「マッチ……マッチはいりませんか……?」
人々がせわしなく行き交う冬の道路、その傍らに一人の少女が立っていた。その少女は雪風にさらされながら申し訳無さそうにマッチ箱を手に持ち、それを通り過ぎる人に差し出そうとしていた。
少女は燃えるように赤いコートを着、そのフードを目深に被っていた。まるで自分は世間に顔を出すことはできない、そんなネガティブな雰囲気を醸し出している。
その雰囲気にあてられ、一人の男の子──コートを着た十歳くらいの──が立ち止まった。きっとその子を助けたいと思ったのだろう、しきりに彼女の方に目をやっている。
「あ、あの……マッチ……いりませんか?」
その少年に少女はか細い声で言う。彼は急いでポケットから財布を取り出そうとする。
「いくらなの?」
「あ、ありがとうございます」
少年がそう言うと少女の顔は晴れ晴れと明るく和らぐ。
「じゃあ……」
少女は少年の手を引き路地裏へと引き込む。不思議に思いながらも少年はそれに従う。そして立ち止まったのは誰の目も届かないような場所。
「? 僕はマッチを買いたいんだけども」
「クスクス……フフフ……アハハッ!」
「!」
少女はこらえきれないといった風に高らかに笑い始める。
「ぼく……マッチなんかよりもいい火、あるよ」
「え? な、なに?」
なんだかおかしくなってきた、そう思っても少年は逃げられなかった。逃げてもすぐに捕まってしまうだろう、少女の気迫からはそう感じ取ることができた。
「あ・た・し」
ぼうっ!
少女が炎に包まれる。それはマッチなんかとは比較にならない、爆発といってもいいほどの勢い。コートが、服が弾け飛び焼け焦げ灰になって消える。
その中から出てきたのはまたしても煌々と燃える炎。だが、その中には確かに少女の姿が見えた。
少年と同い年か少し上くらいの少女が。
「ひっ!」
「ねぇ……あたしを買ってかない?」
「な、ななな」
「こんなちゃっちいマッチよりもあたしの炎の方が強いし熱いよ?」
「いや……」
「それにあたしはね……優しい君に惚れちゃった」
「だから、いっぱい燃やしてたいの
#9829;」
「うわあああああ!!!」
その言葉を額面通りに受け取った少年は逃げ出す。
しかし、振り返るとそこは炎に塞がれていた。
「大丈夫
#9829;ほら
#9829;おいで
#9829;」
後ろからは少女が近づいてくる。
もう逃げられない。少年は悟り、恐怖のあまり固く目を閉じてしまった。
「ん……ちゅっ
#9829;」
だが、少年を襲ったのは文字通り熱いキスだった。
「ん、んぐむっ!」
「れちゅっ
#9829;んちゅっ
#9829;んぢゅぅぅぅぅっっ
#9829;れじゅっ
#9829;」
「んんんんんんっ!!」
少女の火のようにメラメラした舌が、チロチロと口の中を這いずり回る。粘液が沸騰するような感覚、しかしそれでいて愛おしくてもどかしい感覚が少年の口内を満たす。
「んんんっ
#9829;んー……
#9829;」
「っ!!」
少女の舌は口内だけでは飽き足らないのか喉へ、そして胃の中肺の中へと延焼していく。いや、それだけではない、強く抱きしめることで外側もじっくりと焼いていく。
「はぁ、はぁ、あちゅいぃ……」
じっとりと汗が流れていく。冬だというのに夏のような暑さ──熱さを感じているのだ。
それに応えたのか、ぼうっと少年のコートだけが燃え尽きる
「んんんっ──んはぁ……
#9829;んふふ
#9829;」
「ううう……」
「どお? これでも買う気になれない?」
「うううう……いやぁ……」
少年は泣き出してしまう。未だに少年は目の前のイグニスのことが理解できない──だからこの行為も自分を食べるための下準備なのかもしれない、そんな不安と恐怖が蝕む。
「あーんもー」
少女はその涙を舌でぬぐい取る。じゅっと音がして一瞬で蒸発する。
「じゃあこうしよっか」
少女はマッチを一本取り出す。
「まだわかんないかもしれないけどね、あたしたちこれからセックスっていうのをするの。それでね、マッチ棒に火をつけておくからそれが消えるまでに先にイった方が負け。あたしが負けたら買わなくていいけども君が負けたら……うふふ」
「ううう」
「じゃあそれでいい?」
「うっ……」
もう何もわからない。だがきっとそれをしなければここからは逃げられないだろうし、何故だが何かを求める体を抑えきれない。少年は頷くしかなかった。
「じゃあ、服脱いじゃおっか」
再び少女が抱きつくと少年の服はすべて消えていた。だが寒さは感じない──感じるのは心の凍え。
何かが欲しいという炎が、少年の中で燃え盛っている。
「ねぇ、わかるかな……これがおまんこで、君のおちんちんを挿すところだよ
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