パンドラの箱・・・
それは、見てはいけない、開けてはならない、禍をもたらすため触れてはいけない。そんな箱だという
このカメラは、まさにパンドラの箱だった
その伝説にはありとあらゆる災いが降りかかるとある
私が箱の中から出してしまったのは絶望、悲しみ、飢え、苦悩であった
伝説にある最後に箱の中に残ったもの・・・それは希望だったという
私たちに残された最後の希望・・・
それは・・・
「私がそちらに行く方法は今本当にないのでしょうか?」
『君がこっちに・・・残念だが・・・まだ確実に来れるというものではないのだ』
画面の向こうで黒水晶に向って話す魔女さんはとても申し訳けなさそうな顔をしている
「いくら会話し、言葉を合わせたとしても触れ合うことが出来ないのです・・・」
どんなに求めても、このカメラなしでは好きな人を見ることも叶わない・・・
『・・・』
「好きになった人を抱きしめることも、キスすることもできない。心にはどんどん寂しさが募るのです」
あの日ミーリエルの呟きを聞いて以来、心の中に閉じ込めた焦りと寂しさが心を苛む
寝る時はカメラも携帯も電源を落としているから、ミーリエルと離れ離れになってしまったかのような孤独感というか寂しさが心を蝕む。悪い方悪い方へと心が沈んでいくのだ
『来れたとして、そちらのことはどうする?君にだって生活をするために仕事も人付き合いも、いろいろな者に縁があるはずだ。おそらく君がこちらに来たら二度とその世界には帰れないぞ?』
と言うと、“君が飛ぶ術を見つけ出してからでも遅くはないと思うのだが・・・”と付け加えたメル
そう、奇跡か悪魔のいたずらか私たちは互いに興味を持ち、情を深めてしまった。私が向こう側に行ったら二度と帰れないだろう
家族に友人、いろいろとお世話になった人々・・・彼らのことを思うと、本当に心が痛む
でも…もう私の心は彼女一心だ。すべてを捨ててもこんな電話越しではなく、生の声を聞きそして私の言葉を聴いてもらいたい
ただいま、おかえり、ありがとう、好きだ、愛してる・・・何気ない言葉、それすらも電話越し
カメラなんてなくても、その世界を見たい、聞きたい、感じたい
日の光を感じ、風を、大地を
そして、大事な人を感じたい
手を合わせたい、抱きしめたい、キスしたい・・・
温もりを感じたい、君の匂いを感じたい、その全身を感じたい・・・
「覚悟の上です。その想いはもう飢餓感に近いほどの渇望です。この世界のすべてと引き換えにしても、私は後悔などない!」
魔女さんの目を見据えてきっぱり言い切った
『・・・わかった。それほどの覚悟があれば想いも通じるだろう。前に言ったように、君がこちらに来ることはおそらく出来る』
「本当ですか?」
『ああ。あの雷の時、君達はほぼ同時に雷に撃たれた。そして、同じようなモノを持っていた。カメラや通信水晶・携帯だ。カメラは互いの世界を見せ合った。水晶と携帯は繋がりあって互いを繋げた。なぜそんなことになったかといえば、やはり原因は雷だ。前にボクは不思議な話を集めているといっただろう?今まで知らない知識・事件を望む意思を常に持っていたボクは魔法を行った。なぜそんな思いだけで繋がったのかわからないがとにかく想いが…そして、偶然雷撃と雷という力が重なった。意思と偶然、力と力。あの一瞬にそれが一致してしまった。だから、最初の雷に撃たれた者同士、引き合うことも出来るだろう』
「やはり」
『だが!危険だぞ?君はもう一回雷に撃たれる必要があるんだ。前の時は数週間火傷で動けなかったと言っていたな?今度は火傷などではすまなくなるやもしれないぞ?』
そう、火傷で動けなかったことを思い出す。あの時何がなんだかわからなかった。でも、重要なことはそんなことじゃない。こちら側から向こうへと自然の摂理を捻じ曲げるようなことをするのだ雷を受けることぐらいなんだっていうのだ!確かに死ぬかもしれない。でも、私は彼女の声を温もりを欲している!少しでも、少しでもそれを感じることさえ出来れば本望だ!
「それでも…それでも!私は彼女に会いたい!このまま何もせずにはいられないんです!!」
『・・・わかった。君の願いこの魔女、アースリー・メルズ。確かに受け取った。出来うることは全部してみよう!・・・最後にもう一つだけ聞きたい。君はなぜそこまでしてこちらに来ることを望む?』
「・・・」
『ミーリエルに会いたいと思うのは至極当然なことだろう。けれど、すべてを捨ててまでそうしたいと思うには、生半可な覚悟ではできないだろう?元から好かれあったもの同士ならば分かる。けれど、君はミーリエルを好きになる前からこちらのことについて熱心に尋ね教えを請いていたと聞いたよ?いったい何故そこまで思いつめたのかそれを尋ねたい』
「・・・」
私が異世界に興味
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