「これ邪魔ね。男戦士ー、家具どけてくれるー?」
「おう、任せろ」
「ちょ、ちょっと! 食器は丁寧に磨いてください! 銀製のものは意外とデリケートなんですから!」
「相変わらず細かいな女賢者は……」
「ゴミは一ヶ所に集めるでやんす〜。あっしがまとめて処理するでやんす〜」
「ハ…ハックショイ! あー埃っぽい……」
「男黒魔道士さん、ハンカチ使う?」
「隙間の汚れはコレが効果的でござるよ!」
「ソレ便利そう! 作り方教えて!」
「女踊り子さーん! 高いとこの汚れはどんな感じー?」
「けっこう溜まってるわよ〜。これはお掃除のしがいがあるわね〜……ふふ
#9825;」
「きゃっ!? み、見えた!?」
「いや?」
「はぁ〜良かった〜……」
「………(下から丸見えだけどな)」
……驚いた。
数人の民警団員に空き家の掃除を頼んだ結果、
「10、11、12……16人も来てくれたんだ」
2、3人来てくれれば御の字と考えていたが、これは嬉しいハプニングだ。
どうやら助っ人を頼んだ団員が他の団員にも声をかけてくれたようだ。
「みんな今日は非番なのに、わざわざ手伝いに来てくれてありがとう」
「も〜水臭いこと言わないの!」
「そうだぜリーダー! もっとおれらを頼れって!」
「リーダーのお願いなら、私どんなことでもしますから!」
「下の世話もかしら〜?」
「そ、それは……!(リーダーがどうしてもって言うなら……///)」
「みんな……」
こんな良い仲間達に支えられて、俺はなんて幸せ者なんだ……。
おもわず目頭が熱くなってしまった。
……一部おかしな会話が混じっていた気もするけど。
「よし! それじゃぁ早いとこ終わらせて、旨いもんでも食べに行こう! 俺の奢りで!」
「「「「「イエーーーーーイ!!!」」」」」
空き家の掃除は、当初の予定より何倍も早く終わった。
夕刻、飲み屋『焼キトリス』にて。
「みんな! 今日は本当にありがとう! 遠慮しないで好きなだけ食べてってくれ! それじゃ……かんぱーーーい!」
「「「「「かんぱーい!!!」」」」」
乾杯の音頭と共に、少し早い夕食が始まる。
しかし威勢良く啖呵を切ったものの、懐事情がやや不安だ。
ということで、
「みんなのこと信じてるからーー!(高いのは勘弁してねーー!)」
「「「「「えーーー(笑」」」」」
あとは皆の…特に女衆のモラルを信じる他ない。
女踊り子と女剣士あたりが酒豪なので少し怖い。
「あのー、ベルさん」
「ん、どした?」
コカトリス店長自慢の焼き鳥(ソース2度づけ禁止)に舌鼓を打っていると、トウカが居心地悪そうにすり寄ってくる。
そっか。トウカのこと、皆にはまだちゃんと紹介していなかったっけ。
掃除を始める前に簡単に事情は説明したけど、もう1度話しておいた方が良さそうだ。
「はーいちょっと注目〜! あー女剣士は男シーフに無理やり酒飲ませるのやめてあげてー」
パンパンと手を叩くと、馬鹿騒ぎしている団員達が一斉にこちらに注目する。
あぁ…あの真面目な女賢者が高〜い酒飲んでるよぉ…予想外だよぉ……。
「昼間に軽く話したけど、改めて紹介したいタヌキー…じゃなくて住人がいる」
気まずそうな様子のトウカを立たせる。
毛並みの良い彼女の尻尾が右へ左へ忙しなく揺れ動く。
どうやら緊張しているようだ。
「さ、自己紹介」
「っす。あ、改めましてー、うちは形部狸のトウカという者っすー。家庭の事情でーこの街で1人暮らしをすることになりましたっすー。本日はーお掃除にご協力いただきー誠にありがとうございましたっすー」
「彼女は例の空き家で、探偵事務所を開くつもりらしい」
団員達から「おー!」という感心の声があがる。
「この街のことはーまだ全然わからないっすけどー、探偵としてー街の皆さんのお役に立てるようにー精一杯頑張る所存っすー。どうぞよろしくお願いしますっすー(ペコリ」
トウカが頭を下げると、店中から大きな拍手が巻き起こる。
『いいぞー狸の嬢ちゃーん!』
『探偵のお仕事、頑張ってねー!』
『尻尾可愛い〜
#9825; モフモフした〜い♪』
ここにいる団員達だけでなく、飲み屋に来ている一般のお客さんも一緒になって歓迎してくれている。
「はわー」
「良かったな、トウカ」
「っす。優しい人ばっかりっすー」
「そうだな。だから困った時は、いつでもみんなに頼っていいんだ」
「ベルさんにもー…もっと頼っていいっすかー?」
「もちろん! ドンとこい!」
「すぅ……///」
新しい住人であるトウカを、街の皆は快く迎え入れてくれた。
1度こうやって顔を覚えてもらえれば、トウカの噂はすぐ街全体に広まるだろう。
「トウカちゃん、こっち(ウォッカ)はいける口?」
「ストレートでバ
[3]
次へ
[7]
TOP [9]
目次[0]
投票 [*]
感想[#]
メール登録