『骸骨と俺』

「ん……? 今歩いてるこの道…どこか見覚えがあるなぁ」
「ゼロの故郷が近いってことぉ〜?」
「自信は無いけど…」
「小さい頃の記憶は、意外と残ってるものっすよ!」
「とは言っても、15年以上も前の記憶だからなぁ…」

たとえ覚えていたとしても、15年も時が経っていれば風景も変わってくるというもの。
でもやはり…見覚えがあることは確か。

「俺の記憶が確かなら、この森を抜けさえすればヘルゼンに着けると思うんだけど…」

視界が開けた。
そして…予想は見事的中。
いや、俺の記憶は正しかった。

「っ! ようやく…ようやく着いた……」

故郷ヘルゼン。
一目見た瞬間に、ここが自分の故郷だと悟った。
………不意に涙が頬を伝う。

「ここがゼロの…」
「マネージャーの故郷…」

めぼしいものは何もない。
それでもこの村は俺の生まれた地。

「………ただいま」

15年ぶりの帰郷に、俺は涙を流す他なかった。






「初めまして、ガゼルさん」
「おお! お前がゼロンか! 手紙だけのやり取りで、実際会うのは初めてだな!」
「そうですね。 あの…すいません…何から何まで、色々と面倒をお掛けして……」
「なぁに気にすんな! あいつの遺言だ、残された家族を…ルークとゼロンを頼むってな」
「兄貴が…そんなことを?」
「死ぬ間際まで勝手な奴だったが…どうにも憎めねえ野郎でな。 俺に任せとけ!!って言ってやったら、幸せそうな顔して眠りやがった…」
「………」
「生憎魔王は倒せなかったが、あいつは満足してた。 『楽しい旅が出来て良かった』ってよ」
「そうですか…」
「顔見せに行ってやんな。 墓は村の裏手にある」
「…わかりました」

やっぱりいい人だ、ガゼルさんは。

「それとゼロン、お前に一つ聞いておきたいことがあるんだが…」
「なんでしょう?」
「村の真ん中で騒ぎを起こしてる魔物2人は、お前の連れか?」
「え? はい、連れなら確かにいますけど………ってうおおおおおおおいい!?」

な、なにやってんだよあいつら!?

「ちょっ…おいリム! 村人(男性)を追いかけ回すのはやめろって!!」

あっちでは……

「セラーーー!! きみが歌うと村人達(男性)が集まってきちゃうだろー!?」

あぁ…俺の故郷が……。
って、落ち込む前に2人を止めないと…!!

「頼むからやめてくれえええええ!!!」

俺の声が虚しく木霊した……………






「うぅ…マネージャーひどいっすよぉ〜……」

たんこぶを頭に乗せたセラが涙目で訴えてくる。

「名を売ろうって気持ちはわかるけど、もう少し場所を考えてくれ…」
「そうだよセラぁ、ちゃんと場所を考えないと……」
「リムはしばらく飯(唾液)抜きだからな」
「ええ〜〜〜!?」

とりあえず2人には制裁。

「村の真ん中で暴れたんだ、当然の報いさ」
「「むぅ〜〜〜!!」」
「あれ、お仕置きが足りなかったかな?」
「「ごめんなさい……」」
「あと墓地に入ったら静かにしててくれよ?」
「「はぁ〜〜い…」」

村の裏手に位置する墓地。
本来は余所者の立ち入りを固く禁じている、かなり神聖な場所らしい。
でもリムとセラは俺の連れということで特別に許可が出た。

「というか許可は下りたけど…ムリして一緒に来る必要無かったんじゃないか?」
「ウチはマネージャーの御家族に挨拶したいっす。 『契りはちゃんと済ませましたよ』って!」
「婚前挨拶みたいだなぁ…」
「どっちも同じようなものっすよ!」
「同じか…?」

俺…セラと結婚しなくちゃいけないのかなぁ……?

「じゃぁ…リムは?」
「アタシ? アタシはゼロと一緒にいたいからだよぉ♪」
「あぁ、そう…」

そんなことだろうと思った…。
そんなこんなで家族の墓を見つけた。

「これが俺の家族の…」

いろいろと報告しないといけないなぁ。

「2人とも、少しの間だけ静かにしててくれ」
「うん!」
「マネージャー、ウチも挨拶していいっすか…?」
「あぁ、みんなも喜ぶよ」
「はいっす!」

俺とセラは墓前で手(羽)を合わせる。
(リムは後ろでウネウネしている)

「………(来るのが遅くなってごめん。 葬式には出たかったんだけど…こっちでは爺ちゃん達も同時期に死んじゃって、いろいろと大変だったんだ。 まさか、みんなが一斉に死ぬなんて夢にも思わなかったよ。 ルークのこともあるけど、ほんと…ガゼルさんには感謝してもしきれないよ)」
「…マネージャーとは……体を許しあった仲で……ブツブツ………」
「zzz…zzz……」

リムのやつ寝てるな…?
そしてセラは何を報告してるんだ…?

「………(そうそう、この2人は俺の連れなんだ…驚いたろ? 魔物だけど、2人とも優しい子だよ。 ちょっと躾する必要があるんだけど…
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