28品目 『親しき仲にもなんとやら』

「そ〜れ!」
「ほいっす」
「トス、ですわ!」

キャハハ♪ ウフフ♪

「………」

眩しい程に白い砂浜。
永遠の如く広がるエメラルドグリーンの海。
肌を褐色に染め上げようと容赦なく照りつける太陽。
そして……波打ち際でボール遊びに興じる3人の美少女。
子供のように無邪気な笑顔を見せる彼女達の姿は、まるで海に舞う妖精を想わせる。
そんなこの世の楽園のような光景を、パラソルの下デッキチェアに悠々と寝そべりながら眺めることのできる僕は、恐らく最高に幸せ者なのだろう。
目的地に到着するまではイマイチ実感が湧かなかったものの、こんな場所で1週間滞在できると思うと、もう胸の高鳴りを抑えることができない。
……もちろん健全な意味で。

「ねー! いつまでも寝てないで、お兄ちゃんもこっちにきて混ざりなさいよー!」
「そうですわ! せっかくの海ですのに、勿体ないですわよ!」

もう少しのんびりしていたかったけど、お誘いとあらば仕方がない。
とは言っても、半日列車の中で過ごしていたため疲れている…という名目で休んでいたが、楽園を前にそんな疲労もすっかり消え失せていた。

「あ、あちち!?」

デッキチェアから降りる僕の足を、太陽により熱せられた白砂が容赦なく包み込む。
これは相当熱い……。
店長の話によると、この砂浜は貝殻と朽ちた珊瑚が細かく削れたためにできたものらしい。
自然の力のみで数kmにもわたる砂浜を形成したというのだから驚きだ。
そもそもここ一帯がこんなにも綺麗なのは、ほとんど人の手が入っていないからだろう。
一体どれ程の時を費やしてきたのだろうか……う〜ん、年季を感じる。

「早く来ないとー足の裏焼けちゃうっすよー?」
「い、今行きまーす!」

肢体を海水で濡らした3人の美少女に笑われながら、僕は熱を帯びた灼熱の砂浜を一心不乱に駆け抜けるのでした。












「ゆ、ゆっくりよ? ゆ〜っくり……」
「……こんな感じ、かな?」
「……うん、イイ感じ! 外壁はこれで完璧ね。後は内部の構造だけど……」
「え、中も作るの?」
「当然でしょ? 外側だけの安っぽい城なんて興味ないわよ」
「そ、そう。意外とこだわるんだね」

店長とロザリーさんが数km離れた離島まで競争するとか言い出しそのまま泳いで行ってしまったため、取り残された僕とリンは2人で大人しく砂のお城を作ることに。
あの2人が帰ってくるまでの暇つぶしに…ということだったのだがなかなか帰ってこないので、予想以上に魂の込もった作品になってしまった。

「んー…指先だけだと他の部分が崩れちゃうわねぇ……」
「あんまり凝り過ぎると壊れかねないし、ある程度のところで見切りをつけないと」
「ん〜……うん、それもそうね」
「それじゃ、これで完成だね」

リンは最後の仕上げと言い、お城の手前の砂に『あたしの城』というタイトルを彫り込む。
できれば製作に大きく貢献した僕の名前も入れてほしかったけど……。

「ふぅ。我ながら良い出来栄えね!」
「そうだね。壊すのが勿体ないよ」
「まぁ、そのうち自然に壊れるでしょうけど」

僕とリンは小1時間かけて作った大作を様々な角度から眺める。
うむ…自分達だけの力で製作したということもあってか、城に対して妙な愛着
が湧いてくる。

「それはそうと、イチカさんとロザリー帰ってこないわね? 何かあったのかしら?」
「あの2人に限って事故とかはないと思うけど……」

泳いでいる最中に足がつった……なんてことはあまり考えたくない。
そもそも魔物であるあの御二方がそんなにヤワなはずがない。

「ここで心配しててもキリがないし、僕達も少し泳ごうか」
「そうね。ちょうど汗を流したいと思ってたのよ」

長時間波打ち際で作業していたため、僕も知らぬ間にけっこうな量の汗をかいていた。
体の至るところに付着した砂も洗い流したい。

「ねぇ、あたし達も競争する?」
「別に構わないけど、結果は目に見えてるじゃないか」
「まぁ、確かにあたしが100%勝つわね」
「そゆこと。それでもやる?」
「やっぱり止めとくわ。弱い者いじめはしない主義なの」
「そ、そっか」

兄として非常に複雑な心境だが、力関係では確かに僕に勝ち目はない。
仮に喧嘩でもしようものなら、またいつかの武闘大会の時のように999ダメージを受けるハメになる。
兄のプライドを捨て妹の御機嫌取りをしてでも、それだけは御免被りたいデス。

「はぁ〜♪ 火照った体にヒンヤリとした海……最っ高の組み合わせね!」
「あはは、そうだね」

海に顔を着けないように、腕を大きく広げながらゆっくりと水を掻いていく。

「そういえば海って、露天風呂の逆バージョンみたいだよね」
「え?」
「ほら、海だと顔は温かいのに体は冷たい。露天風呂なら、顔
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