Eat...

 お兄ちゃんは料理がものすごく得意なの。
 お兄ちゃんが作る物は全部美味しいし、きっとお兄ちゃんは料理の天才なの。
 ────だけれども、最近のお兄ちゃんは料理を作るのが大変になってきたみたい。いつも料理の後、息が荒くなっているもの。
「そんなに大変ならあたしが作ってあげよっか?」
 そう言ったこともあったけどお兄ちゃんは大丈夫、って言ってた。そうまでしてあたしに料理を作ってくれるなんて……止めるなんて逆に失礼だわ。だからあたしはそのままお兄ちゃんに任せることにしたの。


「おまたせー」
 お兄ちゃんは今日も料理を持ってくる。献立はハンバーグ(私の大好物だ!)。
「お兄ちゃん、ありがとっ!いただきまーす!」
 今日もなんだかハァハァしてたけども、それだけ力を入れて作ったのよね、残さず食べなきゃ。
 あたしはナイフでハンバーグを切る、ちゃんと上に乗っかってるホワイトソースが均等に分かれるように。
 このホワイトソースがまた絶品なの。ある日から料理の上に乗っかってたんだけども、お兄ちゃんが言うには。
「これは極上の調味料で、かなり貴重なんだ。残さず食べなさい」
 らしいわ。きっと高かったんだろうな……
 そう言われなくても、とてもおいしいから残したりはしないんだけども。
「あー……ん」
 ハンバーグを口に入れると、溢れ出した肉汁とホワイトソースがとろけ合って、一噛みすると崩れたお肉がそれに絡んで言葉にできないほどの美味しさになる。
 あたしはアリスだから色んな記憶がトんじゃってるかもしれないけども、この味はどこでも味わったことない。
 …………でも思い出せなくても知ってはいるの。記憶じゃなくて……こう、はっきりとは言えないけども、本能、なのかな、そういう部分がこの味を知っている。
 そう意識するとなんだかあたしも息が荒くなるし、お腹の下の辺りがきゅぅん、ってする。
 なんだか、赤ちゃんを産みたい、って気分になってくるの。
 不思議だわ。お兄ちゃんに話してみると。
「そうなんだ。これは、その、魔物娘の原初の記憶に刻まれている味なんだ。だから魔物娘なら誰でもそう感じるはずだよ」
 …………なんだかよくわからないけども問題はないみたい。
 ごっくん、と喉を動かしてハンバーグを飲み込む。そうしている間にもお兄ちゃんはあたしの食事風景を撮影している。
 正直、これは恥ずかしいかも。毎日撮ってもらってるけどもあんまりカメラで撮られるの好きじゃないんだよなぁ…
 あたしがカメラに視線を送ると、お兄ちゃんは続けて、と合図を送る。
 まぁ、料理を作ってもらってるしこれくらいは我慢してもいいかな………
「もぐっ、んぐんぐ……ふふふ」

「ごちそうさま!」
 あたしはぺろりと平らげてしまった。目の前にハンバーグはなくて、全部あたしのおなかの中だ。
 そうすると今度はお兄ちゃんはカメラ(さっきまでのはビデオカメラでこっちは写真を撮る方の)を構える。こっちも毎日の習慣なんだけれども、写真なら一瞬だし、そんな嫌じゃない。
 あたしは感謝を込めて。
「お兄ちゃんの料理、とーっても美味しかったよ!また作ってね!」
 可愛らしくピースをしてあげる。こうするとお兄ちゃんは喜ぶんだ。
 こうしてあたしの写真を撮って食事は終了する。その後は存分にお兄ちゃんと触れ合う。
 だっこしてもらったり、膝の上に座ったり、いろんなことをする。
 何故かお兄ちゃんは頻繁にあたしのおなかを撫でたがる、あたしはエプロンドレスをたくしあげて直接さわらせてあげる。
 とてもくすぐったくて楽しいんだけども、やっぱりあの赤ちゃんを産みたいって気持ちが湧いてくるの。
 これってどういうことなのかな?
 あたしが、赤ちゃんを産んでもいいくらいお兄ちゃんのことを好きって証拠なのかな?



 ある日あたしはそのソースの秘密を知ってしまったの。
 お兄ちゃんが料理してるとき、ジュースがほしくてキッチンに行ったの、そしたら。
「アリス、アリス、アリス、うっ」
 お兄ちゃんがあたしの名前を呼びながらおちんちんをしゅっしゅっ、ってしごいてた。そしておちんちんのさきっぽから白い液体が出てきてそれが今日の料理(スパゲッティ)にかかった。
「お兄ちゃん?」
 あたしが声をかけると、お兄ちゃんはものすごく驚いていた。そんなにびっくりしなくてもいいのに………
「ねぇ、それがソースなの?」
「いや、その……」
「…………お兄ちゃんすごい!」
「!?」
 まさかあのソースがお兄ちゃんから作られてたなんて………
 ひょっとしたら、お兄ちゃんは料理の天才じゃなくて、神様なのかも!
「ねぇ、もっといっぱいソースが食べたいなぁ………そこから直接飲むことってできないの?」
「いや、できるけども」
「じゃあ、飲んでもいい?」
「っ」
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