たり前でした。ですが、この世界には魔物がいる…。分からないんですよ。…うまく…言えないけど…魔物になってしまったらどうなるのか…本当に…だから…でも…」
わからない。魔物になったらどうなるのか。そうなったらこちらに残るのかそれとも向こうでの生活がどうなるのか…人でなくなる…それは一体?
「しーーーー。落ち着いて…。今はそれは考えなくてもいいではないですか?体や精神にどんな影響がでるかは後でお話します。今は…今を楽しんでくださいな」
頭が混乱しかけたが、ガイドさんが落ち着かせようと抱きしめてくれた…
ガイドさんの抱擁は本当に…落ち着く…
魔物になる…はたしてそうなったら私は…どうなるのだろうか…
「さて、日が暮れるまでまだまだお時間はあります。まずはこの辺りを散策してからお部屋へと参りましょう?」
迷いの顔を浮べる私に、気分を変えるかのように明るく言ったガイドさん
散策?そういえば、辺りを見回してみると水上庭園のようなところに私達は立っていた
大理石のような石の円柱が所々に立ち並び、倒れてしまっている柱も多く存在している。そこは昔の遺跡のような所だった
昔の遺跡に水が流れ込んだらこんな風景になるかもしれない
「ここは…ただの庭園ではありませんよ?」
「え?」
てっきり、きれいな庭園だと思っていたら違うと言う…
「水の中を見てください」
水の中には…
街があった
崖の岩の壁に穴を開けてそこを部屋として利用したようなそんな光景。見た目はマンションのようだ
私のいる広場の下に支えはなく、ここは橋のような構造をしているらしい
水は薄いピンク色で水の中の人々は、薄い紫色っぽく見えた
人魚だろうか?腰から下が魚みたいな人が大勢いて、パートナーなんだろう…男の人と泳いだり遊んだりしているのが見えた…
「その昔…神々の力を得た勇者はここで死闘を繰り広げようとした魔物達に雷を落とし地が裂けるほど強力な魔法を使ったのです。そのため、当時の多くの魔物が
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