第三話

飯井羽町での暮らしなのですが、はい、文化は大体日本の江戸時代から明治時代になるかならないかといった所で、「川の箸」で仕事をする時も現代文明の機器が使えない事に戸惑いましたね。
まあ、その分魔物の魔術などの人外の力もあったお陰か、慣れてしまえばまあ後は偶にこちらの世界に無い食材を扱う以外はそう不便に感じることもありませんでしたね。
店での仕事は店主夫婦の他に私を含む店員が交代で店をやっている感じで、三日働いて一日休むという様なシフトになっていましたね。
はい、給料の方はあちらの賃金の基準が良く分からなかったのですが、まあ家ではほぼ居候の扱いでご飯も一緒に頂いていましたし、必要な消耗品以外はあまり買うことも無かったので、それほど困ることはありませんでしたねえ。
そして生活していて驚かされた所は、魔物達が性にとても奔放だということでしたねえ。
はい、大本がサキュバスという魔物だったからでしょう、だいたいの魔物は性欲旺盛で、性行が大好きだったのです。
まあそうですねえ、夜道を歩けば暗がりで夫婦や恋人が交わっていることなどざらでしたし、二階の自分の部屋で寝ているときも毎晩のように下から店主さんたちの喘声が聞こえてきていましたからねぇ。
まあ仕事もやってはいますがまあ伴侶と二人の時間の前では二の次といった風でしたよ。
はあ、それで良く社会が回っていたと?まあ、元々魔物達の社会のシステムはそういう暮らしでも十分機能するようになっていたようですからねえ、そもそも最悪生きていくのに食事は必要ありませんから。
はい、魔物というものはですね、人間の精を食料していて、性行の際にそうやってエネルギーを補給することができるのですよ。
ええ、さっきも言ったとおり、大本がサキュバスですので、精を主食とする魔物はとても多いそうで、獣などが元となっているもの以外はだいたいがそうらしいのです。
はあ、それだと男性は普通の食事を取らなければいけないと?いいえ、普通の人間ならそうなのですが、魔物になったインキュバスは魔物との性行の際に体内のエネルギーを相手と巡回させ、更には増加させるとこもできるそうなのですよ。
つまり、魔物達はその気になれば成功するだけで生き続けることが可能なのです。
この話を聞いて私は古代中国に伝わる房中術を連想しましたねぇ。
まあ、町の魔物達は精以外にも普通の食事も普通に好むのでちゃんと料理屋も成り立っているのですがね。

まあ、そんな中、ネネコは私が異世界からやってきたと知るや好奇心が刺激されたのか色々とこちらの世界のことを聞いてきました。
どうやら彼女は町で生まれ育って町の周辺から離れたことが無い為、そういう異国の話を聞くのが好きだったようです。
はい、飯井羽町に住んでから数週間は仕事の後に夕飯が出来るまで彼女にこちらの世界の話をするのが日課になっていましたね。
ええ、まあ他にすることもあまりありませんでしたし、彼女の方も目を輝かせて聞き入っているので、断りにくかったこともありましたのですがねぇ。

そうして、こちらの世界の話を聞いたネネコは「アタシもそっちに行ってみたいなぁ」と言っていましたが、私はとても勧めることは出来ませんでしたねぇ。
はい、私の場合は友好的な住民に出会ったから良かったものの、下手をしたら遭難して命を落としていたかもしれないし、魔物がいない世界に魔物が迷い込んできたら、最悪の場合捕殺されてしまうかもしれません。彼女の両親も悲しむでしょう。
そんな訳ですから私は隣の芝生は青く見えるという言葉がある。こっちの町の方が安全でいい場所だとなんとかなだめましたよ。

休日や、お昼が過ぎて客も減り店主夫婦だけで店廻せるようになると、ネネコは逆に私を飯井羽町のいろんな場所に案内するようになりました。
年頃の娘を男と二人で行動させるのはいくらなんでもいけないんじゃないかと両親に尋ねましたが、ご主人と女将さんは「いえいえ、どうかあの子が危なっかしい真似をしないように見てやってください」「しばらくこの町に住むのならあちこちを見て回っておいた方がいいでしょう」と快諾してくれたのでまた驚いてしまいました。



さて、そうして飯井羽町を案内されることになりましたがね、まあ人口が多いこともあってかなり広く、とても1日2日では回れませんでしたねぇ。
はい。そうですねぇ。色々な場所に案内してもらいましたが、印象に残ったものをいくつか紹介しましょうか。
初めに案内されたのは大きな橋でした。
ええ。大きいと言っても町の中の大きな川を渡す規模のものでしたし、普通に歩けば1分程度で通過できるものでしたがねぇ。
その辺りも人が賑わっていて露天商が店出していたり、大道芸人が芸をやっていたりしていましたよ。
頭から角や獣の耳を生やした少女達が売っていたものは外国か
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