「うぅ〜…これ以上は、ムリだよ〜……」
「フィロ…もっと力抜いて」
「い…い……痛〜〜〜い!?」
「わ、悪い…初めてだったか?」
「ん…ん〜ん、もう大丈夫……」
「じゃぁ…動かすぞ?」
「ゆっくり…ね?」
ジト〜〜〜
「ただのストレッチのはずが、色々と妄想が働く会話ですね」
「背中を押すフレンも紛らわしいのだ! 焼き殺すぞ!?」
「なぜ!?」
「そう硬くならずとも良い。 喫茶店の連中は皆気の良い奴ばかりじゃ」
「俺の中では幼女ばっかりって印象があるんだけど」
「確かに幼女メインではあるのう。 ワシがあそこで働くのもそれが理由じゃからな」
「え、じゃぁお店には幼女しかいないのか?」
「そこまでは言うておらん。 少なくとも厨房の連中は幼女ではないのじゃ」
「そっか」
今日は栄えある初出勤。
開店から夕刻までの勤務だ。
「こんな早く家出て、お店は開いてるのか?」
「大丈夫じゃ。 仕込みのために厨房連中は既に来ておるはずじゃ」
「あぁ、なるほど」
「チーフも恐らくいるじゃろうな」
「チーフって、責任者のこと?」
「うむ。 ちと中途半端な奴じゃが、上手く皆をまとめておる」
「へぇ〜」
アイリが認める程の人物だ、きっと凄い大物なんだろうなぁ。
「前も言うたが、お主は元々料理上手じゃ。 すぐ場に馴染めるじゃろ」
「アイリがそう言ってくれると、少しは気が楽になるよ」
「うむ!」
そんなわけでバイト先『露璃喫茶』へ向かう俺達だった。
はい到着。
喫茶店は自宅から徒歩20分程の距離にある。
近くもなければ遠くもない、何とも微妙な距離だ。
「いや〜、何度見ても胡散臭いなぁこの店は」
「これこれ。 仮にもココで働く身のお主がそんな事を言うてはいかんじゃろうが?」
「ごめん、つい」
まぁ胡散臭いとは言いつつも、実はこの店をかなり気に入っている俺。
この胡散臭さが癖になるというか何というか……。
いや、変な趣味に目覚めそうなので自重しよう。
「従業員は裏口から入るのが決まりなのじゃ」
そういう事らしいのでいざ裏口へ。
こちらは表と違い材料などの発注品が転がっており妙にゴタついている。
「おっとっと! ここは足の踏み場もないなぁ」
「客が来れば自ずと減ってゆく。 じゃからワシらが帰る頃には綺麗に片付いておるじゃろ」
「こんな量が、そんな短時間で減るかなぁ?」
「な〜に、お主も働けばわかる事じゃ」
「まぁ、それはそうか」
正体不明の箱を踏まないように気をつけながらスタッフルームを目指す。
「ここがスタッフルームじゃ。 休憩室と更衣室の役割も果たす便利な部屋じゃ」
「な、なるほど」
中は清潔感があり、休憩室にしてはかなり広い印象を受ける。
部屋の中にはさらに2つの扉があり、それぞれが男性用・女性用更衣室に分かれているようだ。
想像以上に豪華だったので少しドギマギしてしまう。
「挨拶の前に着替えておくとするかのう」
「え?」
「お主用のロッカーとコックコートは既に用意されておるはずじゃ。 更衣室に入ればわかるじゃろ」
「あぁ、わかった」
着替えのためアイリとは一旦別れ更衣室に入る。
「えっと、俺のロッカーは……」
更衣室はあまり広くなかった(ロッカーの数も少ない)。
自分の名前が書かれているロッカーを探す。
……お、あった! 『フレンお兄ちゃんのロッカー♪』
「………」
いや、だって仕方ないだろ?
そう書いてあったんだから……。
「ん〜…なんかちょっとした悪意を感じる」
いやいや!
とにかく、今は早く着替えないと。
「なかなか似合っておるではないか?」
「いやいや、アイリ程じゃないよ」
「うるさいのじゃ!」
現在厨房へ向かっている途中でございます。
「そうそう、1つ気になる事があるんだけど」
「なんじゃ?」
「もしかして男性従業員…俺だけ?」
「そうじゃが?」
「やっぱり……」
だから更衣室があんなに狭かったのか。
きっと女性用更衣室はあそこの数倍は広いんだろうなぁ。
そんな事を考えていると、
「アイリさん、彼が例の?」
「うむ。 なかなかの男じゃろう?」
「うんうん♪ すっごく僕好みかも♪」
アイリが誰かと話している。
「あ、あの……」
「あぁ、君がフレン君だね? アイリさんから話は聞いてるよ!」
「ど、どうも。 フレン=カーツです。よろしくお願いします」
「ご丁寧にどうも♪ 僕はチーフのファンネル! 皆からは役職のチーフって呼ばれてるけど」
「それじゃぁ…チーフ?」
「ん? なにかな?」
「チーフは、『アルプ』ですよね?」
「うん、そうだよ!」
チーフは希少種中の希少種だった。
あぁ、だからアイリのやつ中途半端(性別的に)って言
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