この地には、宝玉と呼ばれる球が封印されている。そしてこの宝玉から中心に、黒い霧が一部に充満している。
「…」
森の中を、レオナは駆けていた。
この下には魔力の霧が充満しており、内部に入る事が出来ないのだ。
あの霧に触れようとすると、弾かれ、中に入る事すらできない。
そして、この中に入れば確実に体に支障をもたらす。ブライトが心配だが、これを排除する力がレオナにはなかった。
すぐにかけつけれない自身の無力にレオナは歯噛みした。
「っ!」
しゃがみこんだブライトの耳に風の唸りが入りこむ。頭上をラミアの尻尾が掠めた。
ラミアの魔力がブライトを拘束しようと蠢く。
「ヴァジュラダラ!!」
眼前まで迫ったラミアの魔力を粉砕し、そのままラミアに追撃しようとする。
しかし、するりと滑らかに動いて、ラミアは軽やかに避けた。
繊細に動くラミアの尻尾がひゅん、とブライトの腕に巻きついた。
「…おん まりしえい そわか!」
びくりと尻尾が震えてブライトから離れる。
「おん ばざら だとばん」
ブライトの霊力がぶわりと広がり、ラミアの尻尾をはじく。
「…っ!」
正直言って、やりにくかった。レオナより僅かに、あるいは同等の強い魔力をもっている。それに加え、ラミアとしての身体能力がブライトの動きに制限をかけていた。
相手が命を狙っているのならば話は別だが、そうでなければ出来る限り命を奪いたくはない。その心情もこれに拍手をかけているだろう。
逃げようともしたが、今ここは結界に覆われているのでそれは叶わなかった。おそらくレオナもそれが原因で来れていないのだろう。
目の前のラミアが、くすりと笑う。
「強いなぁ…ねえ、別に死んじゃうことはないんだよ?」
「あいにくもう相手がいる」
それを聞いて、ラミアが驚いたようにブライトを凝視する。
「…うぅー、やっぱり優良な男にはもういるのか…」
落胆したように嘆息したラミアはじぃ…とブライトを見つめた。
「ねえ、今からでも変えない? あたしにしてよかったって思う時が来るから」
「いつ?」
「え…?」
思いもしない返答に、ラミアの少女は戸惑う。
「…ぁ、すぐ! ほらあたしの体を好きにしていいし、お手伝いとかも」
「いやもう間にあってるから」
うぐぐと唸るラミアを、ブライトは面白そうに見ていた。
「でさぁ、俺忙しい身なんだよ、この結界解いてくれない?」
「だめ」
即答にブライトは息をつく。
ついと、ラミアを見据えた。
「だったら、ぶち壊す」
その言葉がラミアの耳朶を叩くと同時に、ラミアがこちらに向かってきた。
地を強く叩き、上空の木々を背景にブライトめがけて魔力の渦を叩きこむ。
「おん あみりてい うん はった!」
ブライトの言葉が霊力を壁に変え、渦を全て防ぎきる。
この状態では、結界を打ち破れない。結界を壊すにも、呪文を唱える必要がある。猛攻が続くと、そちらで手一杯になってしまうのだ。
視界の隅にある緑色の何かを認め、咄嗟に足を崩した。
ラミアの尻尾を倒れるように避けたブライトにラミアの両腕が伸びる。
「カン!」
霊力の衝撃にラミアが両腕を交差させて踏ん張る。
「おん しゃちり きゃらろは うんけん そわか!」
霊撃がその状態のラミアに直撃する。血はないが、苦痛に顔を歪めるラミアが吹き飛ぶ。
澄んだ音が聞こえ、ラミアが視界の隅でブライトを捉える。
「のうまく さまんだ ぼだなん あびら うんけん…」
ラミアが魔力を操り、空中で態勢をなおし、魔力を身につかせブライトに突撃する。
「お…っ禁!!」
眼前まで迫ったラミアに呪文詠唱を中断して、短い呪を唱え障壁を築く。
白い火花を散らし、ラミアが障壁を打ち破ろうと魔力を強める。
「…っ!」
刀印を組んだ右手が震える。空いた左の手で懐をあさり、符を取り出し、ラミアに投げつけた。
ブライトの障壁をすり抜け、ラミアの身体に張り付いた。
「っ!」
ラミアが追撃を止め、符を剥がそうと魔力を爆発させる。障壁に亀裂が走った。
ブライトの障壁が欠片となり、空間に舞い散る。
「ぐっ…!」
ブライトの爪が割れ、血を撒き散らす。
「カーンマン!!」
痛みを堪えて、ラミアを攻撃した。傷はないが、距離は取れた。
その間にいままでとは違う符を指に巻いた。僅かにはみ出ているが、これで痛みが和らぐ。
「なうまく さまんだ ばざらだん かん!!」
霊力の刃がラミアに襲い掛かる。
左の手の平を刃にむけ、魔力を放つ。霊力と魔力がぶつかり、辺りに散乱した。
「うおっ!」
「きゃあっ!」
それに巻き込まれ、ブライトとラミアは真反対の方に吹き飛んだ。
受け身をとる暇もなく、身を強く打ったブライトは、咳きこみながら、立ち上がる。
「
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