『信じる心』

「うああああん…ママ〜〜〜……!」
「ごめんねぇ〜お母さんが目を離しちゃったばっかりにぃ…」
「ふぅ、見つかって良かったですね」

迷子を無事に発見し母親のもとへ連れて行った。

「見ず知らずのあなたにこんなお願いをしてしまってぇ…申し訳ないことをしましたぁ〜……」
「いえ、どうぞお気になさらず。 迷子捜しは得意ですから」
「本当にありがとうございましたぁ〜」
「次からは、ちゃんと手を繋いで歩いてくださいよ?」
「はぁい、気を付けます〜」

ホルスタウロスは基本ノンビリノホホ〜ンとしているため、一緒に歩いていた子供が迷子になっていることに気が付かないことが多い。

「それじゃぁ俺はこれで…」
「あぁ〜待ってくださぁ〜い」
「あ、はい?」
「何かお礼をしないとぉ〜」
「そんな…お礼なんてとんでもない!」

お礼をもらうために人助けをしているわけじゃないので。

「でもぉ〜…」
「どうか気を遣わないでください。 当然の事をしただけですから」
「う〜ん……」

大きな大きな胸を両腕で抱えるようにして考え込むお母さん。

「それならぁ〜…今晩わたしの家に寄っていきませんかぁ〜?」
「え?」
「夕食だけでも御馳走したいんです〜」
「そ、そうですねぇ…」

お礼をもらわないとは言っても、折角の厚意を無下にはできない。

「あの、ご主人は?」
「夫は子作りの最中に亡くなりましたぁ〜。 毎晩毎晩励み続けていたからでしょうかぁ〜…」
「………」

嫌な予感がする。

「夕食の後ぉ〜ついでに夜のお相手…お願いできますかぁ〜?」
「謹んでお断り致します!」

逃げるように駆け出す。
相手が子持ちでも独り身でも、魔物を助けるといつもこうなる。









「さて…どこに行こうかな?」

草原を1人歩く青年。

「困ってる人、どこかにいないかな?」

本当は困っている人なんていない方がいいんだけど。


ライラ=ルドルフは22歳の冒険家、こう見えて戦闘能力は非常に高い。
5年前に母親が亡くなったことを機に、若干17歳にして故郷を旅立った。
人助けをしているのは彼の性格からもあるが、一番の理由は母親の遺言でもあるから。
そんな彼は5年もの間ずっと独りで旅をしてきた。
心の片隅では、そろそろ何処かで腰を据えようと考えている。
ただ、彼にはそのキッカケがないだけ…。


「……ん、なんだ?」

前方に村を発見する。
宿は村で確保しようと思っていたけど……どこか様子がおかしい。
村人らしき人々がこちらへ駆け寄ってくる。

「何かあったんですか?」
「村に…ワーウルフの群れが……」
「なっ…魔物が!?」

老人は息を切らしながら状況を説明する。

「奴らは…食料だけでは飽き足らず…村の若い男達をも……ゴホッゴホッ!」
「「そ、村長!」」
「ゴホッ…はぁ…儂は…大丈夫じゃ……」

周りの村人が老人の体を気遣う。
どうやらこの人は村長らしい。

「あんた…もしかして冒険者かい!? だ、だったら頼む! オレ達の村を…どうか……!」
「お願いします…! 村には魔物に捕まった夫が……!」
「っ………」

無抵抗の村人達を群れで襲うなんて……酷すぎる。

「……わかりました。 できる限りのことはやってみます」
「ほ、本当ですか!?」
「はい…見捨てるわけにはいきませんから」
「しかしお若いの…無関係のお前さんを…巻き込むわけには……」
「俺なら大丈夫です。 皆さんはここで待機を!」

そう言って村へと走る。

「…行ってしまわれたか……」
「しかし村長…今はあの青年に賭けるしか……」
「……そうじゃな。 お若いの…どうか無事でいてくれ……」







「ほ〜らお前達! 食い物と男は、1つ残らず全部かっぱらうよ!」

物陰から様子を窺う。
村の中心には仲間に指示を出すワーウルフの親玉がいた。
他の四つん這いのワーウルフとは異なり、1匹だけ人間のように立っている。
建物などの損壊はなく、やはり狙いは食料と男のようだ。
捕らえられた男達は食料と一緒に中央へ集められている。

「リーダー、もうこれで全てかと」
「ふん、そうか。 大して集まらなかったねぇ」

あちこちに散っていたワーウルフが一斉に集まってくる。
数は6匹…いや、頭を入れて7匹。

「チッ…ろくな男がいないねぇ。 こいつらも食用にしちまおうか…」
「ひっ…ひぃぃ!?」
「まっ、下手物を食って腹を下すのも癪だ。 ここは…一思いに殺っちまうとするかね」
「そ、そんな!? お、お助けを…!!」
「わ、わたしには妻がいるんです! どうかお見逃しを…」
「ああ五月蠅い奴らだ……。 お前達、とっとと殺っちまいな!」
「はい、リーダー」
「そ、そんなぁ……!?」

くっ…どこまで残酷な奴らなんだ!
隙を見て奇襲をかけるつも
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