土砂降りの中を家に帰る途中、捨て猫を見つけた。
街路樹の下にキジトラの猫がうずくまっていた。毛はビッショリと濡れて体に張り付き、とても痛々しい。かろうじて意識はあるようで、俺を見るなりか細い声で何度もないている。よく見ると、体には細かい枝やゴミが張り付いていた。川に落ちてしまったのだろう。
尻尾に鈴が付いているので飼い猫だったのだろうか。まったく、捨てるなんて無責任な飼い主もいるもんだ……………
気がついたら、俺はその猫を抱えて歩いていた。
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俺は猫を抱えたまま自分の住むマンションにたどり着いた。うちはペットOKなので、連れて帰っても怒られはしないだろう。
とりあえず、この猫を温めてやらねば。
俺は荷物を下ろすと、猫を抱いてそのまま浴室に向かった。
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あれだけ雨に晒されたのでシャワーは嫌がるかと思いきや、お風呂慣れした飼い猫のようにおとなしく、シャンプーも嫌がらなかった。
「お前、飼い猫だったのか?」
俺は猫を洗いながら話しかけてみた。
「ニャー」
先ほどより幾分元気な声で返事は返ってくるが、理解はできない。
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シャワーを終えた猫を布を敷き詰めたカゴに入れて、俺は夕食の準備をしていた。といっても、買ってきた惣菜を温めて並べるだけだが。
すると、匂いにつられてか、後ろから猫の足音が近づいてくる。
そこで俺は違和感を感じた。
猫にしては足音が大きいのだ。
それはまるで人の足音のようで
気になって振り返ると、
茶髪の少女が立っていた
「……………」
俺は絶句した。
それは少女が急に現れたことに対して、ではなく
その少女の姿に、である。
頭には猫の耳が生え、腰ではふさふさとした尻尾が揺れている
「……………」
その猫のような少女は、眠そうな瞳でこちらをじっと見つめている。その目は、何かを訴えているように見えた。
クキュルルルーー…
お腹がなる音がした。
「……腹、へったのか?」
「………コクン」
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「ハフハフ…モグモグ……ンクッ」
今日買ってきたのは大きめの焼き魚。ご飯もよそってやると、嬉しそうに尻尾を振りながらガツガツとかっこんでいた。俺は自分の夕飯をあげてしまったので、買い置きのカップ麺を食べた。
「…美味しかった」
3杯目のご飯を平らげると、茶碗を置いて呟いた。
「そうかい、そりゃ良かった」
正直、こんなに食べるとは思わなかったのでビックリした。
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食器を片付けて一息ついたところで、俺はさっきから気になっていたことをきいてみた。
「あんた、誰だ?いつの間に入ったんだ?」
猫娘(仮)はキョトン、とした顔をしてこう答える。
「……?あなたが連れてきてくれた」
「……はぁ?」
何を言ってるんだ?
俺は今日仕事や買い物の会話位しかしていないはずだ。
「……雨の中で動けない私を抱えてここまで連れてきてくれた…。
とても助かった。ありがとう。」
雨、抱える、連れてくる……確かに猫は拾ったが、女の子は拾った覚えがない。
「…まさかお前、あの猫なのか?」
「……そう」
確かに、猫を入れたはずのカゴには誰もいない、さらにこの猫娘の尻尾には、あの猫のように鈴が付いていた。
…とりあえず俺は頬をつねってみる
「…痛くないの?」
「いや、痛い。残念ながら痛い」
「……?」
さて、これが現実だというならどうするべきか。とりあえず俺は彼女に質問してみる。
「あんたは猫なのか?人なのか?」
「……私は猫又、どっちでもない」
…どうしよう、この子電波なのかな
「猫又って…あの、猫の妖怪の?」
「そう」
嘘を言っているようには聞こえない。しかしやはり信じられない。
「耳、触ってもいい?」
「……いいよ」
許可が下りたので触ってみる。
毛がうっすらと生えており、触った感じ、作り物だとは思えない。
「尻尾は?」
「……優しく…なら」
こちらもふさふさと毛が生えていて、さらに手の中で動こうともぞもぞしている。やはり本物のようだ。
「……んっ…あぅ…もうちょっと…優しく…」
触るのに夢中で力加減を忘れていたようだ。急に艶っぽい声が聞こえてびっくりした。
「あ……スマン」
「……もういい?」
だが今ので耳や尻尾が本物だとわかった。それなら猫又だ、というのも信じざるを得ない。
「お前が猫又なのはわかったが……なんであんなところにいたんだよ」
こいつが猫又なら捨てられた、というのは考えにくい。
「……………お散歩してたらいつの間にかこっちに迷い込んじゃったの」
「こっち?」
「………?あぁそっ
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