6単位 『合同演習』

ロイPT専用宿舎にて。

「主様、お茶をお持ちしました」
「あ、あ〜えっと…ありがとうございます、コヨミさん」
「そんな、お礼を言われるようなことは何も……」
「おいコヨミ、何故お前はこの男を『主様(ぬしさま)』などと呼ぶのだ? 水神としての威厳はどうした?」
「水神だからこそ、ですよ。無敗の小生を初めて打ち負かした殿方です、主様と呼ばずにはいられません」
「むぅ…まぁお前がそう言うなら、私は別に構わんのだが……」

いつの間にかパーティINしていた龍の女性、コヨミさん。

『コヨミさんのPTはどうするんですか? 確か特例を除いてPTの変更はできないはずじゃ……』

と聞いてはみたが、

『主様と斬り合ったように、小生はPTを組む者全員と手合せ願うことにしています』
『な、なるほど……それで?』
『全員例外なく、天に召されました』
『………』

聞かなきゃ良かった。
理事長曰く、在学中のメンバー死亡は特例として認められているらしい。
後日、コヨミさんの加入が正式に認められた。

「主様。小生は一生涯、主様のお傍におります」
「あ、あははは……」
「まったく、極端なところは相変わらずだな……」

少々オーバーな部分はあるけど、それを除けば良い人であることは間違いない。
きっと上手くやっていけるはずだ……たぶん。












某日。
新たに始まる演習講義を大修練場で行うとの通達を受けた。
いやどこだよ修練場って。
行ったこともなければ聞いた事もない。
まったく…なんでこう、この大学は不親切かなぁ……。
ただでさえ無限に感じるほど広いんだから、どこか目立つところに案内板でも置いとけっての。

「ちなみに私は知らん。コヨミ、お前はどうだ?」
「そういった場所があるという話は聞いていましたが、場所までは……」
「う〜んそっか。困ったなぁ」

レイラとコヨミさんが知らないとなると……もうあの人を頼る他ないな。
非常に不本意だが。












「ほう? 大修練場の場所を教えろとな?」
「はい。もう、頼れるのは理事長しかいなくて……」
「そうかそうか! 頼りになるのはわしだけじゃからのう! かっかっか!」
「………」

後ろで控えているレイラの顔が、どうにもしょっぱい。
理事長(バフォメット)には事あるごとに借りを作っている(主に治療系)。
本当は心の底から感謝すべきなのだろうが……なんか悔しくて嫌だ。
レイラも同じ心情なんだろうな、きっと。

「いや〜しかし、桐生暦を仲間に引き入れるとは、お主もなかなかやりおるのう?」
「引き入れたというよりは、入ってきたの方が正しいと思います」
「まぁ、どちらにせよ大したもんじゃよ。東方の地で『水神のコヨミ』を知らぬ者は、1人たりとておらぬと言われておるくらいじゃからのう」
「コ、コヨミさん、そんな大物なんですか?」
「元は『神』じゃからな。しかもお主、そんな神の娘を『主様』などと呼ばせておるのか? 見かけに寄らず良い趣味を持っておるのう?」
「んなわけねーだろ!?」
「かっかっか!」

まったくこのババァは……。

「おい、とっとと修練場の場所を吐け。私達には時間がないのだ」
「レイラ、少し落ち着いてください。目上の者に対してあまりにも失礼ではありませんか?」
「い、いやしかし……」
「あれでも『一応』この大学を治める理事長なんですから、もう少し敬意ある態度をですね……」
「あぁーわかったわかった! 次からは気をつければ良いのだろう?」
「はい♪ レイラのそういう素直なところが、小生は好きですよ♪」
「む、むぅ……///」
「………」

な〜んかソフト百合プレイが展開されているんですが。
そんな彼女達のやりとりを尻目に、理事長はというと……

「一応…一応、理事長……orz」

神であるコヨミさんの『一応』には相当なダメージがあるようだ。
というか、意外と繊細なんだなぁ。
背中をポンポンと叩いて理事長を慰める。
こんな混沌とした大学をたった1人で統治しているんだ、ホント大したもんだよこの人は。
ん〜、ちょっと可哀想に思えて……

「ま、気にしても仕方ないのう! ほれ、これが大修練場までの地図じゃ!」
「………」

立ち直りも早かった。












「へ〜、ここが大修練場かぁ」
「大の一文字は、伊達ではありませんね」

広い…いや、果てしないと言うべきか。
これだけ大規模な修練場を、今だかつて俺は見たことがない。
大量の砂と照りつける太陽さえあれば、ここを砂漠と比喩して遜色ないだろう。

「そこそこの人数が集まっているようだが……ん? 見知った顔が少ないな?」
「え?」

そう言われ辺りを見渡す。
確かにレイラの言う通り人数こそ揃ってはいるものの、俺達と同じ一般学部の生
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