ドロドロでらぶらぶ

精霊使い
それはこの世界を成す四代元素の化身、精霊と心をかわし、その力を借りて自然を操る職業
大いなる昔より生きとし生ける生き物に等しく多大な恵みと甚大な破壊をもたらしてきた自然の力というのは凄まじいもので、それを扱える精霊使いは、己が得意とする環境であればたった一人で数百の兵士と同等の力を発揮する、とまで言われることすらある
僕もそんな精霊使いと精霊の神秘に魅せられて精霊使いを志す騎士見習いである。精霊との契約もしており、精霊魔法を行使することはできるのだがまだ12歳と若い…いや、幼い僕は前線には出してもらえず、街やその周辺の哨戒であったり遠征任務の物資運搬であったり、雑務をこなしながら訓練を重ねる身。それでもいつかは……

「おーいヘリオ!教官がお前の事探してたぞー!」
「へっ…教官が、僕に?」

なんて、訓練を終えてぼうっとしながら考え事をしていると、同じく見習いのレオに声を掛けられてハッとする

(教官が僕なんかに用事?なんだろう)

教官はこの街の警備に当てられている部隊の隊長を任されている、僕ら下っ端なんかよりもずっと偉いお方だ。そんな方が僕を名指しで用事があるなんて。教官の部屋にむかう間、思い当たる節が無いか頭を回してみたが、特に覚えがなかった

「失礼します!見習いのヘリオです!」
「おぉヘリオ君、よく来た。入りなさい」

部屋に入ると、訓練の時とは違う優しげな表情で僕を迎えてくれた

「あの、僕に用事というのは…」
「あぁ。君に一つ、頼みたいことがあってね」

そういって、一枚の紙を僕に差し出した。どうやらこれは何かの依頼書のようだが

「洞窟の調査…ですか?」

以来の内容を纏めると、こんな感じだ
街から少し離れたところにある古い鉱山で、自然にできたものと思われる洞窟が発見された。その洞窟に危険がないかどうかを調査し、鉱石の採取に利用可能かを調べる

「上からの仕事なんだがね、あいにく今は学者チームは遠征中だ、人手も足りていない。だが、確か君は精霊使いだったろう、それも土の精霊と契約している。土の元素が豊富な鉱山であれば単身でも詳しい調査が行えるだろう」
「た、確かに洞窟であれば可能……ですが、僕なんかの見習いにこんな仕事を、その、大丈夫なのでしょうか」
「なあに、心配することは無い。この鉱山は昔から安全を確認された上で使われているんだからな。それにここだけの話だが…」

教官がこっそりと耳打ちをしてくる

「君のような一生懸命な若者を見ていると無性に応援したくなるんだ。君にはもう十分な実力も才能もある、ぜひ一日でも早く前線で活躍してほしい。だがその若さでは手柄でもない限り上に上がるには時間がかかるだろう?だから少しでも手柄を君に…と思ってね」
「きょ、教官…!」
「おっと、贔屓しているのは内緒にしておいてくれよ?」

思えば、この人は僕によく目をかけてくれている人だった。訓練後に居残って特訓をしていると、いつも差し入れや稽古をつけてくれたし、プライベートで食事に誘われたこともある
今まで気が付かなかったけど、僕はこの人に期待されているんだ。そう自覚すると、特別扱いをされていることに周りへの少しの申し訳なさと、前線での活躍に一歩近づけることへの嬉しさの混ざったような不思議な感じがした

「それでは、この任務、君に任せる。やってくれるね?」
「はいっ!ありがとうございますっ!」

こうして、僕の初めての単独任務が決まったのだった

……………………………………………

「ここ、だよね」

あれから数日後。僕は例の洞窟の前にやってきていた。その穴は人がギリギリ一人しか通れないほどの小ささで、近くは背の高い植物や蔦で見事に隠れている。なるほど、これなら今まで派遣されなかったと言われても不思議ではない

「でもこれだと入り辛いね……ノーム、お願いできる?」
『ん…。まかせて』

僕の肩のあたりにフヨフヨと浮遊する仄かに橙色の光を纏った土の塊、僕のパートナーである土の精霊ノームに声をかける。こういった植物の生い茂る場所や鉱山ではやはり力が出るらしく、普段無口で返事すら返さないノームもちゃんと返事をしてくれた
ノームに声をかけてから小さな入り口に手をかざすと、ほどなくして辺りを覆う草や蔦がもぞもぞとうごめいて道を開け、岩の穴がずずず…と地響きと共に広がってゆき、出入りするのに十分な大きさとなった。

「あはは、やっぱりテンション上がるものなの?こういう所だと」
『ん、この洞窟…特に凄い。こんなの初めて』

中を歩きながらノームと談笑する。普段が全然喋らない奴な分、他愛のない会話でもできることががとても楽しかった

「それにしても…すごいな。まるで宝箱だ」
『天井も壁もしっかりしてる…これならある程度大規模な採取でも大丈
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