「……っ!」
宝玉の魔力になす術もなく吹き飛ばされたブライトは、背を思いきり木に打ちつけた。衝撃で息がつまる。
レオナが反射でブライトを見た。本心は駆け寄りたいが、今はそれどころではない。
これで、宝玉は彩宵の元に戻る。今の魔力も時間が経てば元に戻る。だが、今はまだ駄目だ。まだ神器に戻ってない。
さらに、封印が盾になっていたようで、今宝玉の魔力は周りにかなりの影響を出している。
次は宝玉自体の力を弱め、本来の姿に返させる。ティアにはこれ以上疲労させるわけにはいかない。一人で成さねばしかし、考えていた異常に力が強い。
はっとしたブライトがレオナを見やると、宝玉の魔力に必死に抵抗していた。
「…」
足に力を込め、立ち上がる。深く息を吸い込み、ゆっくりと吐く。
ただでさえレオナはそうとうに力を使っている。それで対応は難しいだろう。
「…っ」
小さく呟いてからブライトは両の手を強く打った。澄んだ音が響いた。
「掛けまくも畏き…」
ブライトの唱えているものは、神事で初めに奏する時の言葉。これは穢れた気を祓う言葉、これを唱え、各神に対しての祝詞を唱える。
しかし、これだけでも力はある。
自身の魔力で押し返していたレオナは、抵抗が薄れてきた事に気づいた。そして、ブライトの言葉をジパングで似たものを聞いた事があることを思い出した。
「…そうか」
この国では、四大元素と呼ばれる四つの属性なのだが、ジパングでは木火土金水、この五つで出来ている。
「御禊祓へ給ひし時に生り坐せる禊戸の大神等 諸諸の禍事」
そして、水の属性の力を強めるための属性は、金だ。金は、水を助けると同時に木を抑制する役目もある。
その金を吸い取ったから、木を抑制するものがなくなり、だから、こんなに 木々が生えたのだ。そして、この霧が金を吸い取り、宝玉に送っていた。
そして、ブライトの霊力が火の属性を持っている事に気づいた。
四大の水に対し火は、ぶつかり合い、土と風は助けてくれる属性だ。五行の力だが、四大の原理に当てはめ、宝玉の力を封印するのに、火の封印を施した。そして、五行では金に克つ力は、火。
「穢有らむをば 禊へ給ひ 清め給へと白す事を聞こし食せと 恐み恐みも白す」
ブライトは、解かれた火の封印を利用して、宝玉の力の一旦を担う金を潰している。
「急々…如律令…っ!!」
ブライトの言霊が宝玉の力を粉砕した。
宝玉の魔力が弱まる。だが、これは表面を除いただけだ。宝玉内部までにとどいた呪力をそぎ落とさなければならない。
「二人共大丈夫か!?」
ブライトがレオナとティアの元に駆け寄った。二人がへたりと座り込む。思った以上に疲弊してしまった。だが、これを彩宵の元に送らねばならない。
そのために、本来の神器に戻さねば。
レオナが肩で息をしながらティアを見た。そうとうに疲れさせてしまった。後でどう詫びればいいのだろうか。
強く息を吸って、目の前の呪具を見る。ブライトが立ち上がろうとしたレオナの肩に手を置いた。
「ブライト…?」
「後は任せろ…ティアを連れて後ろに下がってくれ」
口を開きかけたが、黙ってティアと共に後退させた。
時おり、神々しい力を感じる。力を削いで、本来の力が垣間見えたのだ。
姿も知らない彩宵、知っているのは、レオナの親友という事だけ。お前の親友が、こんなにも頑張ってくれた。
だから、絶対に力を貸せ。
ブライト一人では出来やしない。だから、神の力を利用する。
「力を貸せ、彩宵神」
両手を合し、目を瞑る。
「天清浄 地清浄 内外清浄 六根清浄と祓給ふ」
ブライトが一言発すると宝玉が、怯えているに見えた。
「天清浄とは天の七曜九曜二十八宿を清め 地清浄とは地の神三十六神を清め」
確実に、彩宵は力を貸してくれている。神籬となるものはないように思えた。だが、じっかりとそれを承ってくれる存在がある。
「内外清浄とは家内三宝大荒神を清め 六根清浄とは其身其体の穢を禊給清め給ふ事の由を」
目の前にあるものは、呪具と呼べるものと、神器と呼べるものが混ざり合っている。神器として視える部分を神籬にしている。
「八百万の神等諸共に 小男鹿の八の御耳を振立てて聞し食せ申す…!」
本来、神器に相応しい輝きをまとう。
初めはそういう名だと思っていた。しかし、それはあえて間違えていた。レオナがなぜ『宝玉』と呼んだのか、納得した。名は、一つの呪いだ。そして、強大な存在になるほど、名を呼ぶだけで凄まじいこととなる。
呪具と呼べる代物になった『宝玉』は、本来の名前で呼んではいけない恐ろしいものだ。
だから、あえて間違えた。
「吐普加身依身多女 寒言神尊利根陀見 波羅伊玉意喜餘目出玉」
もう、『ほうぎょく』、と偽りの名を呼ばなくてすむよ
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