ロイPT専用宿舎にて。
「主様、お茶をお持ちしました」
「あ、あ〜えっと…ありがとうございます、コヨミさん」
「そんな、お礼を言われるようなことは何も……」
「おいコヨミ、何故お前はこの男を『主様(ぬしさま)』などと呼ぶのだ? 水神としての威厳はどうした?」
「水神だからこそ、ですよ。無敗の小生を初めて打ち負かした殿方です、主様と呼ばずにはいられません」
「むぅ…まぁお前がそう言うなら、私は別に構わんのだが……」
いつの間にかパーティINしていた龍の女性、コヨミさん。
『コヨミさんのPTはどうするんですか? 確か特例を除いてPTの変更はできないはずじゃ……』
と聞いてはみたが、
『主様と斬り合ったように、小生はPTを組む者全員と手合せ願うことにしています』
『な、なるほど……それで?』
『全員例外なく、天に召されました』
『………』
聞かなきゃ良かった。
理事長曰く、在学中のメンバー死亡は特例として認められているらしい。
後日、コヨミさんの加入が正式に認められた。
「主様。小生は一生涯、主様のお傍におります」
「あ、あははは……」
「まったく、極端なところは相変わらずだな……」
少々オーバーな部分はあるけど、それを除けば良い人であることは間違いない。
きっと上手くやっていけるはずだ……たぶん。
某日。
新たに始まる演習講義を大修練場で行うとの通達を受けた。
いやどこだよ修練場って。
行ったこともなければ聞いた事もない。
まったく…なんでこう、この大学は不親切かなぁ……。
ただでさえ無限に感じるほど広いんだから、どこか目立つところに案内板でも置いとけっての。
「ちなみに私は知らん。コヨミ、お前はどうだ?」
「そういった場所があるという話は聞いていましたが、場所までは……」
「う〜んそっか。困ったなぁ」
レイラとコヨミさんが知らないとなると……もうあの人を頼る他ないな。
非常に不本意だが。
「ほう? 大修練場の場所を教えろとな?」
「はい。もう、頼れるのは理事長しかいなくて……」
「そうかそうか! 頼りになるのはわしだけじゃからのう! かっかっか!」
「………」
後ろで控えているレイラの顔が、どうにもしょっぱい。
理事長(バフォメット)には事あるごとに借りを作っている(主に治療系)。
本当は心の底から感謝すべきなのだろうが……なんか悔しくて嫌だ。
レイラも同じ心情なんだろうな、きっと。
「いや〜しかし、桐生暦を仲間に引き入れるとは、お主もなかなかやりおるのう?」
「引き入れたというよりは、入ってきたの方が正しいと思います」
「まぁ、どちらにせよ大したもんじゃよ。東方の地で『水神のコヨミ』を知らぬ者は、1人たりとておらぬと言われておるくらいじゃからのう」
「コ、コヨミさん、そんな大物なんですか?」
「元は『神』じゃからな。しかもお主、そんな神の娘を『主様』などと呼ばせておるのか? 見かけに寄らず良い趣味を持っておるのう?」
「んなわけねーだろ!?」
「かっかっか!」
まったくこのババァは……。
「おい、とっとと修練場の場所を吐け。私達には時間がないのだ」
「レイラ、少し落ち着いてください。目上の者に対してあまりにも失礼ではありませんか?」
「い、いやしかし……」
「あれでも『一応』この大学を治める理事長なんですから、もう少し敬意ある態度をですね……」
「あぁーわかったわかった! 次からは気をつければ良いのだろう?」
「はい♪ レイラのそういう素直なところが、小生は好きですよ♪」
「む、むぅ……///」
「………」
な〜んかソフト百合プレイが展開されているんですが。
そんな彼女達のやりとりを尻目に、理事長はというと……
「一応…一応、理事長……orz」
神であるコヨミさんの『一応』には相当なダメージがあるようだ。
というか、意外と繊細なんだなぁ。
背中をポンポンと叩いて理事長を慰める。
こんな混沌とした大学をたった1人で統治しているんだ、ホント大したもんだよこの人は。
ん〜、ちょっと可哀想に思えて……
「ま、気にしても仕方ないのう! ほれ、これが大修練場までの地図じゃ!」
「………」
立ち直りも早かった。
「へ〜、ここが大修練場かぁ」
「大の一文字は、伊達ではありませんね」
広い…いや、果てしないと言うべきか。
これだけ大規模な修練場を、今だかつて俺は見たことがない。
大量の砂と照りつける太陽さえあれば、ここを砂漠と比喩して遜色ないだろう。
「そこそこの人数が集まっているようだが……ん? 見知った顔が少ないな?」
「え?」
そう言われ辺りを見渡す。
確かにレイラの言う通り人数こそ揃ってはいるものの、俺達と同じ一般学部の生
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