6章 『贅沢な奴ら(後編)』

「ゼェ…ゼェ…」←俺
「はぁ…はぁ…」←エルザ
「ふぅ…ふぅ…」←アイリ

後編の始めがこんなセリフで申し訳ない。

「おい…アイリ…ゼェ…別荘…ゼェ…まだか…?」
「も、もうすぐじゃ…ふぅ…あと…30分…ほどかのう…」
「30分…だと…!? はぁ…かれこれ…1時間は…歩いて…いるぞ…はぁ…」

炎天下の下、俺達一行は別荘を目指してひたすらに歩いている。
ビーチ付近までは馬車で来られたけど、そこからさらに歩くとアイリに宣告された。
やっぱり貸し切りなだけに、そう簡単にはたどり着けないか…。

「まったく…なぜ私が…ティータを…運ばなければ…ならんのだ…!」
「ゼェ…エルザ…我慢…してくれ…ゼェ…こっちは…フィロと…メイも…ゼェ…担いで…ゼェ…んだから…」
「ワシに…3人分の…荷を持たすとは…ふぅ…ふぅ…」
「人より…まだマシ…だろ…? ゼェ…ゼェ…」

歩き始めて30分のあたりでメイ、フィロ、ティータが暑さに負けてダウン。
俺は倒れたフィロとメイを、エルザは2人分の荷物とティータを、アイリには3人分の荷物を分配させた。

「ワシも…倒れ…そうなの…じゃが…」
「勘弁…してくれ…案内役…お前しか…いない…」
「倒れても…いいぞ…? そのまま…置き去りに…してやるぞ…?」
「ぐ…! ふぅ…ふぅ…誰が…倒れる…ものか…!」

楽園前の地獄って、まさにコレのことだな………












「ここが貸し切りビーチ付きの別荘じゃ! 皆の者!ワシに感謝するが良い!!」
「だから貴様に感謝する言われはない! 感謝すべきはここの持ち主だろう!?」
「その持ち主とワシがコンタクトをとったのじゃ! 手柄はワシにあるのじゃ!!」
「まぁまぁ2人とも、その辺にしときなって」
「そうだよ〜? せっかくこんないい所に来られたのに〜」
「ティータは早く遊びたいです」
「………(コクコク!)」
「む…そうだな」
「ここは一時休戦とするかのう…」
「一時と言わずにずっと休戦してくれると助かるんだけどなぁ」

ちなみに今は外泊2日目。
昨日は到着直後に皆グロッキー状態に陥ってしまった。
貴重な1日目を寝て過ごしてしまった俺達を、どうか笑わないでほしい。

「え〜と…まぁ知っての通り、昨日は恐ろしく大変だった」
「「「「「………」」」」」

思い出したくない記憶を無理に掘り起こしたかのような空気になる。

「だからその……昨日の分まで楽しもう!」
「なのじゃ!」「は〜い!」「はい」「あぁ」「………(コクリ!)」

なんかプロローグと違う気がするけど…まぁ大人の事情ってやつかな。
深くは考えないようにしよう。
今は……とにかく楽しみたい!












「あぁ〜イイ天気だ」
「まったくじゃ! やはり、夏は海と相場が決まっておる!」
「今日この日のために新調した水着だ。 フレン、私に見惚れても良いぞ?」
「ごめん、布の面積が少なすぎて直視できない…」
「いいな〜エルザだけ新しい水着で〜」
「大丈夫ですよ、フィロさん。 水着の特性は着る人に依存しますから」
「へ? どゆこと?」
「要は元が良ければ何でも似合うということです」
「そうかな〜? ねぇねぇフレン、アタシの水着どう?」
「あ〜、イイんじゃない? フィロらしさが出てるよ」
「ホント!? わ〜〜い!」
「まったく、これだからお子様は困るのじゃ」
「ア、アタシお子様じゃないよ〜!?」
「称賛と世辞の違いもわからん者を、お子様と呼ばず何と呼ぶ?」
「それを言うなら貴様も同じだアイリ。 なんだその格好は?」
「むむ、この水着の何がおかしいと言うのじゃ!?」
「フンッ、私には大人の真似をしてみたが見事に失敗した哀れな幼女にしか見えないのだが?」
「なっ!?」
「ちょ、ちょっとだめだよエルザ、そんなこと言っちゃ!」
「フィロ、お主…」
「思ってても口に出しちゃいけないこともあるって、この前フレンが言ってたよ〜?」
「!?」
「あぁ、そうだったな。 すまないロリビッチ、私が浅はかだった」
「ぬ、ぬぐぐぐぐ…!!」
「あ〜ストップストップ!」

また始まった…。

「遊びに来たんだから喧嘩は禁止! しかもさっき休戦するって言ったばっかりだろ?」
「む…そうだったな」
「むむむ…釈然とせんのう……」
「ほら、ティータはもう遊んでるぞ?」

砂のお城を制作している彼女を指さす。
その建造物の高さおよそ20m。
え、20m!?
思わず2度見してしまう。
この短時間で良く作れたなぁ。(時間にして3分。物理的に無理だが彼女なら…)

「むぅ…そうじゃのう」
「そうだよ〜遊ぼうよ〜」
「そうだな、喧嘩ならいつでもできる」
「いや、その発言は問題だろ?」

ってなわけで皆をパラソルの下から追い払うことに成功。

「あ、メイは行
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