2章 『暇な奴ら』

「おはようのキスはいかがですか?」
「うおおおおおおおおい!?」

目を覚ました瞬間、ドワーフことティータの顔が目の前にあった。

「ふむふむ…『お』が1つ少ないですが、だいたい予想通りの反応ですね。 良いデータが取れました」
「え…あ、そう……」
「もう1つ試したいのですが、また眠ってくれますか?」
「いや、無理だろ」
「そうですか。 では3つの選択肢を提示しますので、お好きなものを選んでください」
「え? あぁ、うん」
「@ティータ特製超即効性睡眠薬の服用 Aティータとの生殖行為を介しイキ疲れて眠る   B後日行う」
「B!!!」












「……ってなことが今朝あったわけ」
「へぇ〜! ティーちゃん積極的〜!」
「あやつの場合、色恋絡みでないのは確かじゃの」
「データとか何とか言ってたしな」
「なら、何の調査か聞いてみたらどうだ?」
「そうしたいけど、当の本人は地下に閉じこもってる」
「まぁワシらに害の及ぶようなマネはせんじゃろ」
「そう願うよ…」

今日は休日。
少し遅い朝食を皆でとる。
ティータは地下の研究室、メイはまだ寝室で夢の中。

「そうじゃ。 もしワシが起きたてのお主に愛を囁いたとしたら…どうする?」
「ん〜〜、『何してんの?』って聞くと思う」
「むむ…じゃから愛を囁かれたらどうするのかと申しておる!」
「2度寝する」
「なっ!?」
「はっはっは! 貴様の愛もその程度だな!」
「ぐぬぬ…!」
「ではフレン。 それが私ならどうするのだ?」
「丁寧にお断りするかな」
「!?」
「もうフレンったら〜…言い方が良くないよ〜?」
「ん〜でも、すぐ調子に乗るからさぁこの2人」
「そ〜れ〜で〜も! 女の子には優しくしないとダメだよ〜!」
「女の子…ねぇ。 正直この中では、フィロが1番女の子らしいよ」
「えっ!?」
「セイレーンだから歌も上手いし、すごい平和主義だし」
「そ、そんな…フレンったら、からかわないでよ……///」
「いや、別にからかってないよ。 ほんとのことだし」
「「orz」」

フィロを称賛する一方、視界の隅で地面にめり込むアイリとエルザ。
ちょっとやり過ぎたかな。
でも自信過剰な2人には、良い薬になったかな。











「メイ〜? いい加減起きろ〜」

お昼前。
寝室に向かい寝ぼすけを起こしに行く。
この寝室はフィロとメイ専用の部屋。
アイリとエルザ、それと俺はそれぞれ1人部屋で、ティータの寝床は地下の研究室。

「ん……」
「起きたか?」
「ん〜ん…」
「いや起きてるだろ」
「………」
「寝たふりしても遅い」
「………(ムスー)」
「朝弱いのはわかるけど、そろそろ起きなって」
「ん〜……」

心底嫌そうにベッドから這い出るメイ。
稀に早起きしてくることはあるけど、本当に稀。
だいたいの起床は昼過ぎと決まっている。

「………(zzz)」
「あーほらほら寝るな〜!」
「ぁ〜ぅ〜〜」

メイの肩を前後に揺する。
いつもの光景。

「………」
「まったく…冬眠するにはまだ早いだろ?」

ちなみに今は春。
ついこの間まで、メイは長い眠りについていた。

「てゆうか、年が明けてからずっとその格好だな。 着替えなくて良いのか?」
「………(フルフル)」
「ん〜、まぁお前がそう言うなら…」

どんな格好をしているのかとゆうと、察しの通り。
体のラインを限界まで強調させる競泳用水着、現代風に言えば『スクール水着』だ。
サハギンは水陸どちらにも適応能力があるとはいえ、やはり本分は水中。
いつでも泳げる格好をしている…のか?

「ほら、早く立って」
「………(ムスー)」
「仕方ないなぁ……よっ!」
「!!」

なかなかベッドから降りないので、メイを持ち上げることにした。
これもいつもの光景。

「軽くて運びやすいな」
「………」

お姫様抱っこをされているメイはいつも以上に静かになる。
まぁ普段から静かなんだけど、こう…雰囲気が。

「………(ヌクヌク)」
「おい、人の体温を奪うな」
「………」
「毎回思うんだけどさ。 もしかして、抱っこされたいから早起きしてこないのか?」
「………(しら〜)」
「はいはい…」

ま、別にイイんだけどさ。












「暇じゃの〜」
「暇だね〜」
「暇です」
「暇だ」
「暇」
「暇で左列が見事に埋め尽くされたな」

正午過ぎ。
特にやることもなく、全員リビングでだらけきっている。

「ときにフレンよ。 お主、何か趣味を持っておらんのか?」
「趣味…か」
「そういえばフレンさん。 毎日欠かさず、何かノートに書いていませんか?」
「どうしてソレを知ってるのかは聴かないでおく」

秘密にしてるのに何で知ってるんだコイツは…。

「日記か?」
「…さすがに鋭いな
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