1章 『リビングデッドな奴ら』

「姐さん、お出かけですか?」
「ん? あぁ、ちょっとな」
「あ〜! もしかして、あのイケメンの息子さんに会いに行くんでしょ〜!?」
「そんな! 姉御だけずるいですよ!」
「う〜あ〜」
「抜け駆け、許すまじ」
「あーあーうるせーなー! フレンはアタイだけのフレンなんだよ!!」

どうやら、墓場で一騒動あったようですね。












「フ〜レ〜ン〜! 春休みだからってダラけすぎだよ〜?」
「ん〜、そうかなぁ?」
「珍しいですね。フレンさんがまるでダメ人間のようです」
「新鮮といえば新鮮じゃがな」
「まぁ、こんなフレンもたまには良いだろう」

2月の上旬。
ルーク教授の計らいもあり、俺はどうにか3年生に進学することができた。
安堵したというかなんというか…とにかく気が抜けてしまった。

「はぁ〜〜〜」
「………(グイ)」
「ん〜?」
「………(お昼)」
「あ〜もうそんな時間かぁ」

そういえば、朝起きてからず〜っとソファーで寝転んでいた気がする。
いい加減エンジンかけるかなぁ〜……。

「へは〜……ダメだ、なんかやる気が出ない」
「………(お腹減った)」
「悪いフィロ…何か作ってやってくれぇ……」
「うん、わかった〜」

昼食はフィロに任せてイイから、俺はもう一眠りするかなぁ……。
なんて思っていた矢先、

コンコン

と玄関の扉を叩く音。

「ん、お客さんかな?」
「雌トカゲ、お主が出るのじゃ!」
「はっ、なぜ私が奴隷の仕事など! 貴様が行けビッチ、お似合いだぞ?」
「な、なんじゃと!?」
「ティータ、頼んだ」
「わかりました」

ティータはテコテコと玄関へ歩いていく。
しかし…アイリとエルザには再教育が必要だな。

「今出ますねー」
「………」
「あ、どちら様ですか?」

俺は耳を澄ませる。

「ここ、〜〜の…いや、〜〜〜の家で間違いないな?」
「はい、そうですが」
「そうか…ま、そりゃそうだよなぁ」

玄関先でティータが誰かと話し込んでいる。
様子を見に行くべきか?

「しっかり手入れしてある…合格だな」
「あの……」
「あぁ、まだ名乗ってなかったなぁ」

誰が訪問してきたのか、確認のため俺は玄関へと向かう。

「エリスだ、よろしく」
「はぁ……ところで、フレンさんに何か御用ですか?」
「いや、用もなにも……」

ティータと話す人物をようやく目視できる位置に来た俺。

「フレンに、〜〜に会いに来たんだよ」
「〜〜…フレンさんが、ですか?」
「あぁそうさ。ほら、アタイを良く見てみな」
「……あ、確かに〜〜〜……」
「ははっ! そうだろそうだろ! 〜〜〜〜自慢の〜〜さ!」

………?

「ティータ? 一体誰と話して……」
「! フレン!」
「……うわぁ!? ちょ、ちょっと!?」

様子を見に来た俺にいきなり抱きついてきた1人の女性。
む、胸が、あ、当たってるんですけど……///

「久しぶりだなぁフレン! 元気にしてたか〜? ん〜?」
「あ、え…あ、あの……」

女性は抱きつきながら俺の髪をクシャクシャと撫で回す。
なんだか懐かしいような……変な気分だ。

「ちょっと前、墓参りに来てくれたよなぁ? 嬉しくってな、つい会いに来ちまったよ!」
「へっ? は、墓参り?」

確かに行った。
母の墓参りに。
(『私たちの日常 〜2年目〜』の第5章を参照)

「あ、あの…とりあえず、離れてくれませんか?」
「ん〜? なんだよ、つれないなぁ? さては反抗期か?」

良くわからないことを言いながら、女性は名残惜しそうに俺から離れる。

「……あ」

ようやく女性の全身が見られた。

「フレンさん、この方は?」
「………」

女性は『グール』。
美人……この表現が最も適切だと思う。
身長は俺より少し低いが、それでも女性にしてはかなり高い。
非常に露出の高い格好をしており、その……胸の大きさが際立つ。
それになにより……

「あなた…どうして……」
「ん?」
「どうして、俺と…そんなに…………似ているんですか?」
「? そんなの当たり前だろ? アタイは、お前の『母親』なんだから」
「は、母…親?」

???

「母、さん? 子供のときに死んだ……母さん?」
「ああ! 魔物になっちまったけどな!」

あぁなるほど。
死んだ母さんがグールになって帰ってきたのか。
あ〜はいはい、把握把握。

………。





え?












「改めて……アタイはエリス、フレンの母親だ」
「「「「「………」」」」」

同居人5名、沈黙。

「えっと……ほんとに母さん?」
「あん? 信用してないのかい?」
「いや…なんか、子供の時の記憶と誤差が激しくて……」

生前の母はこんなに男勝りじゃなかった気がする。

「墓場で若い奴らに慕われてたから、それ
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