「う〜ん……」
最近、妙な噂を耳にするようになった。
その内容というのが、
男狩人「オラ森ん中で女子さ見たべ」
女遊び人「ミーはビューティフルビーチでミタネ! ツインテールがベリーキュート!」
女採掘師「山の中腹だったかな。でも場所も場所だし、見間違いだと思う」
という感じの、なんだかホラーっぽい話である。
そしてこれらの情報の中で共通しているのは、『女の子』という部分。
これが魔物なら単なる掃討作業で済むのだが、本当に女の子だった場合は一大事だ。
ただ、民間警察に迷子捜索という名目の依頼は1件も入ってきていない。
トウカの探偵事務所にも確認したが、あちらにもそういった話はきていないとのこと。
「一応、確認しておいた方が良いよな」
目撃される場所はばらばらで、いずれもそれなりの危険地帯。
そんな場所で女の子を目撃するという時点で信憑性もなにもあったものではないが、やはり万が一ということもある。
正式な依頼ではないため、時間はかかりそうだが単独で調査に向かうことにした。
「ご主人、出かけるの?」
「あぁ、うん。ちょっと仕事でさ。ご飯はたくさん作ってあるから、好きなときに食べて。なんかあったらトウカを頼ればいいから」
「わかった」
俺の胸に身体をスリスリと擦りつけてくるタマの頭を優しく撫でる。
ゴロゴロと喉を鳴らす彼女に、今日は甘えモードなんだな〜とどうでもいいことを考える。
「あ、タマ。コロのことよろしくね」
「……最近ちょっと発情気味で怖いんだけど」
「押し付けてごめんな。頼んだよ」
「うん」
若干の不安を残しつつ自宅を後にする。
西部、精霊の森。
「男狩人はこの辺りで見たって言ってたけど……いないよなぁ」
仮に情報が正確だったとして、その女の子が同じ場所にいつまでも留まっているとは到底思えない。
とはいえ、さすがの俺もこれ以上精霊の森に深入りすることはできないため、ここでの調査はこれが限界である。
「仕方ない。回り道しながら戻るか」
森から出る道中も、やはり女の子を見つけることはできなかった。
『………………………』
木陰に蠢く黒い影に、ベルメリオは気づかない。
北部、海岸。
「……だーれもいないな」
遮蔽物のない、恐ろしいほど見渡しの良い海岸。
数時間かけて波打ち際を歩いても、人のひの字にすら出くわさない。
稀に海から知り合いのシースライムやサハギンが顔を覗かせるも、女の子を目撃したという有力な情報はなし。
この辺りを縄張りとする彼女らが見ていないというのだから、女遊び人の情報自体に問題がありそうだ。
「はぁ……戻ろ」
外国出身の女遊び人にどうお仕置きしてやろうか考えながら海辺を後にする。
『………………………』
水中で蠢く黒い影に、ベルメリオは気づかない。
南東部、山岳地帯。
「さ、ささ、寒い……!」
年中雪の降り積もる山。
寒さに弱い俺にとってはまさに地獄のようなエリアである。
道中で出会った親切なイエティ(人妻ユキノさん)にかなり上質な毛皮の毛布をもらったが、それでも中腹までの捜索がやっと。
俺ですら苦労してきたのに、女の子がなんの準備もせずここまでやって来られるだろうか?
女採掘師が女の子を目撃した日はかなりの豪雪だったらしく、やはり見間違いの線が濃厚だろうと考えられる。
「はぁ…はぁ……下りよう…そろそろやばい」
身体が完全に冷え切る前に下山を決断。
かなりやばかったが、心配になって見に来てくれたイエティ(人妻ユキノさん)に助けられ、どうにか無事山を下りることができた。
さすがに無茶をし過ぎたと反省した(この後人妻ユキノさんに特製シチューをご馳走してもらった)。
『………………………』
岩陰で蠢く黒い影に、ベルメリオは気づかない。
「はぁ……」
真夜中。
全身疲労困憊の状態で帰宅。
さすがに森・海・山を1日で回りきるのは無理があったか……。
トウカにでも手伝ってもらうべきだったと今更ながら反省する。
「ふぅ…ただいまー」
………。
コロの洗礼(抱きつき)がない。
いくら注意しても止めないコロが……これはおかしい。
いや、発情期に入ってボーっとしていることが増えたから、単に俺の気配に気づいてないだけかもしれない。
それならそれで良いんだけど…やっぱりちょっと心配になってくる。
「コロー? タマー? どこー?」
まさか体調を崩して倒れているんじゃ……?
そんな悪い事態を予感して2人の姿を探す。
ギッ……ギッ……
「ん?」
天井から何か軋むような音が聞こえた。
「この位置は……俺の部屋?」
彼女達が俺の部屋でイタズラ(マーキング
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