或る一つの堕落

 死の間際に訪れる絶望は二種類ある。
 世界への絶望か、または自分への絶望である。
 私の元にはどうやらその二つが同時に来たらしい。
 これから私は世界に絶望し、かつそんな世界に生まれてきてしまった自分にも絶望しながら死んでいくのだ。
 なんとも空しい最後だが、今更どうすることもできまい。今はただ、その時を待つのみだ……
 そう思っていた。

「おじーさーん、これから死ぬの?」

 これから死の床に就こうというときに、その悪魔は現れた。その悪魔は私の思っているのとは違う、青い肌をした少女の姿をしていた。
「……」
 ベッドに寝る私の口は動かない。そんな力すらも残っていない。
「ねぇ、死ぬならさ、魂ちょうだいよ、魂」
 ふむ、見た目に反して悪魔としての仕事はちゃんとするようだ。彼女は私の魂を奪い、それを糧にしようとしているのだ。
「……」
 それも、良いのではないだろうか。
 どうせ今まで誰の役に立つこともなく生きてきた私だ。この際、死んだ後の魂ぐらいは役立ててもらった方が良いのではないのだろうか。例えそれが悪魔だとしても。いや、むしろ好都合か。私の嫌いな世界に害をもたらしてくれるのなら、それはそれで万々歳だ。
「……」
 私は最後の力を振り絞り、首を縦に動かす。
「あはっ
#9829;契約成立だねぇ
#9829;」
 彼女は嬉しそうに笑う。随分と邪気の多い笑顔だが。
 でもまぁ……くだらない人生の最期としては上出来ではなかろうか。可愛らしい少女の笑顔で見送られるなんて。
 すっ、と体から力が……いや、もっと大事な魂のようなものが抜けていく。
 それではにっくき世界よ、我が身よ、さらばだ──

「はいストップ〜! んしょ、キャンセルキャンセル! BBBBBBBBBBBBBB!」

 ぎゅっ、と。
 天上へと浮かびかけていた魂が悪魔の手によって押さえつけられる。
「!」
「おっ! 結構生きがいいなぁ! どんだけ死にたいのさ」
「!? !?」
 そのまま、ぐいぐいと魂が体に押し付けられ、ついにはその中に戻っていってしまった。
「おい! 死なせてくれるんじゃなかったのか!?」
 私は身を起こし悪魔に抗議する。完全に蘇生してしまった。
「え? ……え!?」
 そして驚くべきことに気がつく。ついさっきまで私は死にかけの老いた体を携えていたはずなのだが……何故か少年の若々しい体になっていた。
「はぁ? 何言ってんのよ。このご時世魂だけなんて悪魔が求めるわけ……あ〜、おじーさんあれだね、旧時代のまま知識が止まっちゃってる人だね?」
「旧時代?」
「ふふふ、どうせ魂食べられちゃうとか、永遠に奴隷にさせるだとか思ってたんでしょ? そんなのはもう時代遅れよ」
「じゃあ、どうするつもりなんだ!?」
「簡単よ」

「恋人になるんだよ
#9829;その魂と永遠に
#9829;」

 軽く、口づけを食らう。
「なっ!?」
「あ、照れてる〜おじーさん結構ピュアだね〜」
「っ……」
「全くもー……ちゅっ
#9829;」
「!?」
 追撃。今度は深い深い、官能的でそして甘美なキス。
「ちゅっ
#9829;はむっ
#9829;ちゅっ
#9829;ちぅ
#9829;ちゅっ
#9829;」
「んっ、んぐむっ! んんんんんっ!」
 それこそ魂を吸われるかと思うほどに強い。引きはがそうとしても絶対にはがれない。
 八十三年は生きてきたがこんなのは初めてだ。
「ちゅ〜〜〜〜っ
#9829;……これからもっといやらし〜ことするんだからこれぐらいで照れてたら駄目だよ?」
 な、こ、この先って。
「こ、この先って……そういう、ことだよな?」
「もちろん
#9829;」
 嘘だろ!? 私は、こ、こんな少女と交わることになるのか?
「うおっ!?」
 彼女は私の肩を掴み、そっと押し倒す。抵抗は……してはみたが思った以上の腕力で返されたので無駄だった。
「はぁぁ……
#9829;やっぱり男の子っていいなぁ
#9829;見てるだけでおまたきゅんきゅんしちゃうよぉ……
#9829;」
「中身は爺だが」
「そういうこと言わないのっ
#9829;」
「お、おいっ! やめろっ!」
 するすると服が脱がされていく。彼女の手を止めようとするもやはり無駄に終わってしまう。
「はぁい、準備完了
#9829;これからすっごく気持ちよくなるけども覚悟はいい?」
「ぅ、うう、こ、こんなの、屈辱的だ……」
 小さくされ、少女に裸に剥かれる。これまでこんな恥を晒したことはない。
「大丈夫、すぐ病みつきになっちゃうから……んぷっ」
「ぐぉっ!」
 悪魔はキスの時から何故か固くなって戻らないペニスを咥える。生ぬるい、ねとねととした感触が攻め立ててくる。
「ぐぽっ
#9829;じゅぷぷぷっ
#9829;」
「あぁっ! ぐ
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