「…っ」
ゆっくりと、目蓋が上がる。光はここまで届かないので、起き上がって窓からおおよその時刻を確認しなければならない。
「ふぁ…」
愛らしい欠伸をしながらレオナは辺りを見回した。
「…あれ?」
ブライトがいなかった。
どこに行ったのだろうかと思っていると、小屋の扉が開いた。
「ああ起きたか」
ブライトだった。
「うむ…どこに行っておったのじゃ?」
それを聞いてブライトが呆れた様子で、さらに半目でレオナを睨む。
「昨日一旦町に戻るって言っただろ」
ああ、そういえば。
寝る前の記憶が戻り、レオナが納得する顔を作った。
「まったく覚えてくれよ」
何の用で戻ったのだろうかとレオナが思っていると、ブライトがテーブルに置いた荷物に視線がいった。
「それは?」
「5000万コージ」
「ご…!」
すらりと言った言葉にレオナは驚いた。
「…お前の依頼の事を言ってくると…ああいいや…」
ため息をつきそうな様子のブライトの言葉でこれが自分の依頼報酬だと理解する。
ちなみになぜ今町に戻ったのかというと、バフォメットの依頼はもう何も問題ないが、町の人々はそれを知らないはずだ。知らせないでいると、ブライトがやられたと思われ、色々と人が来る事になるだろうと考えた結果だった。
「で、今日行くんだろ?」
「…ああ」
少し遅くではあるが、朝食に入る食事を済ませたレオナは机に紙を敷いて、ブライトと話し合っていた。
レオナがインクをたっぷりと吸った羽ペンで魔方陣をすらすらと書いていく。それを見ていたブライトはレオナが書き終わった時を見計らい、声をかけた。
「…これを使うのか?」
「そうじゃ、ここに…これを配置する」
そう言って魔方陣の四方に書かれた4つの円にそれぞれ書いていく。それぞれに棒、杯、短剣、そして六芒星。
「我が中心にたって詠唱する。 お主は、我に精を与えたらゆっくり見ていたらいいぞ」
「…たったそれだけ?」
「そうじゃ、過酷な事はさせられぬ」
優しい声音を聞いて、ブライトは口にへにして眉を寄せる。
安易に言うと、ズッコンバッコンしてしまえばブライトの出番は終了なのだ。
必要と乞われ、これなのだから当然だろうが。
「…でもなぁ、これだけというのも、けど…」
うなっているブライトを見て、レオナはくすりと笑う。
「多くの者は意気揚々とするだろうに、お主はなぜそう言うのじゃろうな」
「ただでさえ前回うんうん唸ったのにこの短期間でまた書かないと、というのはやっぱりなー」
「? 何の話じゃ?」
「ただのメタ発言だ。気にするな」
「…?」
意味が分からず胡乱にするレオナを尻目にブライトは紙面に描かれた魔方陣を見据える。
「…で、これは四大元素の力を使うのか?」
「そうじゃ」
棒は火、杯は水、短剣は風、六芒星は地。これを配置する事で魔方陣の威力を底上げする事が出来る。
「まあこれは基本だな…で、俺の精で魔力を高めると」
「ああそうじゃ」
レオナの肯定の言葉にブライトは顔をしかめる。
「…なんとかいうか、簡単だな」
ブライトとしては、封印はけっこう複雑で難しいからそれを解く法もそれなりのものだと考えていた。しかし、それが必要なのは人間だけだ。
例えば、ブライトの詠唱はあくまで自分の力を明確な形に変える為に必要だ。一方、レオナはそれを必要とせずに自分の力を扱っている。
魔方陣も、人間の定まらない力を明確にする方法の一つなのだ。もちろん、力を増幅させる役割もあるのだが。
だからこそ、バフォメットのレオナには、力を増幅させる魔方陣だけでいいのだ。人間のようにわざわざ力を形成す必要もないのだから。
これをレオナがブライトに説明して、ブライトは納得した。
「なるほどね…いかんなぁ、どうしても人間の範疇で考えてしまう」
腕を組み、唸っているブライトを見て、レオナはくすくすと笑った。
「…なあ」
まだ少し準備があり、それをしているブライトは、レオナに声をかけた。ブライトの方を向かずに、レオナは返した。
「なんじゃ?」
そのまま手を動かすが、ブライトの言葉でぴたりと止まる。
「…俺が術を使えば精をわたす必要もないよな?」
「ある必要、ある」
即答のレオナはブライトの方に向き、ずいっと近寄る。
「けどな? 術でお前に力を分ける事も出来るんだよ、それをしたら」
「まってくれ本当にな、精を得られればいいだけの話なのじゃぞ?」
「あのなぁ…いやまて、そもそも友人の大切な物が紛失しているというのにそんな余裕がなんであるんだ?」
「まあ、無くとも本人は気にしてないからな…龍神の役目が果たせなくて両親が心配しているのじゃよ」
それを聞いて、ブライトは苦い物を含んだ顔をして呟いた。
「…ニートかよ…」
呟きはレオナには聞こえ
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