あれから、俺は必死に働いた。
昼も夜も、疲れを忘れる程働いた。
生活費をうんと切り詰め支出を抑えた。
全てはあの人の為に……
十分過ぎるお金が貯まったとき、俺は満を持して出発した。
サキュバスのルゥさんの経営する娼館へと
その歩みは途中で止まる事となる。
あの人が……レッサーサキュバスのディオーレさんが目の前に立っていた。
『今晩は。あの夜以来かしら?素敵な夜でしたわね…』
『ええ、素敵な夜でした。けど…それはこれから毎日に変わります!』
『…?』
『ディオーレさん!!俺は貴女を身請けします!!』
『あら!嬉しいわ。でも…』
『だから!俺と結婚してく…』
『それは出来ないわ。』
『……………』
『……………今、何と?』
『貴方のお話。お受け出来ないと言ったの。』
体が凍りつく。
目の前が真っ暗になりそうだ。
『どうして…ですか?』
『……貴方が、私を愛していないからよ。』
『そんな!そんなことはありえません!俺は貴女を愛してます!!!その為に毎日働いて…』
『その気持ちはまやかし。私達が使う魅了の魔法にかかってるだけ…』
『そんな……そんなの嘘だ!』
『なら、貴方が魔物娘キャラソートをやった時、レッサーサキュバスが何位だったか言ってみなさい!』
『……66位…です。』
『そう。現在88種の魔物娘が確認されている中でその順位』
『そんな…嘘だ…そんなの…』
『さぁ!貴方の本当に愛している人を思い出して!』
『……リ…ザ………リザ子ぉ……』
『やっと素直になったわね。』
『ディオーレさん…俺…俺は!』
『ほら泣かないで…前に進みなさい…お店に来たときは指名してね。サービスしてあげるから。』
『あ゛…あいがぼう゛…ございました……』
泣きながら謝ったりお礼を言ったりする俺をディオーレさんは慰めてくれた。
そして、俺が来た道を戻る時、見えなくなるまで手を降っていた。
「よかったの?」
『…ルゥさん』
「嘘でしょ。魅了の話。あの子本気だったのよ?」
『いいんです。これであの人は1つ大きくなれます。私ではあの人の邪魔になってしまう。』
「……目元、赤いわよ…」
『………失恋っていつになっても…何回経験しても…涙が止まりませんね…』
1人の男と、1人の女の、誰も知らない物語。
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