「店員さん、コレくださ〜い」
「あ、はい。こちらで承りますね」
店長の下で働き始めて、およそ1週間が経過した。
商品の包装などの細かな作業に苦戦しながらも、少しずつ雑貨店の仕事に慣れつつあった。
接客に関しては、幸いにも客受けは良いと店長からお墨付きをもらった。
ただ1つ、いまだに解決の兆しが見えないことが……
「全部で、840エルになります」
「あら? いつもと値段が違いますよ?」
「え……あ! す、すみません!」
星の数ほど存在する、商品それぞれの値段。
「ほ、本当にすみません! 大変失礼を……」
「いえいえ〜気にしないでください。新人さんには大変だって、ちゃんとわかってますから〜」
「はい、今後は気をつけますので……」
金額のミスはこれで何度目だろうか……。
1番辛いのは、僕がわからないのに相手が金額をわかっていること。
まぁ、陳列棚にそれぞれの値打ちが表記されているから、お客はそれを足すだけなんだけど……。
それでもなにか、こう……従業員としてのプライドが許さない、というか……。
とにかく、常にそんな切ない気分を味わっている。
「店員さん、早く精進してくださいね〜?」
「が、頑張ります」
そう言うと、女性客は軽快な足取りで店を後にする。
はぁ……優しい人で良かった。
「調子どっすかー?」
「あ、店長」
店の奥からイチカ店長が登場。
どうやら作業中だったようで、服の上からエプロンを着用していた。
どうでもいいけど相変わらず眠たそうだ。
「あーその様子だとー、また失敗したっすねー?」
「あ、あはは…お見通しですね」
「慣れるまではー我慢してほしいっすー。商品に値打ちを付けるのはー、うちの流儀に反するっすよー」
「あぁはい、それはもちろんわかってますよ」
そう、金額ミスの要因は聞いての通り。
まぁ店長のコダワリとあらば、僕はそれに従う他ないわけであり。
「まー前も言ったっすけどー、接客自体は問題ないっすよー。元々人当たりイイっすからねーシロさんはー」
「あ、ありがとうございます」
「それにー最近は不思議と客入りがイイっすー。特に女性客が増えてるっすねー」
「え、そうなんですか?」
「っすー、どうしてっすかねー?」
「さぁ、どうしてなんですかね?」
「………」
視線ジットリ。
「自覚ないところがーさすがっすねー」
「え?」
「ここしばらくー、女性客から話しかけられたことあったっすかー?」
「あ〜、はい。何度か」
「どんなこと話したっすかー?」
「えっと……名前教えてください、とか…歳はいくつですか、とか?」
「……ほほー」
視線ギロリ。
あれ、睨まれた……。
「お客とイチャつくのは止めるっすー。ちゃんと仕事するっすー」
「イチャついてませんって! というか、店長が愛想良くしろって……」
「口答えは許さないっすー。もう減給っすー、反省するっすー」
「あの〜、僕既にタダ働きなんですけど……」
また店長は良くわからないことを……。
優しくしてくれたと思ったら、急に怒り出すんだもん。
リンもそうだけど、店長も難しい年頃なのだろうか。
……あれ?
そういえば店長の年齢を、僕は知らない。
「………」
「? なんすかー?」
ダメだ、聞けない!
色々と怖い!
あーもう!
なんで僕はこうもヘタレなんだ……。
「まー無駄話はさて置きーシロさん、1週間働いてー何か気づいたことあるっすかー?」
「そう言われても……あ、店長が意外とがめつい?」
「そーゆーことじゃないっすー。というかーがめつくて何が悪いっすかーー」
「否定はしないんですね」
おぉ、珍しい。
店長がちょっと怒った(ような気がする)。
「もーストレートに言うっすー」
「はぁ」
なんだろうか。
店長の様子から察するに、あまり重要なことではないとは思うけど。
「実はーうちの雑貨店なんすけどねー、人間のお客さんの中にー稀に魔物が紛れ込んでることがあるっすー」
「へぇ、そうなんですか」
「………」
「………」
「……反応薄くないっすかー?」
「え? いや、だって……」
あれ、もしかして店長知らないのかな?
「この町は昔から、魔物との交流がそれなりに深いんですよ? 近場から言っていくと……2軒お隣の芸術家、リャナンシーのリーンベルさん。酒場のオーナーで、ホルスタウロスのマオさん。保安官でダンピールのレティスさん。大工でゴブリンのノイルさん。シスターでダークプリーストのマリアさん。郵便局員でクノイチのシノブさん。あとは……」
「もー十分っすー……」
気がつくと、店長は肩をガックリと落とし項垂れていた。
「うちはーダメな狸っすー……店を構えた程度でー調子に乗ってたっすー……」
「あ、あの〜、店長?」
「慰めは不要っすー……うちはどうせー商売地区の
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