大学生活初めての夏休みが終わり、これから後期の課程が始まろうという矢先……
「急に呼び出してすまんのう」
「いや、それは別に構わないんですけど……」
「まったくだ! おい、用があるならとっとと言え!」
「レイラ? ダメですよ?」
「む、むぅ……」
何故か構内放送で呼び出された俺達一行。
頭に怒りマークを付けたレイラをコヨミさんが制する。
「ゴホン! お主らを呼んだのは他でもない。長期休暇中に大学で起こった問題を解決してもらおうと思ったのじゃ」
「問題、ですか?」
「うむ。お主は『サークル』を知っておるか?」
「はい、もちろん知ってますけど」
「主様? さーくるとは、一体何ですか?」
「あー、そうですねぇ……」
『サークル』。
それは、ある一定の活動を通して魔物同士の繋がりや交流を深めようとする活動である。
「なるほど…要は、部活動のようなものですね?」
「そこまで厳格なものでもないですけど、まぁ大体そんな感じです」
「うむ、話を戻しても良いかのう?」
「あぁはい、すいません」
俺とコヨミさんは理事長の方へと向き直る。
レイラは理事長室の入口付近で微妙に不貞腐れている。
「そのサークルなんじゃが、この酷視姦でも数多くの学生達が昼夜活動をしておる」
「? 別に悪いことではないですよね?」
「まぁまぁ、話は最後まで聞くが良い」
理事長はクルッと背を向け、部屋の奥にある理事長専用の豪華な椅子に腰をかける。
「……数が多すぎるのじゃ。わしが認知できぬほどにのう」
理事長は顎に手をやり思案顔。
「千や二千ならまだ許容範囲じゃが、今夏の調査で…一万を超えていることが判明したのじゃ」
「い、一万……」
「それは…とてつもない数ですね」
「うむ。問題はわしの管理が行き届かなくなるだけでなく、新たにサークル申請をする学生達に、許可の判を押すことができぬことじゃ」
「?」
「主様。恐らくですが、いくら広大な敷地を保有するこの大学でも、さすがに一万のサークル活動を支える程のスペースはない…ということではないでしょうか?」
「ズバリ、その通りじゃ。さすがはコヨミじゃのう!」
「恐縮です」
「はぁ、なるほど」
今だにピンとこない俺。
「元々大学はサークル主体に建設されたわけではないからのう。サークル棟なんぞ、とうの昔に容量オーバーじゃ」
「えーっと結局、俺達は何をすればいいんですか? まさか……一万もあるサークルを全部見て回れ…なんて言わないですよね?」
「阿呆! そんなことしている時間は、お主らにはないはずじゃ」
そりゃそうか。
在学生である俺達がそんなことしてたら、大学生活の半分は終わってしまいそうだ。
「お主らに直接何かしろというわけではない。わしの頼みというのは、このサークル問題の 『責任者』を連れてきてほしいのじゃ」
「責任者?」
「うむ。数百年前にサークル適正判断のため専属主任として雇ったんじゃが……現状を見る限り、ちゃんと仕事をこなしているようには見えんのでのう」
「あ〜なるほど。要するに『制裁を加えたいからとっ捕まえてこい!』ってことですね?」
「ま、端的に言えばそういうことじゃな」
それで、俺達の出番ということは……
「察しの通り、戦闘は避けられんじゃろうな」
「やっぱりですか……」
そんなことだろうと思った。
「奴がおるのは廃校舎の内部じゃ。おぉそうじゃ、地図を渡しておくかのう」
「な〜んかまた、怪しい感じのするエリアですね」
「アンデッド種の巣窟じゃからのう。厄介な魔物がウジャウジャおるぞい」
「これ…ボランティアでやるには、ちょっと危険過ぎません?」
「そう言うじゃろうと思って、ちゃ〜んと褒美は用意しておるわい! 内容は、達成してからの お楽しみじゃがの♪」
「が、頑張ります」
そんなわけで、サボリ魔サークル主任の捜索を任された俺達。
……嫌な予感しかしないなぁ。
廃校舎。
明かりなどはもちろんなく、内部は木造で壁はボロボロ、床は腐って穴だらけと荒れ放題。
ホント、白々しいほど廃校舎だ。
いかにも何か『出そう』な雰囲気を漂わせている。
「んー…暗くて良く見えないなぁ」
「主様、足元にはご注意ください」
「まったく、あのロリババアめ…いつかこんがりと焼いて……」
まぁ、俺達の面子にオバケやら幽霊やらを怖がる者が1人もいなかったのは幸いだった。
この危険地帯で戦力を落とすのは非常に手痛いからだ。
「周囲にまったく気配を感じません……不気味です」
「あぁ。何かいる、ということ以外はサッパリだ」
「え、俺は何も感じないけど」
「鈍い奴だ…真っ先に死ぬタイプだな」
「不吉なこと言うな!」
地図に書いてある道はほぼ1本道だが、瓦礫や穴床などのせいで幾度も大回りをする
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